乗る楽しさ伝え「アンパンマン列車」25年、手を振っていた子が車掌も…JR四国が復刻列車運行中

2025年4月28日(月)9時30分 読売新聞

25周年を記念し、初代の外観を復刻したアンパンマン列車(12日、JR高知駅で)

 JR四国が運行している「アンパンマン列車」が今年、デビュー25周年を迎える。車社会が進む四国で、「子どもたちに鉄道に乗る楽しさを経験してほしい」と始まって四半世紀。約115万人を乗せ、四国を代表する列車に成長した。JR四国は「愛してくれた人に感謝し、運行を続けたい」としている。(黒川絵理)

無料招待も

 アンパンマン列車は、「アンパンマン」の原作者・やなせたかしさんが高知県出身だったことなどから、2000年10月に高知—岡山間の特急「南風」として運行を始めた。車体の全体がラッピングされ、期間を限らずに運行しているキャラクター列車は当時、珍しかったという。

 01年には岡山・高松—松山間などにも拡大。車内に子どもたちの遊べるスペースを設けた「ゆうゆうアンパンマンカー」(2002年)、座席にキャラクターが描かれた指定席「アンパンマンシート」(05年)、窓がない「瀬戸大橋アンパンマントロッコ」(06年)などが次々と登場した。12年には、東日本大震災で被災した宮城、岩手、福島各県などを走り、現地の子どもたちを無料招待した。

 23年には乗車100万人を達成。今年3月までに約114万7000人が利用した。近年は、アニメが動画サイトで展開されている台湾などから訪れて乗車する人も多いという。

長期計画

 運行を開始した00年は、四国4県の県庁所在地を「X字」の形に結ぶ高速道路が全線開通するなど、車社会が進展していた。当時社長だった梅原利之さん(86)によると、運行のきっかけはJR四国が高知県内の商店街などで行ったアンケートだった。大阪への交通手段について、大半の人が「飛行機」と回答。特急は「飛行機に比べ、料金が高い」「便数が少ない」などとの反応だった。

 「実際は料金は高くなく、本数も多い。誤解されているのは、乗ったことがないからだ」。そう考えた梅原さんは「子どもの頃に鉄道に乗ってもらう経験を」と若手社員の発案を採用。アンパンマン列車を特急として走らせることを決めた。「アンパンマン列車に乗った子は、大人になってもきっと鉄道に乗ってくれる。20年以上かける計画だった」と振り返る。

 当時、鉄道事業本部長で実現に奔走し、後に社長になった松田清宏さん(78)は、社内から「乳幼児は無料なのに、収入増につながるのか」と懸念の声も耳にした。それでも、梅原さんや松田さんは列車導入を決断。結果は「うれしい誤算だった」(松田さん)。子どもと一緒に、予想を上回る多数の両親や祖父母らも乗車した。

 1998年に豪雨のため一部区間で約3か月間運転を取りやめた土讃線では、復旧後の活性化の役割も担った。

次代へ

 デビューから25年。列車とともに育った世代がJR四国の事業を担う。アンパンマン列車事業推進室で働く三好創太さん(26)は2021年の入社後、アンパンマン列車に車掌として乗務した経験を持つ。「駅で降車した後もずっと手を振る子どもたちが印象に残っている」。幼い頃を過ごした愛媛県四国中央市の沿線で、列車に手を振っていたという自身を重ねる。

 JR四国は今年度、高知駅と土佐くろしお鉄道中村・宿毛駅との間で、デビュー当時の外観を復刻したアンパンマン列車を来年1月12日まで運行しているほか、列車内や駅、レジャー施設でのスタンプラリーの賞品も一新。「多くの人に愛していただいたことに感謝する節目の年。多様な関連事業を展開したい」としている。

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