相場展望5月8日号 米国株: 財務長官「来年の今頃に経済成長率+3%に回復」は本当? 所得税減税の財源として「関税」に期待しているが、かなわぬ夢 日本株: 株高要因の多くはすでに織り込まれている

2025年5月8日(木)13時46分 財経新聞

■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
 1)5/5、NYダウ▲98ドル安、41,218ドル
 2)5/6、NYダウ▲389ドル安、40,829ドル
 3)5/7、NYダウ+284ドル高、41,113ドル

【前回は】相場展望5月5日号 米国株: NYダウは戻り歩調だが、トランプ就任直後の高値には「道半ば」 日本株: 日経平均はトランプ関税の打撃から回復、気になる兆候が散見

●2.米国株:財務長官発言「来年の今頃までに経済成長率は+3%に回復」は本当?
       所得税減税の財源として「関税」収入に期待しているが、かなわない夢

 1)米国財務長官発言「来年の今頃までに経済成長率は+3%に回復」は本当?
  ・ベッセント米国財務長官は「経済成長率が+3%回復」を確信していると語った。
    ・成長要因として、トランプ氏の減税と規制緩和策を挙げた。

  ・高関税で、輸入物価が高騰し、確かに名目国民総生産は上昇するだろう。

  ・しかし、賃金上昇が追い付かないため、個人消費支出は切り詰められて減る。
    ・国民の生活費は食料品購入に回され、余分な支出は削られるとこになる。生活必需品を優先して購入するため、生活のゆとりのための支出は抑えられることになる。

  ・物価上昇は、実質の経済成長にとってマイナスに働く。
    ・ベッセント財務長官は、経済成長の一部分にフォーカスして楽観論を論じたにすぎない。
    ・米国の実質経済成長は、物価高の直撃を受け、マイナス成長となろう。
      ・中国からの輸入額の52%の製品が、中国以外の国から輸入される販売価格と比べて▲50%も安い。しかも、中国製品のうち36%が、米国輸入市場でシェア70%以上を占めるまで浸透している。中国に対し145%の高関税を課しても、米国の購入者に跳ね返るだけである。
      ・すでに、4月ISM仕入れ価格指数は65.1と+4.2増の大幅上昇と高水準となっている。関税引上げの影響で、投入コストは大きく上昇し始めている。
      ・トランプ関税は米国の物価上昇(インフレ)を直撃するのは明らかだ。旧価格の在庫がある現在でも、すでに物価上昇が始まっている。
      ・米国の輸入業者は、4月から買い控えて輸入を減らしており、品薄がさらに価格高騰へと導くことになる。

  ・米国連邦準備理事会(FRB)は米国経済よりも、インフレ対策を優先させる。
    ・FRBの米国連邦公開市場委員会(FOMC)は5/6〜7に開催された。FRBはFOMCで5/7、「金利据え置き」を決定した。トランプ関税の影響で物価上昇(インフレ)懸念があり、その動向を見極める方針。
    ・仕入れ価格指数がすでに上昇し4月で高水準になっており、さらなる上昇が確実視される。
    ・とてもじゃないがトランプ大統領や株式市場が希望する金利低下は難しい。

  ・名目経済成長も、消費支出の減退の波を受け、減退へ働く可能性もある。

  ・規制緩和が経済成長のエンジンになるというが、経済への即効性を期待するには無理がある。
    ・規制緩和が米国経済に好影響を与えるには相当の年数がかかるためだ。原油生産のように「掘りまくって原油価格を下げる」ような単純なものではない。

 2)所得税減税の財源として「関税」収入に期待しているが、かなわない夢
  ・減税の財源は「関税」、だが関税収入の多くが国債利回り支払いに充当される。昔、発行された低金利の国債が償還されると、高金利の国債発行となる。その国債利回りが、トランプ氏が誘引した「米国売り」でさらに高金利となる。トランプ減税の財源となる「関税」は、金利支払いで費消されていく。
  ・トランプ構想では所得減税によって、物価上昇で減る家計収入の補填期待をしているが、国債利回りの支払いを考慮すると、その100%実現の可能性は低い。

●3.FRB、3会合連続で「金利据え置き」、インフレ懸念の動向を見極めと判断(毎日新聞)
 1)トランプ政権の関税引上げで物価上昇(インフレ)が再燃する懸念が強まっており経済動向の見極めが必要と判断した。

●4.トランプ関税、EU製品の打撃は5,490億ユーロ(約90兆円)規模に膨らむ(ブルームバーグ)
 1)米国はさらに、木材・医薬品・半導体・鉱物・トラックの輸入に関税賦課を表明。この場合のEU製品の対象が1,700億ユーロ(約28兆円)増え、EUの対米国輸出全体の約97%が関税対象になる。

●5.EUは、研究開発の促進に3年で820億円増加、米国政権に不満の研究員を誘致(TBS)
 1)マイクロン・フランス大統領も「フランス政府は160億円を投じる」と表明済み。

●6.米国3月貿易赤字は1,405億ドルと過去最大、トランプ関税の前倒し輸入急増(ブルームバーグ)
 1)2月は1,227億ドルの赤字で、3月は赤字幅が前月比14%拡大。

