「教材は子どもたちの味方であるべき」自立学習教材「Selfee」開発秘話

2023年12月28日(木)12時0分 PR TIMES STORY

日本コスモトピアは、学びで社会を変えるため、1982年に小・中・高校生の学習塾として奈良県で事業を開始しました。「子どもたち一人ひとりにほんとうに価値のある教育とは何か?」を問い、一人ひとりの学習進度、能力、個性に合う学習方法や教材で子どもたちの可能性を伸ばす「自立学習」を約35年前に日本で初めて提唱。自立学習によって「社会を変える」ことを目指しています。

前編では、日本コスモトピアが提供する自立学習教材「Selfee」(https://juku-lp5.cosmotopia.co.jp/)はなぜ生まれたのか、開発時の苦労などについて、日本コスモトピア 代表取締役社長の下向峰子氏に話を聞きました。

一斉指導の限界。一人ひとりにあった学習のカタチを

およそ35年前、学校と同じように、塾においても一斉指導が学びの基本でした。一人の先生が生徒30人〜40人に対し、同じ内容の授業を行うんです。教育産業としても、それが主流だったし、経営効率も良いんですよね。ちょうど平成を迎える頃でしょうか。塾に通わせようという親御さんが増えてきて、塾のバブルのような状態にありました。その要因は、各地域でさまざまですが、例えば奈良県は、当時、中学生の通塾率が国内トップでした。というのは入った高校で、大学に行けるかどうかが決まってしまうような構図だったために、高校進学が絶対的な目標になっていました。そのため、塾においても、一斉指導ではなく、もっときめ細かく指導してほしいという保護者からの声があがるようになりました。そこで、1982年に私たちはいち早く、少人数制の形態で塾を始めました。

少人数制といっても、生徒が2人いれば、学ぶ力や状況、性格など同じはずがありません。塾の先生としても、「今この子にはこれが必要、あの子にはこれが・・」というのが見えてくるわけです。その子の力や状況に応じて、その場で対応していける、個別学習のための教材を探しましたが、ぴったり合う教材がありません。先生が問題集を買ってきて、生徒それぞれに合わせて問題を切り貼りしたり、手作業で問題を作るなど、とても大変な作業をすることになりました。これでは先生の手がいくつあっても足りない。そんなジレンマを抱えていました。

「理想とする教材がないなら、作ってしまおう!」

そう思い立ったのが、自立学習をサポートするプリント作成システム「Selfee」誕生のきっかけです。

子どもたちのポテンシャルを引き出すことのできる教材作り

1人ひとりの子どもの成長が一番大事。

それが私たちの軸であり、教材作りに関しても絶対に崩さないと決めていました。

では、どんな教材をつくるか?教材を通して解決したい課題とは何か?お子さんを持つお母さんたちを集めて、実際に子どもたちが抱えている課題や状況などについてヒアリングなども行いました。

勉強ができる子はどんどん進んでいくけれど、置いてけぼりにされてしまう子もいるんですよね。私自身のことも振り返ってみると、やっぱりテストが嫌いだったし、勉強すること自体好きじゃなかった。「勉強好きの人に生まれたかった!」なんて思っていました。だけど、今、勉強が嫌いな子どもたちも、ポテンシャルがないわけじゃない。それをどうやったら引き出していけるのかが、教材を作る際に重視した一番のポイントでした。

当時の社長(現会長)がコンピューターに詳しく、「これからの時代は絶対にパーソナルコンピューターだ!」と、1989年、コンピューターを使った個別指導のための教材開発が始まりました。これがコスモトピアの誕生、教材制作の始まりです。最初は徹底的に繰り返し演習ができる教材を目指しました。問題を選んでプリントアウトしたり成績処理をしたりと、先生向けの機能から始まりましたが、ゆくゆくは、子どもたちが扱えるものにしたいと考えていました。

どこでつまずくのか?大事なのは、“子どもの目線”

ではどうやって制作をしようかと考えた時に、私たちの理念や取り組みに共感してくださる方を募集しました。中でも子育て中のお母さんたちに活躍していただこうと、短時間労働を受け入れ、制作メンバーに加われるようにしました。当時は寿退社が当たり前で、結婚したら退社する時代だったので、出産しても社会とのつながりを断ちたくないと考える優秀な方達がたくさんいました。それでも、私たちが作りたい教材の仕組みを理解してもらうのは大変でした。

基本があって、まとめ、それから練習問題、応用・・。そのようなイメージを持っている方がほとんどだったんですが、私たちが作りたいものはそうではない。

1個1個の問題がどのような役割を果たすのか、全体を俯瞰して見ないと理解するのが難しかったと思います。また、その頃はまだ(Microsoftの)officeが得意な方もいらっしゃらなくて、みなさんエクセルを使うことにも苦戦してましたね。

