相場展望5月15日号 米国株: ドル高・米国金利が上昇・NYダウが急伸も、さらなる高値には壁 日本株: 海外短期投機筋の売り転換と、格言「5月に売れ」に注目

2025年5月15日(木)15時2分 財経新聞

■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
 1)5/12、NYダウ+1,160ドル、42,410ドル
 2)5/13、NYダウ▲269ドル安、42,140ドル
 3)5/14、NYダウ▲89ドル安、42,051ドル

【前回は】相場展望5月12日号 米国株: ベッセント効果で、トランプ関税が起こした「米国売り」から脱出⇒株高へ 中国株: 中国4月輸出は、米国向け大幅減も、迂回輸出でASEAN向けが急増・EU向け増と「したたか」さを示す 日本株: 株式相場は「やや楽観に傾きすぎ」

●2.米国株:ドル高・米国金利が上昇・NYダウが急伸したが、さらなる高値には壁
 1)米国・中国の関税協議で5/12の合意を受け、NYダウ+1,000ドル超上昇
  ・株式市場に楽観論が急浮上して、株買いが拡大した。

 2)金価格は急落
  ・株式市場の急騰を受け、金にリスク回避していた資金の一部がが株式市場に戻った。

 3)米国・中国はともに関税を、90日間一時停止を含め▲115%引き下げ
  ・米国は対中国関税を、145%⇒30%へ。
   中国は対米国関税を、125%⇒10%へ。

  ・米国の対中国への関税引き下げ
   ・4/2発表した「相互関税」34%の内、24%を90日間停止、残る10%は維持。
    4/2以降、2度にわたって上乗せした91%は取り消す。
    相互関税前に合成麻薬フェンタニルへの対応が不十分として課した20%は維持。
    以上、145%⇒30%に関税を引き下げる。
   ・ただし、鉄鋼・アルミニウムに課した25%は維持する。

  ・中国の対米国への報復関税
   ・米国が課した相互関税に対する報復関税34%の内、24%を90日間停止。
    その後の追加報復関税91%は取り消す。
    以上、125%⇒10%に関税を引き下げる。
   ・フェンタニルを理由とした関税に対する報復として、米国産の石炭・農産品に課した最大15%の関税は維持する。
 
 4)米国・中国が双方とも関税を▲115%引き下げで合意も、今後の協議は不透明
  ・中国が輸出規制をしたレアアースなどの規制緩和は公表されていない。
    ・レアアースは戦闘機・潜水艦など武器、半導体製造に欠かせない。
  ・米国が求める(1)中国の市場開放や(2)米国の貿易赤字解消について依然として不透明である。

 5)ドル高・米国金利が上昇・NYダウが急伸したが、さらなる高値には壁
  ・国債など安全資産から、株などリスク資産に資金がシフトしたため、国債価格が低下⇒金利が上昇した。

  ・米国と中国が追加関税の引き下げで合意したことを受け、世界的な貿易摩擦が緩和するという期待が高まり、株式が買われて上昇した。

  ・5/13発表の4月消費者物価指数(CPI)は前年同月比+2.3%増、今後の小売売上高などの経済指標に注目が集まっている。

  ・長期金利が5/14に4.542%まで上昇、3月の株高から下落に転じた時点の金利高に戻ったことに着目して警戒したい。

  ・トランプ関税が物価情勢に与える影響について、市場は継続して注視している。

 6)ベッセント効果で、景気と株式への懸念は後退も、依然として先行き不安は高い
  ・ロイター/イプソン調査
     調査期間     4/16〜21  5/12〜13
    インフレ懸念     76%  ⇒  69
    株式市場の心配    67   ⇒  60

  ・米国長期金利が3月の株高時点の水準まで上昇しており、米国債券市場では警戒レベルが上がっている。長期金利の上昇は、株式相場の割高感を示すため今後慎重姿勢が求められる。

●3.米国ウォルマート、中国の取引先に生産再開を要請、関税引き下げを見越し(東洋経済)
●4.米国マイクロソフト、従業員約6,000人削減方針、AIに経営資源集中か(NHK)
●5.関税を引き下げても経済的影響は著しい=クーグラーFRB理事(ブルームバーグ)
●6.米国に対する世界の評価が低下、中国を下回る、「米国第一主義」が影響(ロイター)
●7.米国・中国が90日間の関税率引き下げで合意する劇的な展開(野村総合研究所)
 対中国の関税率は145%⇒30%に大幅低下
 日本のGDP押し下げ効果は▲0.56%縮小
 米国側が大幅譲歩し、事実上の白旗か
  1)合成麻薬フェンタニルに関係する関税20%は維持する。
  2)中国は、米国に対する関税率を125%⇒10%に引き下げる。
  3)いずれも期間は5/14から90日間の暫定措置である。

