外国語をマスターするには「聞く、話す、読む、書く」のどれを優先すべきか…12カ国語を操るYouTuberの結論

2024年4月28日(日)8時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monzenmachi

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どうしたら外国語を話せるようになるのか。『ゼロから12カ国語マスターした私の最強の外国語習得法』(SB新書)を書いた語学系YouTuberのKazu Languagesさんは「文法と単語を学んでから会話力を身につけていくのではなく、まず実践的なフレーズを、ネイティブの発音を真似して声に出すことからはじめるといい」という——。

※本稿は、Kazu Languages『ゼロから12カ国語マスターした私の最強の外国語習得法』(SB新書)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/monzenmachi
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■どれほど勉強すれば外国語がマスターできるのか


「たった3カ月で流暢に話せる!」といった語学教材の宣伝文句を目にすることがあります。しかし、よほどの語学の才能の持ち主でない限り、そんな短期間で流暢に話せるようになるのは難しいでしょう。


ゼロからイチへの変化は実感しやすいため、学び始めのころは、頻出単語や頻出フレーズを覚えることで短期間のうちに上達を感じるものです。


ただ、そこからネイティブ並みに幅広いトピックについて話せるレベルにまで上達するには、登場頻度の低い単語や難しい単語も頭に入れておく必要があります。こうした単語は、難しかったり会話にあまり出てこなかったりするために覚えづらく、その言語に日々触れ、積極的に学び続けなくては身につけられません。


つまり上級レベルになるには、ある程度、長期にわたる学習が必要なのです。


ひとつの言語を習得するのに、どれくらいの時間がかかるのか?
いったいどれくらいのレベルを「習得した」と言っているのか?


私が12カ国語を習得していると聞いて、そんな疑問が浮かんでいる人も多いのではないでしょうか。


■「たったの3カ月で流暢に話せる」というのは難しい


まず先に「レベル」についてですが、言語によって差はあるものの、12カ国語すべてにおいて、「日常会話に支障ないレベル」には達しています。最初に習得したスペイン語、次に習得したフランス語などは、それに加えてもう少し踏み込んだトピックについて話すことができます。


では改めて、ひとつの言語を習得するのに、どれくらいの時間がかかるのか。


言語ごとの難易度にもよりますが、基本的には日常会話レベル——たとえば「ネイティブとコミュニケーションを取りたい」「映画を字幕に頼らず原語で楽しみたい」といった目標であれば、半年〜1年で習得できるでしょう。


先ほど述べたように「たったの3カ月で流暢に話せる」というのは難しいのですが、何年もかけなくては習得できない、というわけではないのです。


何より、今まさに「外国語を学んでみたい」と思っているのなら、「どれくらいかかるんだろう」と考えている時間がもったいないと思います。どの程度のレベルを目指すのかは後で決めてもいいのですから、今すぐ、とにかく学び始めることをおすすめします。


■「赤ちゃんが母語を習得する」方法で学ぶ


本章では私が実践している言語習得のステップを紹介していきますが、重要なポイントは「赤ちゃんが母語を学ぶ過程」と同じように学んでいくことです。


赤ちゃんは母語を身につける際、まず親など周囲の人たちが発している言葉を真似します。最初は意味などわかりませんが、さまざまな言葉を真似して発しながら「この言葉は、こういうときに使うようだ」と理解を深めていきます。


こうして徐々に周囲とコミュニケーションを取れるようになっていくのです。


言語を「学問」として学ぶ場合は、また別の有効なアプローチがあるのでしょう。しかし本書で紹介していくのは、あくまでも「コミュニケーションツールとしての言語」を習得する方法です。それには、「赤ちゃんが周囲とコミュニケーションを取るために言葉を学んでいく過程」に倣(なら)うのが理想的というわけです。


まだ、脳が未発達で柔らかい赤ちゃんが母語を学ぶ過程を、とっくに脳が成熟して固まってしまっている大人が、今さらたどることなど可能なのだろうかと訝(いぶか)しく思ったでしょうか。