作成者に関しては、皆さん優秀だからこその苦労がありました。問題の解き方が分かっている人が作った教材って、分からない子どもたちにとっては手助けにならないんですよね。だけど、作成者の方は、なぜ分からないのか、なぜそこでつまずくのかが、分からないんです。私が「ここをもう少し丁寧に説明した方がいい」などと伝えると、作成者からは、「それは数学の論理に反します」というような言葉が返ってくるわけです。でもそのまま作っていたら、他の教材と同じじゃないですか。私たちは、今までに“ない”ものを作りたいんです。

だから、「これは“挑戦”だと思ってください。特に解説では教科の理論をちょっと横に置いて、スマートにではなく、どろくさく説明をしてください」とお願いしました。

自信がある教科に関しては、どうしても自身の考えを曲げられないので、理系科目の教材を作る時には文系の方に、文系の科目を作るときには理系の方にお願いをするのがひとつのコツでした。不得意な教科を聞いて、その教科を担当してもらったり。それはコスモトピアらしいやり方かなと思います。

関わる人みんなで、わいわいギャーギャー議論しながら、正味の話ができていた時代でしたし、思いをこめて作っていました。そして出荷する時には、みんなで「子どもたちの役に立つように」と、祈って送り出していたんですよ。

教材は子どもの味方であるべき

今の教材は二極化していると思うんです。人間の体温を感じられるものと、システマティックなことが最優先されてるものと。後者のものは、子どもたちの考え方にはちょっとそぐわないところがあると思っています。最近では、教材にもAIが導入されていたりもしますが、システム化するためには仕様を統一していかなきゃいけない。でも教材ってそんなもんじゃないと思うんですよね。やっぱり人それぞれ、つまずくところが違うし、つまずいた時に、どんな気持ちになるか。そしてその気持ちをどうやったら転換できるようになるのか。

それを考えて形にしないと意味がない。

子どもたちにとって、教材は、その時の力量を試すものじゃない。その子の評価をするものでもない。いろんなことを知っていて、学ぶことのできる“味方”のような存在であるべきなんです。

勉強が好きになれない、勉強することをしんどいなって思っている子は今も多いと思うんです。そんな子どもたちの中で、もつれている糸を解くためには、こうやったらいいんじゃないか、ここを引っ張ってみたらいいんじゃないか、そうやって模索したり学ぶ姿を見せてあげなくちゃいけないと思います。

大事なのは機能ではなく、やる気というか、モチベーションなんです。では、どんな時に一番やる気が起こるかなって考えると、やっぱり自力で何かを解決できた時。教材も、そこを刺激していかないと。

私の幼少期を思い返してみると、5歳ぐらいまでは与えられてばっかりでした。周りに大人が多かったこともあり、私が求める前に全部揃っていました。だけど、高校生ぐらいになった時に、与えられるよりも、自分で気づいて探しに行く方がやる気のエネルギーが湧くんだということに気づきました。

先に話した通り、私は勉強が嫌いだったということもあり、ずっと勉強してこなかったんですよね。一夜漬けの試験勉強だけ。でも高校三年生の時、音楽をやりたい、自分が行くところはここだって決めたら、「私こんなに勉強ができる人だったのね」と思えるくらい勉強したんです。この1年間が、私の人生の中で一番勉強した時期です。いまだにこれを超える年はないくらい。その時、自分自身がすごくはつらつとしていたのを覚えています。これだけやってダメだったらいいよ。またチャレンジしよう。と思っていて。そういう清々しさのようなものを、その時味わうことができたんです。だから教材を作っていく時には、子どもに興味を持って欲しいし、興味を持てる道筋や問いかけ方を意識しています。

Selfee提供後、子どもたちが実際に利用している様子を実際に見たいと、当時の社長が塾を見てまわったことがありました。様子を見ていると、子どもたちが大きなレーザープリンターの前に立って、自分の名前が書かれたプリントが出てくるのを待っている。それでプリントが出てくると、ほんのり温かいそれを、両手でぎゅっと抱っこして席に行くんですって。その姿に、社長も思わず涙が出たと言ってましたね。だけど、子どもたちには「悪魔くん」と呼ばれていたそうなんです。「自分ができないところばっかり、問題を出してくる。だけど大好き。」その理由を聞いて、子どもたちは教材のことを信じてくれているんだなと、開発チームもとても勇気づけられました。

1991年にSelfeeが提供開始されてから、約35年。今では全国の塾での導入実績は、累計約5000教室となり、子どもたちの学びをサポートしています。後編では、Selfeeが塾の先生との関わりを経てどのように進化したのか、子どもたちの学びの変化などについてお話しします。


行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ

PR TIMES STORY

「教材」をもっと詳しく

「教材」のニュース

「教材」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