「苗字+さん」で呼び続けるのは絶対ダメ…出会って2秒で相手との距離を一気に縮める"歌手のスゴい声かけ"
2025年5月16日(金)16時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Midnight Studio
※本稿は、船見敏子『結局、いいかげんな人ほどうまくいく』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
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■出会って2秒で「とこぽん」と呼ばれた私の心境
あなたは人と出会ったとき、どのタイミングであだ名で呼び始めますか?
いつまでも苗字にさん付けだとよそよそしい感じがするけれど、かといってあまりに早い段階だと失礼だし……。意外と悩ましいものですよね。
ある歌手の取材をしたときのこと。私が名刺を渡すと、その人はそれを手に取るやいなや、こう言い放ちました。
「とこぽん!」
私の名前をモジってあだ名をつけたのです。その間、わずか2秒。
その人は、人をあだ名で呼ぶことで有名でしたが、出会ってすぐにあだ名をつけられるなんて。私は驚き、戸惑いました。
でも、感激し、とても嬉しくて、思わず「ありがとうございます! 嬉しいです!」と、大きな声で答えていました。
もしかすると、これは彼のテクニックなのかもしれません。というのも、「ネームコーリング」という、心の距離が縮まる心理的効果があるからです。
■特別な呼び方は相手との距離を短時間で縮める
名前を呼んでもらえると、「存在を認められた」、「好意を持たれている」と感じ、相手に親近感や信頼感を抱くようになります。
「今日は天気がいいですね」と言うのではなく、「佐藤さん、今日は天気がいいですね」と名前を入れることで、心の距離が縮まるのです。
さらにあだ名で呼ぶことで、親近感が増します。あだ名は隠語の一種で、親密さの象徴。結束や連帯感を高める効果があるのです。
歌手にあだ名で呼んでもらえたからか、私はその一瞬で緊張感がほどけ、まるで古くからの友人と話している錯覚に陥りながら、楽しくインタビューできました。
仲良くなりたい人がいるなら、早い段階で思い切ってあだ名で呼んでみてはいかがですか?
一足飛びに気の置けない仲になれるかもしれませんよ。
いいかげんのすすめ
苗字+敬称から抜け出せば、関係性は変わる
■期待を口にするとその通りになる
カウンセラーの資格を取ったばかりで何もできない私に、いつも「大丈夫、あなたならできる」と声をかけてくれた恩人がいます。
初めて研修講師として登壇するときには、「絶対いい研修になる。あなたならできる!」と、まるで未来を勝手に予言するがごとく、背中を押してくれました。そのおかげで予想以上にいい反響をいただくことができたのです。
誰かに期待されると、プレッシャーに感じる一方で、なんだか嬉しい。勇気がわいてきて、相手の期待に応えようと頑張ることができます。
写真=iStock.com/mapo
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私たちはそんなふうに、他人の言葉に左右されます。
アメリカの教育心理学者、ロバート・ローゼンタールは、とある小学校で、ランダムに複数の児童を選び、「成長が期待できる」と担任の教師に伝えました。するとその後、その児童たちの成績が本当に伸びたのです。なぜなら、担任の教師が児童に期待をかけたから。
ローゼンタールは、他者の期待によって学習や作業の成果が上がるという心理的効果を提唱しました。それは「ピグマリオン効果」と呼ばれています。
未来を勝手に予言すると、それは現実になるということです。
誰かに頑張ってほしいとき、良い未来を勝手に予言してみると、思いがけず嬉しい結果が得られるかもしれません。
恩人の「あなたならできる」は、実は口グセだったのだとあとで知りました。うまくいくかどうかもわからないのに、「あなたならできる」と言いまくっているのです。
それでも、私以外にも何人ものカウンセラーを育てています。
ピグマリオン効果を狙っているのかどうかわかりませんが、人を育てるのが抜群に上手なことには間違いありません。
いいかげんのすすめ
部下や後輩に「あなたはできる」と言いまくると、巡り巡って自分が楽になれる
■有名アーティストがタメ口のときだけ目を合わせる理由
何度か取材をしたアーティストは、あまり目を見てくれない人でした。斜め下や斜め上ばかり見ているので、「質問がつまらないのかな。それとも信頼してくれていないのかな」と不安になってしまいます。
ところが彼は、「〜なんだよね」とタメ口をきく瞬間にふっと、私の目を見るのです。
ほんの一瞬のアイコンタクト攻撃!
それを、1時間の取材時間の中に、何度かしかけてくるのです。ドキッとして、心拍数が急激に上がるのを感じつつも、私は常に冷静を装って取材を続けました。
アイコンタクトは、あなたと積極的にかかわりたいという思いを表す行為。
信頼関係の構築には欠かせないコミュニケーションスキルです。
私はカウンセリングをする際、アイコンタクトを常に意識しています。目を見ることで、「あなたの話をしっかり聴きます、理解したいです」という思いを伝えることができ、初対面でも短い時間で信頼関係の構築ができます。
とはいえ、実はアイコンタクトのしすぎも良くありません。ある研究によれば、アイコンタクトを、全体の時間の半分から4分の3程度に抑えたときが最も友好度が高まることがわかりました。
船見敏子『結局、いいかげんな人ほどうまくいく』(PHP研究所)
また、2秒以上目を見つめると、友好度が下がってしまうことも明らかになりました。つまり、1秒程度のアイコンタクトを繰り返すと、いい関係性が保てるのです。
件(くだん)のアーティストの取材をするたび、どんどんファンになっている私がいました。彼は、人たらしで有名。スタッフからの評判も非常にいいのです。
絶妙なさじ加減のアイコンタクトで、たくさんの人の心をわしづかみにしてきたのだと思います。
一生懸命目を見るのではなく、ふっと一瞬目を合わせる。プレゼンや営業でもきっと有効です
いいかげんのすすめ
一瞬だけ目を合わせて、あとは飄々としておけばOK
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船見 敏子(ふなみ・としこ)
メンタルヘルス・コンサルタント
公認心理師、元雑誌記者。大手出版社で雑誌編集に携わり、1,000名超の著名人を取材。インタビュアーとしてのスキルを身につけるべくカウンセリングを学んだことを機に、2005年にカウンセラーに転向。以後、全国の企業・自治体等でカウンセリング、研修などを通じメンタルヘルス支援を行う。これまでに1000社・10万人の支援をしてきた。産業カウンセラー、1級キャリアコンサルティング技能士などを保有。株式会社ハピネスワーキング代表取締役。著書に『仕事で悩まない人の相談力』(WAVE出版)、『幸せなチームのリーダーがしていること』(方丈社)など。モットーは「幸せに働く」。
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(メンタルヘルス・コンサルタント 船見 敏子)