たしかに、私は脳科学者でも言語学者でもないので、学術的なことはいえません。ただ、実体験から「大人の言語習得の最も効率的な順序は、実は赤ちゃんが母語を学ぶ過程と同じなのではないか」と考えているのです。


写真=iStock.com/maroke
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

■「聴く」「話す」から始めるべき理由


本書で紹介する言語習得のメソッドは、大きく「①ネイティブの発音を真似る」「②実用的な文法を身につける」の2ステップに分かれています。


最初に「文法と多少の単語」を学んでから会話力を身につけていくのではなく、まず「実践的なフレーズを、ネイティブの発音を真似して声に出す」というのを、徹底的に積み重ねます(ステップ①)。


そこでフレーズを頭の中にストックしつつ、リスニングとスピーキングの素地を作ってから、文法を学んでいく(ステップ②)という順序です。


ステップ①でリスニングとスピーキングの素地を作ると言っても、まだ文法的な知識はゼロですから、ただひたすらネイティブの発音を聴いたまま声に出してみるだけです。


文法という論理的な裏付けのない状態で、その言語の発音に慣れながら「聴く」「話す」の感覚を身につける。まずそこから始めるという意味で、この言語学習法を私は「感覚的な学び方」と呼んでいるのです。


リーディングとライティングの素地は、主にステップ②で作られます。便宜上「ステップ」とは呼んでいますが、リスニング、スピーキング、リーディング、ライティングの4能力をひとつずつ完結させていくのではありません。


ステップ①とステップ②でひととおり素地を作ったら、後は同時進行ですべての力の精度を徐々に高めていくイメージです。


■「実用的なフレーズ」をストックする、「正しい発音」を身につける


ステップ①には、主にふたつの目的があります。


ひとつは、そのままネイティブに対して使える「実用的なフレーズのストック」を作ることです。コミュニケーションツールとしての言語を学んでいるときに、最も手応えを感じるのは、覚えたことがネイティブとのコミュニケーションで活きたとき、あるいは「こんなときに使えそうだな」というイメージが湧いたときでしょう。


まだ文法をまったく知らない段階でも、ネイティブが普段使っているフレーズをスラスラと言うことができれば、コミュニケーションは成立してしまいます。


写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

もちろん、本当に自在な言語能力を身につけるには文法の知識が不可欠です。しかし初期段階では、そのまま使えるフレーズのストックを作ったほうが実践的であり、なおかつ実践的な手応えにより意欲を保ちやすいのです。


もうひとつの目的は、ネイティブの発音をひたすら真似ることで、学び始めの段階からしっかりとした発音を身につけることです。最初に、ある程度、正確な発音を身につけてしまうと、その後の学習をかなりスムーズに進めることができます。


繰り返しになりますが、本書では「コミュニケーションツールとしての言語」を習得することを目指しています。にもかかわらず、文法知識で頭をいっぱいにして、いざネイティブと話してみようと思ったところで発音につまずいてしまったら、もどかしい思いをしてしまうでしょう。


だから、ごく初期の段階で、実用的なフレーズと一緒に発音も身につけておいたほうがいいのです。完璧でなくても、その言語の音の特徴をつかみ、「こんな感じで発音する」という感覚を得るだけでも十分です。


■最速で学べる最強コンビは「デジタル学習ツール+録音」


言語を始めたばかりの段階は、まさに赤ちゃんのように繊細な状態といえます。


その言語について何も知らない状態なので、最初は意欲が高くても、頑張って一気に学ぼうとすると途中で息切れしてしまい、意欲が急降下する危険があります。


したがって、ステップ①で一番大切なのは、無理なく継続すること。私がいつも実践しているのは「深く考えすぎずに、ネイティブが発するフレーズをたくさん聴いて、ひたすら真似する」という方法です。


いきなり「ネイティブの発音を真似する」と聞いて、ちょっと怯(ひ)るんでしまった人もいるかもしれません。聴き取る力に自信がない人ほど心理的なハードルを感じてしまうと思いますが、安心してください。


