アメリカの関税交渉、英国と初の合意…英は農業市場開放や航空機購入で譲歩

2025年5月9日(金)13時41分 読売新聞

関税措置を巡り英国と合意し、駐米英国大使と握手を交わすトランプ米大統領(左)(8日、米ホワイトハウスで)=ロイター

 【ワシントン=下里雅臣、ロンドン=中西梓】米国のトランプ大統領は8日、関税措置を巡る交渉で英国と合意に至ったと発表した。米国が貿易相手と進めている関税交渉で、初の合意案件となった。英国は自動車関税の引き下げを勝ち取った一方、農業市場の開放や航空機購入などで譲歩した。

 米国は、英国から輸入する乗用車について年間10万台の低関税枠を設け、27・5%の関税を10%に引き下げる。英国が2024年に米国に輸出した乗用車は10万台あまりだった。鉄鋼・アルミニウムに課す25%の追加関税はゼロとなる。

 米英は、農産物の関税を互いに引き下げることでも一致した。米国は「農家、牧場主に50億ドル(約7000億円)規模の輸出機会が創出される」との見解を示した。英国は、米国産牛肉に1万3000トンの無関税枠を設ける。

 英国は米メーカーの航空機を買うことにも合意した。ラトニック米商務長官は「英国の航空会社が100億ドル(約1・4兆円)相当の航空機を購入する」と説明した。

 英国が巨大ITへのデジタル課税を緩和するとの観測もあったが、合意には盛り込まれていない。米国が各国に一律に課している10%の「相互関税」や、米国が重視する医薬品への追加関税については、継続して協議する見通しだ。

 トランプ氏は英国のスターマー首相との電話会談で「画期的な合意だ」と自賛した。スターマー氏は「合意は両国の貿易を促進し、雇用を守るだけでなく、新たな雇用を創出する」と評価した。

 トランプ氏は8日の記者会見で「英国との関係は特別だ。自動車では(他国と)同じような合意はしないつもりだ」と述べ、他の交渉相手をけん制した。米国は日本との交渉では、自動車や鉄鋼・アルミなどへの追加関税は協議の対象外だと主張している。

「日本のポジションは変わりない」赤沢経済再生相

 林官房長官は9日午前の記者会見で、米英間の関税交渉の合意が日米交渉に与える影響について「各国の立場や状況は様々で、米国との協議がそれぞれ異なるのは当然だ」との認識を示した。日米交渉を担当する赤沢経済再生相も「関税措置の見直しを求める日本のポジションは変わりない。引き続き政府一丸となって最優先かつ全力で取り組んでいく」と強調した。

 武藤経済産業相は記者会見で、自動車関税を含めた米英間の合意内容について「精査し、参考になる部分があるか見極めていく」と語った。一方、江藤農相は、日米関係について「(米英とは)センシティビティー(慎重に扱うべき分野)も、経済連携協定にかかる協議の歴史も全く違う」と指摘した。

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