「生存率は50%」乳がん告知の40歳女性がすぐに買いに走ったモノとは…娘の質問「今、幸せ?」へ秒で返した言葉

2024年5月12日(日)10時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi-Studio

写真を拡大

死は誰にもやってくる。後悔のない人生を送るためにはどうしたらいいのか。FPの黒田尚子さんは自身が40歳のときに乳がん告知をされた経験を踏まえ、お金や終活の相談を受けている。その仕事の根底にあるのは「終活をすることが、この先の人生をより充実したものにする近道」という哲学だ——。

※本稿は、黒田尚子『終活1年目の教科書 後悔のない人生を送るための新しい終活法』(アスコム)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi-Studio

■「生存率は50%」乳がん告知の40歳女性がすぐに買いに走ったモノ


「終活を始めてみたいけれど、よくわからない」そう感じている人は、きっと多いのではないでしょうか。私もそのひとりでした。


以前、私は乳がん告知を受けました。40歳という若さで、です。当初、担当医から生存率50%と宣告を受けて驚き、それなら残される家族のために終活をせねばと、真っ先にエンディングノートを買いに本屋さんに走りました。


ぴかぴかのエンディングノートを前に、ぼんやりと考えていたのが冒頭の気持ちです。


まだ40年しか生きていないけど、いい人生だったのかしら?


そもそも、私にとっての「いい人生」って何?


どうせなら、死ぬ前に「いい人生だった」って、思いたい。そして、死んだ後に周りからもそう思われたい!


あれこれ考えてみると、自分にとっての「いい人生」を全うできるかどうか、これを全部叶えることができるのが終活じゃないかなって思ったんです。


乳がん告知を受けて数年たった頃、まだ小学生の娘に、


「お母さんは今、幸せ?」


と、不意に尋ねられたことがあります。


「うん。お母さんは、とっても幸せ」


私は、すぐに答えました。


そして、即答できた自分に驚いたのです。


娘は、重ねて聞いてきました。


「どうして、お母さんは幸せだと思うの?」


また私は、答えました。


「だってね。こんなかわいい子どもがいるし、ぶっきらぼうだけど、誠実で優しいダンナさんもいるし。仕事は大変で忙しくても、自分のやりたいことができるもの。それに、家族みんなが、健康で元気でいられれば、それで十分幸せ」


そうなんです。


がんを経験して、自分の死を身近に感じた時、普通の当たり前の生活がどんなに幸福だったのかを思い知らされました。幸せは、なるものではなく気づくもの。今や、私の幸福度バロメーターの感度は、かなり敏感です。


あなたが、「幸せを感じられない」「よき人生とは思えない」と言うのなら、もしかして、幸福度バロメーターの設定が、ちょっと高くなっているのかも。そんなあなたに、人生に幸せを呼びこむヒントをご紹介しましょう。


■人生に幸せを運ぶ「5つの欲」


私は、終活をすることが、この先の人生をより充実したものにする近道、と考えています。


ただ、これだけでは漠然としすぎて、納得して「じゃあやってみよう!」となる人は、なかなかいませんよね。では、どうしたら、行動に移してくれる人が増えるのか。次にご紹介する3人の例にヒントがありそうです。


彼らは、実際に終活をした人です。3人は、どんな理由で終活をしたのでしょう。


① Aさん「家族に迷惑をかけたくない」
② Bさん「お金や家の心配をなくして、好きなことをして余生を過ごしたい」
③ Cさん「『最期までちゃんとした人だった』と思われたい」

終活をした理由はそれぞれです。だけど、みな「やってよかった」と口をそろえて言っています。


彼らの動機を、どう思いますか。「なるほどねえ」という感じでしょうか。


でも、「じゃあ、自分もAさんみたいに、人に迷惑をかけないように、終活しよう!」とまで、思ったでしょうか。これは、ごく一部の人かもしれません。


あなたは、終活に興味があるのですよね。でも、自発的には動けなくて、「よし、やろう!」と思える動機がほしくて、読んでくださっているのではないでしょうか。


あなたにとって、人の「やってよかった」体験談だけでは、やってみたいと思える動機としてはまだ弱い。「心が動かない」とも言えるでしょう。


「もっと強い動機さえあれば、動けるのに」。その期待に応えたいと思います。


写真=iStock.com/Alina Rosanova
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Alina Rosanova