自分が正確に発音できる音は、正確に聴き取れるものです。つまり、「耳を鍛えること」と「正しく発音できるよう訓練すること」はセットです。


私はネイティブと話しているときに、よく「すごく発音がいいね!」と言っていただけることがあるのですが、最初から耳がよかったわけではありません。


「ネイティブの発音を聴いては再現しようと試みる」というのを繰り返すうちにだんだんと聴き取れるようになり、その音を出すときの唇・舌の形や位置、喉の使い方などのイメージと共に、ほぼ正確に再現する力もついてきました。


聴き取る力や、聴いた音を再現する力は生まれつきのものではなく、徐々にコツをつかみ、鍛えることができるというのが私の経験上の実感です。


写真=iStock.com/TakakoWatanabe
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TakakoWatanabe

■うまく発音できればリスニングも向上する


まず自分なりに「こう発音するとネイティブの発音に近くなるかな」という感じで、気軽に続けてみてください。先ほども述べたように、自分が発音できる音は、きちんと聴き取ることができます。


つまり、まず注意深く聴いて、うまく発音できるようになってくると、リスニングも向上します。そしてリスニングが向上すれば、さらにきちんとネイティブの発音を聴き取れることで、いっそう発音が向上するという好循環が起こるのです。


そんな好循環を起こしていくためにも、ここで使うのは、「実用的なフレーズをたくさん、ネイティブの発音で聴けるデジタルツール」がいいでしょう。


ご自身で使い勝手のいいものを探していただいてもいいのですが、私のおすすめは本書(第2章)で紹介したPimsleurです。


Pimsleurは、ポール・ピンズラーというアメリカの応用言語学者が確立した「ピンズラー・メソッド」を踏襲したアプリです。平易なフレーズを何度も繰り返しながら、少しずつフレーズのストックを増やしていきます。


学術的な根拠があるという点でも信頼できますし、何より、私自身が実際に使ってきて最も効果を感じているツールであるというのが、おすすめしたい一番の理由です。


■発音は「言語学習の永遠のテーマ」


さて、フレーズを真似する際、自分の発音が正確かどうかを知る必要がありますよね。Pimsleurでは発音をチェックしてくれる簡易的な機能があるものの、精度はわかりません。


言語教育系のYouTubeチャンネルなどで学習する場合も、同様の壁に直面します。発音チェックに協力してくれるネイティブが周りにいればベストなのですが、独学では、それもなかなか難しいでしょう。


そこで併用をおすすめしたいのが、スマホやタブレットの録音機能です。


ネイティブに倣って発音しているところを録音し、後からネイティブの発音と録音を聴き比べてみます。すると、うまく発音できていないところを自覚しやすくなり、より素早く的確な改善につなげることができるのです。


ゆくゆくは実際にネイティブと話してみる段階に進みますが、そこでも、なるべく会話を録音・録画して聴き返すことをおすすめします。発音は「言語学習の永遠のテーマ」と言ってもいいくらい、聴き返すたびに新たな発見があるものだからです。


■ステップ①を加速させるコツ


また、最近はYouTubeやPodcastなどで、ネイティブの会話を聴けるチャンネルが無数にあります。Pimsleurなどのメインツールで「ネイティブの発音を聴いて、真似する」という練習に慣れてきたら、ステップ①を加速するために、他のツールを取り入れるのもいいでしょう。


ここで、私が習得した言語ごとに、いくつかおすすめのYouTubeチャンネルも紹介しておきます(図表1参照)。


出典=『ゼロから12カ国語マスターした私の最強の外国語習得法』(SB新書)

これらのチャンネルは言語学習者向けではあるのですが、堅苦しい「授業」という感じではありません。ネイティブの自然な会話を通じて、楽しく学ぶことができます。


■ネイティブの「口元」「トーン」に注目する


発音は主に唇の形、舌の形、舌の位置で作られます。ネイティブの発音を真似するときは、「この音を出すには、唇をどんな形にしたらいいだろうか。舌はどんな形で、どこに舌を置けばいいだろうか」と意識してください。


