「自動車税から逃げる人」はどうなってしまうのか…延滞金よりこわい「未納付ペナルティ」の中身
2025年5月29日(木)18時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/dontree_m
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■納付率は88%、しかし滞納も多い
毎年、ゴールデンウィークが明けた頃に届く自動車税の納税通知書は、その年の4月1日時点での所有者の住所に送られている。4月1日時点の所有者に納税義務があるため、車検証に記載された所有者住所に届くようになっている。
総務省のデータによると、2023年度の全国の期限内納付率は約88.2%、滞納件数は537万4749件だった。
編集部作成
この時期によくあるのが「車を売却したのに自動車税の納税通知書が届いた!」「知人に譲ったはずなのにまた自動車税が来た!」というトラブルである。
要するにこれは売却した車の名義変更が前年度末までに行われていなかった、ということを意味している。もちろん、3月中旬以降の売却だと名義変更が間に合わないこともあるだろう。
そのような時、車を買い取った中古車店は「自動車税の納税通知書が来たら店に送ってください」などと言うものだが、中には店に納税通知書を送っても完全に無視されることもある。督促状が2回来たので仕方なく店に連絡したら担当者が退職していて、さらにその後、店自体が閉店していて連絡先も不明……ということもあった。
■青森・秋田だけは期限が6月30日
自動車税の納税通知書を中古車店宛てに送ってもらえばいいのでは?と思うかもしれないが、納税通知書の送り先の住所を変更する際、氏名や法人名の変更は不可となる。納税通知書が届く前に県税事務所などに連絡をしてあらかじめ店宛てに送り先を変える……なんてことは不可能なのだ。
自動車税の納付期限は毎年5月末なのだが、今年のように5月31日が土曜日となる場合は延期されて6月2日(月曜)が期限となる。
ちなみに青森県と秋田県だけ納付期限が違うことをご存じだろうか? この2県では県条例で、5月末の納付期限が1カ月延長されている。今年でいえば6月30日(月曜日)が納付期限だ。
青森県庁ホームページより
■1000円未満の延滞金は払う義務がない
自動車税を納めないと延滞金が発生する!とは多くの人が想像することだろう。結論から言えば、確かに延滞金はつくのだが、実際に2〜3Lのガソリン車の場合、延滞金の支払い義務が発生するのは自動車税納付期限の3〜4カ月後になる。
延滞金自体は納付期限の翌日からわずかに加算されるのだが、1000円に達するまでは切り捨てとなり請求されることはない。もちろん最初の督促状にも延滞金が記載されることもない。
延滞金の計算方法は少し複雑だが、5月末を納付期限とする全国の都道府県で同じ計算式となっている。延滞金の利率(2024年の場合)は期日からの期間によって異なっている。
①期日から1カ月以内:2.4%
②1カ月を超えた場合:8.7%
この延滞金の利率も実は毎年同じというわけではなく、以前調べた2019年は①は2.6%、②は8.9%であった。
たとえば、自動車税4万5000円を半年間(180日)滞納した場合の計算式は以下の通り。
延滞金額=【45000円×30日(最初の1カ月分)×利率2.4%÷365日】+【45000円×150日(180日−30日)×利率8.7%÷365日】=1697円
実務上、100 円未満の端数金額は切り捨てるため、納めるべき金額は4万5000円+1600円=4万6600円となる。
■自家用車の最高税額は12万円超
なお、延滞金は自動車税の金額に対して加算されていくので、税額が高いほど「延滞金1000円」になるタイミングが早くなり、低額であるほど遅くなる。
例を挙げると、自家用乗用車の最高自動車税額は13年以上経過した6.0L超の車であり、その税額は「12万7600円」と凄まじい金額だ。この12万7600円の最高税額では1000円超の延滞金がつくのが7月下旬となる。
筆者も20年以上前だが排気量5.8Lのフォードブロンコという幅2Mの巨大な4×4を所有していた。13年以上の重課で税額10万円超となるが、普通貨物車登録の1ナンバー車だったため、税額は激安の1万6000円だった。貨物車は1年車検だがその分(?)税金が安く設定されている。
また自動車税は環境性能によっても変化する。ハイブリッド車や電気自動車は登録から13年を超過しても「重課」にはならない。
■延滞金以外に課せられるペナルティとは
税額4万5400円(13年超の重課。2Lガソリン車の場合)の車両の場合、延滞金が1000円を超えるのは9月25日頃となる。しかし、延滞金以外にも重大なペナルティがある。それは、自動車税を納めていない車は継続車検が受けられなくなるということだ。
例えば今年の自動車税を滞納していて7月半ばに車検だったとする。この時期ならまだ延滞金はつかないが、納税証明書がなければ車検が受けられない状況になる。
なお、登録車(普通車)については、2015年4月からオンラインで納税情報を確認できるシステム「JNKS(自動車税納付確認システム)」が順次導入されており、車検時(新規登録・継続検査)の納税証明書の提示は省略可能となった。
納税証明書が必要になるのは、納税情報がシステムに反映される前に車検を受けるケースだ。納税しているかどうかの情報がシステムに反映されるまでには、支払い方法にもよるが最大4週間程かかることもある。
納付後すぐに車検を受ける必要がある場合は、金融機関やコンビニエンスストアの窓口で納付し、納税証明書を取得しておいたほうが無難だ。車検でお金がかかるところに、忘れていた自動車税も加わるとなると少々きつい。
写真=iStock.com/Shutter2U
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■期限内であればポイントを付けられてお得
また、ペナルティと言えるほどではないだろうが、納付期限を過ぎてからの納付は、カード払いや電子決済ができず、ポイントもつかなくなるし、県税事務所などに出向いて納めることになる。近所であればよいが、県税事務所が遠い場所にある場合は、これも延滞金どころじゃない交通費がかかる可能性も出てくる。
県税事務所で納める場合は、納税通知書がなくてもOK。ナンバープレートなどのデータでその場で発行してくれる。
未納のままほったらかしておくと、督促→催告→財産調査・捜索と来て、最終的には財産を差し押さえられる。
どれくらい滞納していると督促状が届くものなのだろうか?