■人生に幸せを運ぶ「5つの欲」とは


終活の相談に来る人のお話を伺いながら気づいたのは、「やってよかった」という言葉の中に、さまざまな「気持ち」があるということです。


この「気持ち」は、人それぞれの正解があるものだと思います。それだけに、共感できる人と、できない人がでてきてしまう。


では、その気持ちの最大公約数的なものを発見できないか……。そのために、矛盾するようですが、いったん、頭から「終活」を取り除いて、こう考えました。


「私が、強く、この先の人生に求めることはなんなのか」
「私は、どんな時に幸せを感じるのか」


人が、他人に何を言われるでもなく、自発的に動く時は、そういう問いへの答えが見いだせた時だと思うから。


そして、前述のAさん、Bさん、Cさんの話を思い返し、人間が求める根源的な「5つの欲求」にたどり着いたのです。早速、紹介しましょう。


● 「生きててよかった」を味わいたい
● やりたいことを全部やりきりたい
● 「絆(きずな)」を感じたい
● 人から認められたい
● 心配事をなくしたい

いかがでしょう。言い方の問題かもしれませんが、「人に迷惑をかけないように、終活をしましょう」と言われるよりも、「人から認められたくありませんか。それには終活がおすすめですよ」と言われたほうが、そうなの? 本当にそうならやってみようかな、と興味がわきませんか?


根源的な「5つの欲求」を叶えることで、この先の人生がより充実したものになるはずです。1つずつ見ていきましょう。


■終活をすれば人間の5大欲求に対処できる


①「生きててよかった」を味わいたい

「生きててよかった」と感じる瞬間はどんな時でしょう。


私にとってそう感じたのは、わが子が生まれた時。今でも、子どもが小さい頃の写真を見ると、幸せだった記憶がよみがえります。終活は、そんな「生きててよかった」を味わうこともできるのです。これは、具体的には、洋服やアルバムの整理、片付けなどで叶う欲求です。


②やりたいことを全部やりきりたい

「起業したい」「世界一周したい」「海外で暮らしたい」など、多くの人は漠然とでも、何か夢や希望、理想の自分像を持っているでしょう。もちろん、その理想と現実が一致する人はごくわずか。でも、少しでも理想に近づきたい、最後まで自分らしく生きたいと思いますよね。それに、これまで、家族や誰かのために自分のやりたいことをがまんしてきた人も少なくないはずです。


そうであれば、これからは、自分のやりたいことを全部やってみませんか。これは、終活で言うと、自分の趣味ややりたいことを見つけることに該当します。


③「絆」を感じたい

人によっては、「1人が好き」ということもあるでしょう。でも、それは「1人の時間が好き」ということであって、絶海の孤島に降り立って、そこでも強く生きていける人は本当に少ないのではないかと思います。


何かに属しているとか、数は多くないかもしれないけど、誰かが自分のことをわかってくれている。これだけで人は、安心、安全を感じるものです。これは、終活で言うと、いざという時に頼れる人との関係を作ることが該当します。


④人から認められたい

人間、何歳になっても、人からの評価は気になるもの。ほめてもらえればうれしいし、悪いことを言われると落ち込んでしまう。悪い言葉には耳をふさいで気にしないという手もありますが、人からほめられること、認められることは、時に私たちの心の支え、モチベーションにもなりえます。


「いいね!」「すごいですね」「尊敬します」など、人からほめられて悪い気がする人はいませんよね。「人から認められたい」という承認欲求は、それだけ強いものです。


それに、私の経験的にも、年齢を経るごとに「ちゃんとした人」でいたい、「きちんとした人」だと思われたい気持ちが増す気がしています。これは、終活で言うと、自分の周りの人に迷惑をかけないこととイコールなので、エンディングノートを書く、入院時等のお泊まりセットを準備するなどが該当します。


⑤心配事をなくしたい

人生に、不安なことは付きまとうものです。


特に、年を取ると自分や家族の健康、老後資金、家族関係、相続などなど。心配事、悩み事は尽きません。残りの人生を気楽に過ごしたい、という気持ちもあるでしょう。



黒田尚子『終活1年目の教科書 後悔のない人生を送るための新しい終活法』(アスコム)

これは、終活で言うと、財産の棚卸しや、介護、相続への備えをすることで満たされるはずです。


この本は、「私が終活をおすすめしたくて書いた」というよりも、


もっと幸せになりたくて、


毎日を楽しく過ごしたくて、


そのためにはどうしたらいいかな?


を考えた先に、終活があった。


ということを、あなたにも知ってほしくて書いた1冊なのです。


----------
黒田 尚子(くろだ・なおこ)
ファイナンシャルプランナー
CFP認定者、1級FP技能士。一般社団法人「患者家計サポート協会」顧問、城西国際大学・経営情報学部非常勤講師もつとめる。日本総合研究所に勤務後、1998年にFPとして独立。著書に『親の介護は9割逃げよ 「親の老後」の悩みを解決する50代からのお金のはなし』など多数。
----------


(ファイナンシャルプランナー 黒田 尚子)

プレジデント社

「乳がん」をもっと詳しく

「乳がん」のニュース

「乳がん」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