トランプ関税は「違法であり無効」、米国際貿易裁判所が差し止め命令…政権側は控訴

2025年5月29日(木)11時44分 読売新聞

米ホワイトハウスで記者団の質問に答える米国のトランプ大統領=AP

 【ニューヨーク=山本貴徳、小林泰裕】トランプ米大統領が発動した「相互関税」など一連の関税措置について、米国際貿易裁判所は28日、大統領の権限を逸脱しており、「違法であり無効」と指摘し、恒久的な差し止めを命じた。ロイター通信によると、トランプ政権は判決を不服として控訴した。

 判決ではトランプ政権に、10日以内に関税を停止するために必要な行政手続きを発令するよう求めた。政権の経済政策に打撃となる可能性がある。

 判決文によれば、差し止めの対象は、政権が貿易赤字の是正を目的に、全世界からの輸入品に発動した相互関税のほか、合成麻薬フェンタニルの流入を阻止する名目で導入されたカナダとメキシコ、中国に対する追加関税だ。

 これら4種類の関税はいずれも国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく措置だ。IEEPAは、米国の安全保障や外交、経済に「異例かつ重大な脅威」がある場合、大統領が緊急事態を宣言すれば、事前調査なしに即座に輸出入に制限を課すことを可能としている。

 国際貿易裁は「米国憲法では、関税などを課して徴収する権限は原則として議会が有する」「IEEPAはこのような際限のない権限を大統領に与えていない」と言及し、一連の関税措置は無効だと指摘した。

 通商拡大法第232条に基づく自動車や鉄鋼・アルミニウムへの25%関税は、今回の判決の差し止めの対象とはなっていない。

 トランプ関税を巡っては、米国の中小企業5社のほか、ニューヨークやアリゾナなど12州が原告となり、IEEPAに基づく関税措置の差し止めを求めて4月に提訴していた。

 国際貿易裁はニューヨークにあり、関税など貿易に関する専門的な訴訟を扱う。訴訟が長期化すれば、連邦最高裁までもつれる可能性もある。

 今回の判決は、第2次トランプ政権の関税政策を巡る初の司法判断になるとみられる。トランプ政権が相互関税などを巡って日本など各国と進めている交渉に影響を与える恐れもある。判決を受け、金融市場では米株価指数の先物が上昇し、円安・ドル高が進行した。

 米ホワイトハウスのクシュ・デサイ報道官は「国家緊急事態への適切な対処方法を決めるのは、選挙で選ばれていない裁判官ではない。政権はあらゆる行政権を行使してこの危機に対処し、米国の偉大さを取り戻す決意だ」とコメントした。

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