●8.トランプ氏、薬価引き下げで大統領令に署名、▲30〜▲80%の値下げを主張(ブルームバーグ)
 1)米国外で製造された薬も対象で、引き下げに応じない国に対しては追加の関税を導入するとの方針も明らかにした。(TBS)
 2)米国では薬の高価格が社会問題になっており、引き下げを実現することで国民の支持を高める狙いがあるとみられる。

■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
 1)5/12、上海総合+27高、3,369
 2)5/13、上海総合+5高、3,374
 3)5/14、上海総合+29高、3,403

●2.中国、新規銀行融資で4月は予想以上の急減、貿易戦争で需要低迷(ロイター)
●3.中国、フォルクスワーゲン供給業者にレアアース磁石輸出許可、先月の停止以来初(ロイター)
●4.中国4月の新車販売台数は前年同月比+9.8%増、新エネルギー車の販売好調(NHK)
 1)トヨタ +20.8%増、ホンダ ▲40.8%減、日産 ▲15.7%減(共同通信)

■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
 1)5/12、日経平均+140円高、37,644円
 2)5/13、日経平均+539円高、38,183円
 3)5/14、日経平均▲55円安、38,128円

●2.日本株:海外短期投機筋の売り転換と、格言「5月に売れ」に注目
 1)家計支出の食費の割合であるエンゲル係数は28.3%と超高水準
  ・主食のコメ価格は、備蓄米を放出しても高止まりの現状が続く。
  ・物価高の象徴としてコメ価格がみられているだけに、
  ・賃上げには岸田・石破政権が躍起となってきたが、物価上昇は容認してきた。
   日銀を含め、むしろ物価上昇をけし掛けてきた感がある。
   結果として、エンゲル係数は最高値まで駆け上がった。
   庶民の家の「かまどから出る煙」を気にしない政権が続いている。

 2)円安が進行と思ったとたん円高へ
  ・円相場の推移(対ドル)
     5/06  142.45円
     5/12  148.46
     5/14  146.78
  ・ベッセント効果でドル高・円安も、為替相場への波及が限られている。
  ・外国為替市場で、トランプ関税が及ぼす悪影響払拭となっていないようだ。

 3)空売りが引っ込む中、海外短期筋の先物買いで日経平均上昇も、天井か
  ・5/14、日経平均は5日ぶりに反落。
       TOPIXは14日ぶりに下落。
   持ち高調整の売りが優勢となった。
  ・日経平均は38,000円台を上抜けるエネルギーは乏しい。
  ・トランプ関税の影響で今年度業績の見通しで減益が相次ぐ。
  ・決算発表シーズンも終盤、自社株買い発表という株式相場上昇を支えてきた新規材料も乏しくなる。
  ・この時期に合わせて、海外短期投機筋は買いから売りに転換するタイミングを迎えた。
  ・格言「5月に売れ(セル・イン・メイ)」到来の時節となる可能性に注意したい。

●3.三井住友FG、発行済み株式の1%・1,000億円を上限に自社株買い・消却(ロイター)
 1)2026年3月期純利益予想、前期比+10%増の1.3兆円 

●4.KDDI、発行済みの4.4%・4,000億円上限に自社株買いを決議(ロイター)
●5.インフロニア、三井住友建設を941億円で完全子会社化、1株600円でTOB(ロイター)
●6.楽天、1〜3月期も▲735億円の赤字、モバイル事業は改善(ブルームバーグ)
●7.ソニーフィナンシャル、ソニーが分離して9/2に上場予定(ロイター)
●8.ソニー、2026年3月期純利益予想、前期比▲12.9%減、関税1,000億円の影響(ロイター)
 1)発行済み株式の1.66%・2,500億円上限に自社株買い。

●9.SUBARU、今期の業績予想は未定、関税など「合理的な算定困難」(ロイター)
●10.ローム、2025年3月期決算で▲500億円赤字、EV向け半導体が不振(読売新聞)
●11.ヤマハ発動機、トランプ関税で500億円、業績予想は精査中として据え置き(静岡放送)
●12.資生堂、1〜3月決算で営業利益は前年同期比▲27%余減少、中国の景気低迷や米国販売不振(NHK)
●13.ソフトバンクGのAI構想、資金調達に減速感、米国関税政策も重荷に(ブルームバーグ)
●14.シャープ、三重の亀山工場一部を台湾の鴻海に売却へ(NHK)
●15.スズキ、2024年度決算で営業利益が過去最高、今年度は▲22%減少見通し(NHK)
●16.デンソー、ルネサス株4.1%分を売却へ、売却益1,092億円見込む(時事通信)
 1)資金を電動化や自動運転など今後の成長分野に振り向ける。

●17.マツダ、今期業績予想の開示を見送り(ロイター)
●18.オリックス、発行済み株式の3.2%・1,000億円を上限に自社株買いを決議(ロイター)
●19.日産、1万人超の追加人員削減の方針、あわせて2万人規模削減へ(NHK)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
 ・3182 オイシックス・ラ・大地  業績好調
 ・4063 信越化学         業績堅調
 ・4578 大塚           業績堅調

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