【コンサルから教わった】感じのいい人が忙しくてもやっているたった1つのこと
2024年12月26日(木)6時0分 ダイヤモンドオンライン
【コンサルから教わった】感じのいい人が忙しくてもやっているたった1つのこと
耳を傾ける、話を聞く、ということが年々難しくなっているような気がする。 そう語るのは、「書店員が選ぶノンフィクション大賞2024」を受賞した『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)や『「好き」を言語化する技術』(ディスカヴァー携書)がベストセラーとなっている文芸評論家・三宅香帆氏。三宅氏は2023年と2024年のビジネス書年間ランキング2年連続1位を獲得した『頭のいい人が話す前に考えていること』を読み、コンサルが書くコミュニケーション本としては意外な点があったそう。三宅香帆氏に文芸評論家ならではの視点で本書の魅力を寄稿いただいた(ダイヤモンド社書籍編集局)。
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)や『「好き」を言語化する技術』(ディスカヴァー携書)など著書が次々とベストセラーになっている三宅香帆氏(撮影/小石謙太)
人の話をじっくり聴くことが、難しい
まずは、他人の話を深く聞こう。 コミュニケーションで最も大切なこと、を問われた時、そう答えられる人がどれくらいいるのだろう。私は本書『頭のいい人が話す前に考えていること』において著者の安達さんがそう書いていることに、驚きながら、そう思った。
「そうか、話す前に、まず、聞く、ということが大切なのか」と。
本書はコンサルティング会社で働いていた著者が、知性をもって話す時の技術について伝えた一冊である。ビジネス書のコーナーに置かれているものの、決してビジネスのみの話題で終わっていない。むしろ日常生活ーー家庭でのコミュニケーションや友達との会話においても使える会話術がたくさん掲載されている。
なかでも本書は、話を聞くことにとくに重点を置く。元コンサルの会話術としては、意外かもしれない。しかしそこが、本書の面白いところだ。
耳を傾ける、話を聞く、ということが年々難しくなっているような気がする。たとえば読書やラジオのような、長尺で他人の言葉を摂取するメディアは、年々短い動画メディアにその存在感を取って代わられている。短く早く的確に喋るメディアが重宝される時代だ。そんなタイミングにあって、人の話をじっくり聴くことが、どれほど難しいか。本書を読んで思いを馳せてしまった。人の話を聞いて、それに対して自分の意見を言う。それだけのコミュニケーションが、かなり難しい。
現代ほどコミュニケーションを急いてくる時代はない
みんな時間がない。忙しい。だから人の話を深く聞くことができないのだ。 しかし、それゆえにむしろ深く聞く人のほうに支持が集まるのだろう。国会の答弁を眺めても、テレビのコメンテーターを見かけても、ネットの討論番組を見ても、やはり人の話をちゃんと聞いている人は好感が持てる。なかなかそういう人を見かけないからだろう。現代では人の話をじっくり聴きつつ、的確な返答をするだけで、稀有な存在になる時代なのかもしれない。
これまでもコミュニケーションの本はたくさん出版されてきた。ビジネスのコミュニケーション術、初対面の人とのコミュニケーションを豊かにする方法、それらはどれもビジネス書で語られてきた内容だ。しかし現代ほど、みんなが忙しくてコミュニケーションを急いてくる時代なんて、他にあるのだろうか。仕事も余暇も家庭も、みんな時間を奪い合いながら生きている。だからこそ、人の話に耳を傾けるのが難しい。そしてそんな時代ゆえに、本書の価値はとても大きい。コミュニケーションにおいて、忙しくとも人の話を聞くことがどれほど大切かを説いているからだ。
現代の、忙しい人たちにとって大切なコミュニケーション術。ーー今を生きる人たちが求めている回答そのものを、本書は提示しているのだ。
みやけ・かほ/1994年生まれ。
高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。
著作に『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』、『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』、『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない—自分の言葉でつくるオタク文章術』、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』、『人生を狂わす名著50』など多数。