トランプ氏が日鉄のUSスチール買収を容認、今後はどうなる?
2025年5月28日(水)9時18分 財経新聞
トランプ米大統領が23日、日本製鉄によるUSスチールの買収を容認する意向を示した。自身のSNSで、「7万人の雇用を創出し、米国に140億ドルの経済効果をもたらす」と投稿。これを受けて、USスチールの株は21%急騰し、日鉄株は前営業日比一時7%上昇するなど、マーケットから好感された。
【こちらも】米国債格下げが株式市場に与える影響は?
この買収劇に際しては、全米鉄鋼労組(USW)などの有力な労働組合が反対しており、バイデン前大統領は国家安全保障上の懸念を理由に禁止を命じるなど、泥沼の様相を呈してきた。
トランプ大統領も反対の姿勢だったが、ここにきて容認となり、お互いにウインウインの買収が実現するのだろうか?
●どうなる買収の中身?
買収報道後、トランプ氏は25日に記者団へ「これは投資であり、部分的な所有だ。米国が支配することになる」と発言しており、日鉄が目指す100%子会社とは乖離がある。
ただ、日鉄側もUSスチールの取締役の過半を米国籍にするなど、反発が予想される労組などにも配慮した提案をしてきた。
日鉄は米政府との交渉で、新たに140億ドル(約2兆円)の投資を提案したと見られている。
「即時に阻止する」と息巻いていたトランプ氏にとっては、米製造業の復活と高関税に矛盾するようにも見えるが、雇用の創出と巨額投資を引き出したと、成果をアピールしやすい。
●実現にはハードルも?ドル高円安要因にも?
完全買収が実現すれば、ドル資金の手当てが必要となり、4円程度の円安要因になりやすいと見られている。報道以降、大きくドル高円安に進むことはなかった。
ただトランプ氏の承認は条件付きであり、承認にも曖昧さが残るなど、まだまだ様子見な部分が多い。米国のコントロールが実現しなければ、反故にされる可能性も捨てきれない。
巨額買収ということで、日鉄の財務への懸念もある。ただUSスチールにとっても米国にとっても、生産力が落ちている現状で、安全保障の面でも日鉄との提携は渡りに船であることは間違いない。
まだまだ二転三転ある気配はあるが、トランプ氏の承認は大きな前進ではあるだろう。