●7.EU、米国と関税交渉が決裂なら、1,000億ユーロの米国製品を標的に関税強化(ブルームバーグ)
●8.市場の不安定な変動、あらゆる投資家が損失の可能性=ゴールドマン(ブルームバーグ)
●9.米国政権、ハーバード大学への新たな助成金を凍結、対立激化(ロイター)
●10.テスラ、4月英国販売台数は前年比62%減で2年ぶり低水準、欧州で逆風(ロイター)
●11.アップル、中国販売が予想下回り不安拡大(Kabutan)
●12.ドル安でアジア通貨急伸、中銀が相次ぎ介入、米国売りの余波広がる(ブルームバーグ)
 1)アジア通貨は、ドル安を背景にかつてない高値に達し、域内の中央銀行は行き過ぎた通貨高を抑制するため介入を余儀なくしている。
  ・香港金融管理局(中央銀行)香港ドル防衛に向け過去最大規模の米国ドル買いの介入を実施。台湾中銀も昨年11月以来の高値を付け介入に踏み切った。
  ・投資家の間では米国資産の保有に消極的な姿勢が広がっている。
    ・MSCI新興国通貨指数は過去最高値を更新した。
    ・人民元、台湾ドル、マレーシア・リンギットなどの通貨が上昇する可能性が高い。

 2)「米国売り」の流れのなかで、円や人民元を含むアジア通貨は、「自国への資金回帰」に伴う買いと代替役投資需要の恩恵を受けている。

●13.バークシャー、アベル氏がCEO就任、バフェット氏は会長留任(WSJ)
●14.米国フォード、関税で▲2,000億円減益へ、2025年業績予想取り下げ(時事通信)
●15.トランプ大統領、FRB議長は「堅物」と批判も、解任は否定(ロイター)
●16.トランプ大統領、外国製映画に関税100%課税、ハリウッド衰退防止へ(テレビ朝日)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
 1)5/5、祝日「労働節」のため休場
 2)5/6、上海総合+37高、3,316
 3)5/7、上海総合+26高、3,342

●2.財新・4月中国サービス部門PMI50.7、3月51.9から低下、7カ月ぶり低水準、関税重し(ロイター)
 1)中国経済は政府の刺激策に支えられるも、根強いデフレリスクや長引く不動産不況、米国の関税措置に直面している。

■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
 1)5/5、祝日「こどもの日」のため休場
 2)5/6、祝日の振替休日のため休場
 3)5/7、日経平均▲51円安、36,779円

●2.日本株:株高要因の多くはすでに織り込まれている
 1)株高要因の多くはすでに織り込まれている
  ・米FRBは、株式市場とトランプ大統領の期待「金利引下げ」に沿えない。
    ・4月仕入れ価格指数は急伸している。
    ・もし、FRBが「金利引下げ」を決定したならば、トランプ氏への迎合であって、インフレを助長し家計を悪化に導くことになる。パウエルFRB議長の真価が問われる。
    ・米国FRBの政策金利決定するFOMCは5/6〜7に開催され、「金利据え置き」を5/7に決定した。

  ・株高へと導いた要因
    ・FRBの金利下げ観測(トランプ氏の「利下げ」要求、株式市場の思惑)
    ・トランプ高関税の緩和期待。
    ・中国の米国への歩み寄り期待。

  ・日経平均は、米国発の情報を共有して株価上昇した。
    ・4/7の大底から、約1カ月間の戻りとなった。だが、この1カ月間の株高情報は「うわさ」でしかない。現実化された情報に基づくものではないことに留意したい。

  ・相場の格言「『うわさ』で買い、『事実』で売り」がある。
    ・決算発表シーズン中であるが、終盤に差し掛かった。トランプ関税の影響が、各社見通しのなかで出始めている。
    ・日経平均の恐怖指数は5/7、29.85と前営業日比+3.11高しており、注意喚起している。5/7の日経平均指数は▲51円安だが、それ以外の株価指数はプラスである。しかし、空売り比率が37.6と極端に低いなかでの現象である。海外短期投機筋の先物買い主導があっての5/7の状況を踏まえると、持ち高調整を含めて慎重に対処するようにとの黄色信号が点滅している可能性がある。

 2)市場の先行きに暗雲が立ち込めている
  ・台湾ドル急伸・米国ドル下落で、安全資産だった米国債が売られ、台湾投資家は米国債ETFから引上げる動きが目立つ。
  ・トランプ関税をきっかけに、米国の影響力低下が懸念される事態が進行していることが気がかり。

●3.NTT、NTTデータを完全子会社化へ、再編で2兆円超の投資(共同通信)
 1)親子上場の解消で経営を効率化して意思決定の速度を上げ、海外事業の競争力を強化する。

●4.塩野義、鳥居薬に1株6,350円でTOB、完全子会社を目指す、鳥居薬は賛成(ロイター)
●5.川崎汽船、2026年3月期最終利益は前年比▲67%減の1,000億円見通し(ロイター)
●6.米国が日本に対し、相互関税の撤廃拒否、交渉は難航か(共同通信)
 1)トランプ米国政権が関税引上げを巡る日本・米国交渉で、米国がほぼ全ての国・地域からの輸入品に課す一律10%の相互関税に加え、日本に対する上乗せ分の14%の撤廃も拒否していることが、5/5に分かった。

 2)米国側は一律10%と自動車や鉄鋼などへの追加関税を協議対象から外し、相互関税の上乗せ分の引下げなどに交渉を限定する意向だ。関税全廃を求める日本には極めて厳しい内容となる。

 3)日本を例外扱いしない姿勢は鮮明で、今月中旬以降の集中交渉は難航が予想される。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
 ・4443 Sansan   業績絶好調
 ・6902 デンソー  業績好調
 ・7966 LITALICO  業績好調

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