督促状が自治体から届く時期は地方税法によって定められており、基本的には「納付期限から20日」とされている。つまり、今年のように納付期限が6月2日の場合は20日後の6月22日頃。
しかし、実はこの督促状も自治体によって異なっている。
以前、総務省自治税務局に聞いたことがあるのだが、このような回答だった。
「地方税法律第165条第1項(自動車税に係る督促)において、納税者が納期限までに自動車税に係る地方団体の徴収金を完納しない場合においては、納期限後20日以内に督促状を発しなければならないと定められています。しかし、165条第2項では、特別な事情がある都道府県については、20日以内ではなく50日以内で督促をすることになっています。」
■なぜ神奈川県は督促状が遅れて届くのか
自治体によって50日まで督促状の発行が延長されるということで、実際に筆者が住んでいる神奈川県では7月20日頃に送付されているそうだ。
だが、「特別な事情」とは何なのか? こちらは神奈川県自動車税管理事務所に聞いてみた。
「自動車の保有台数が多い都道府県では、まず20日という短期間で処理をすることが物理的に不可能です。自動車の登録台数が全国トップ3に入っている神奈川県では自動車税の処理に時間もかかるため50日で督促状を出すことになっています」
特別な事情とはつまり処理する車の台数がけた違いに多いということなのだ。
ところで、自動車税をどうしても納められない。現金が用意できない!という人はまず県税事務所に相談してみよう。事情を説明して規定の書類などを提出すれば分割で納めることも可能となる。現金が用意できない事情については考慮してくれるはず。ただし、これも都道府県によって対応が異なるので管轄の県税事務所に聞いてみてほしい。
■悪質な中古車店とのトラブルを避ける方法
最後に、車の売買で自動車税がトラブルの原因になることが増えている。例えば9月に売却した場合、まともな中古車店であれば半年分の自動車税を戻してくれるはずであり、逆に、9月に中古車を購入した場合、10月から翌年3月までの自動車税が見積もりに入ってくるはずだ。
しかし、本来なら半年分でいいのに、なぜか1年分が計上されていたとか、ハイブリッド車なのに13年超の重課税額になっていた……といった悪質なケースもある。
中古車店の営業マンが本当に無知な場合も可能性としてはあるが、少しでも疑問に思うことがあればその場で確認すべきだ。あとで気づいても、難癖つけられて自動車税を戻さない悪い中古車店もあることをお忘れなく。
なお、これは裏技と言えるのかもしれないが、民事不介入と言いつつ、自動車税のトラブルは警察が介入してくれることもある。実際に先週聞いた話だが、筆者の知人が自動車税を納めてくれない買取業者に交渉する際、警察が付き添ってアドバイスをしてくれたおかげで無事解決したそうだ。
その際、警察官は「この時期は自動車税のトラブルで忙しい」と話していたとのこと。どこの警察でも同行してくれるかは不明だが、困ったときには尋ねてみるのもよいだろう。
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加藤 久美子(かとう・くみこ)
自動車生活ジャーナリスト
山口県下関市生まれ。大学時代は神奈川トヨタのディーラーで納車引き取りのバイトに明け暮れ、卒業後は日刊自動車新聞社に入社。95年よりフリー。2000年に自らの妊娠をきっかけに「妊婦のシートベルト着用を推進する会」を立ち上げ、この活動がきっかけで2008年11月「交通の方法に関する教則」(国家公安委員会告示)においてシートベルト教則が改訂された。育児雑誌や自動車メディア、TVのニュース番組などでチャイルドシートに関わる正しい情報を発信し続けている。「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難・詐欺・横領・交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。
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(自動車生活ジャーナリスト 加藤 久美子)