動画コンテンツなどで学ぶ場合は、フレーズを言っているネイティブの口元にも注目すると、より発音のコツがつかみやすいでしょう。


意外なところでは、ネイティブの声の「トーン(高さ)」にも要注目です。これは12カ国語を習得して気付いたことなのですが、言語によって発声のトーンが異なるのです。英語、フランス語、ロシア語、ドイツ語は低めのトーン、スペイン語、タイ語、中国語は高めのトーンで発音したほうがしっくりきます。ちなみに、日本語はかなり高めのトーンだという印象です。


音声教材を使って発音を練習する際には、声のトーンも含めて忠実に真似るようにすると、より早く正しい発音が身につきやすいと思います。


■「単語」ではなく「フレーズ」で覚える


ステップ①のポイントは、すでに述べたように「ひたすらネイティブが日常会話で使うフレーズを聴いて、発音を真似すること」。


こうして正しい発音を身につけると共に「すぐに使えるフレーズ」を自分の中にストックしていくことも目的のひとつです。


つまり、「単語を単体で、機械的に覚えていくのではない」ということも、ここでしっかり頭に入れておいてください。あくまでもフレーズごと覚えていくことが、次のステップ②以降で効いてくるのです。


そもそも「単語の集合体」であるフレーズを覚えれば、最低限の基本的な語彙は自(おの)ずと身につきます。


より多岐にわたるフレーズを聴き取り、話せるようになるには語彙力の強化も欠かせません。しかし単語帳などで機械的に語彙を増やしても、「どんな場面で使えるのか」がわからなければ、覚えても意味がありません。


また、主語や時制などによって動詞が何通りにも変化する言語がほとんどです。そこで動詞の原型だけをたくさん覚えるのは、実用の場面では柔軟に活用することができません。


こうした失敗は、実は私の実体験なのです。まだ自分なりの言語学習法が確立されていなかったころ、受験勉強の要領で、ひたすら単語帳を繰って英単語を覚えました。


せめて単語に併記されている例文を見ていればよかったのですが、そこには目もくれなかったせいで「使い道のわからない単語の知識」が蓄積されてしまいました。


結果として、たくさん単語は知っているのにネイティブの言葉を聴き取れない、自分から話そうと思っても使うべき単語が思い浮かばないという状態に陥ってしまったのです。


■外国語学習には「最短ルート」がある


たくさん単語を覚えたのは、長い目で見れば無駄ではなかったと思います。ただ、ずいぶんと遠回りをしてしまったことは確実でしょう。



Kazu Languages『ゼロから12カ国語マスターした私の最強の外国語習得法』(SB新書)

また、日本でスペイン語を勉強していたころ、リスニングとスピーキングの練習が圧倒的に足りていなかったために、ほとんど聴き取れない、ほとんど話せないという状態に陥ってしまった反省も、ここに活かされています。


特に学び始めの段階で重要なのは、「どれだけ多くの単語を知っているか」ではなく、「基礎的な単語が、実際に話す場面で瞬時に思い浮かぶかどうか」です。


まだまだ語彙数は少なくても、実用的なフレーズと一緒に基礎単語をストックしておくことで、早い段階からネイティブとのコミュニケーションを楽しめるようになるでしょう。


より深いコミュニケーションができるようになるために語彙を増やすのは、もう少し後の段階でも遅くはありません。


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Kazu Languages(カズ・ランゲージズ)
YouTuber、インフルエンサー
2000年3月4日生まれ。愛知県出身。スペインの音楽に関心を抱いたことをきっかけとして、独学で外国語学習を開始。以降、5年間で12カ国語を習得(スペイン語、英語、フランス語、アラビア語、インドネシア語、ロシア語、ポルトガル語、ドイツ語、トルコ語、中国語、タイ語、韓国語)。外国語学習の楽しさを発信するため、2022年に本格的に「Kazu Languages」というチャンネル名でYouTuberとしての活動を開始。年内に登録者数10万人を突破、翌年には台湾の急上昇ランキング3位を記録、そして日本国内でも急上昇ランキング18位となり、アメリカ、ロシア、ブラジル、ドイツ、インドなどさまざまな国からも視聴されるチャンネルになった。YouTube、TikTok、Instagram、Facebookの総フォロワー数は現在、のべ200万人となっている。
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(YouTuber、インフルエンサー Kazu Languages)

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