小林聡美、常にフラットな心持ち「見えなくて気がつかないくらいがいい」

2024年2月10日(土)6時0分 マイナビニュース

●とにかく理屈ぬきに楽しい時間、楽しい楽曲で
WOWOWが主催する俳優によるコンサート「NIGHT SPECTACLES」シリーズ。今年4月6日と7日に横浜・赤レンガ倉庫で行われる第2弾に出演する、俳優・小林聡美。今回は小林と親交が深い小泉今日子を演出に迎え、彼女が慣れ親しんだ「昭和歌謡」をテーマに、"チャッピー小林と東京ツタンカーメンズ"として出演する。ここでしか見ることができないスペシャルなステージを繰り広げていくという。デビューして42年、自身初となるコンサートを控えた今の心境を聞いた。
——小林さんにとって人生初のコンサートとのことですが、今の正直な気持ちを聞かせてください。
今の心境は……こうして取材を受けることで「本当にやるんだな」っていう気持ちが改めて胸に刻まれています。
——オファーを受けた一番の理由は?
人前で歌ったことはほとんどありませんが、歌自体は好きだったし、想像がつかないからこそ、あまり気負わずに「じゃあ、やってみようかな」と思えました。
——思い切って飛び込んでみよう、と。
大げさに考えないでやってみよおぅか、みたいな。ちょっとアクセントがおかしいくらいに(笑)。
——では、現時点で言える範囲で構いませんので、どんな内容になるのでしょう。
今回は小泉さんにも演出で参加していただいてますし、ライブなので観客のみなさんとのやりとりっていうのもあるかと思うんですけど、基本的には自分自身が「チャッピー小林と東京ツタンカーメンズ」という架空のバンドの世界観を楽しめるようなステージにできたらいいなと。
——具体的なプランやコンセプトはありますか?
なんですかね……具体的というより、とにかく理屈ぬきに楽しい時間、楽しい楽曲で楽しんでいただけたらという感じでしょうか。ま、だからそのへんはズルい感じで、バンドで……みんなで……やります、みたいな(笑)。
——小林さんは自分の"声"についてどう思っていますか。
自分の声って低くって、高い声の人とかいいなと思ったりするんですけど、でも、それはもう授かったものだし、自分が好きにならないで誰が好きになる? という感じで。欲を言えばいろいろありますけど、この人生はこの声なんだなと思って仲良くしていきたいなと思ってます。
——好きな声や憧れる声があれば教えてください。
落ち着いた知的な感じの声には憧れますね。でも、声って骨格にも関係する気がすごくしていて。だからもう(自分は)こういう顔だからこういう声なんだろうなって((笑)。
——人生において、"歌"は聴く人にいろいろな影響を与える存在だと思うのですが、小林さんは歌の持つ魅力についてどう思いますか?
私は音楽ができる人、歌う人もそうだし演奏する人もそうだし、本当に憧れというか。私はなんとなく俳優になって続けてきましたけど、歌で人を力づけたり、慰めたり……それって最高のことだと思うんですよ。それを少しでも体験できるのであれば、最高の宝物になるなって思いますね。
音楽ってその時の気持ちを変えてくれるし、盛り上げてもくれるし、大昔から人間のそばにあったものだと思うし。そういうものに関われるのはありがたいです。
——今回のコンサートでは、チャッピーさんの歌声が多くの人の心を動かしてくれるということですか。
どうでしょう(笑)。でも「楽しい」という気持ちも大きな意味では感動だとしたら、是非楽しんでもらえる会になればいいなと。
●私がやってきた仕事って正解がない
——普段の小林さんは暮らしの中で音楽とどう関わっているのでしょう。
ずっと流している感じではないです。意外と無音で過ごしたりするのが好きみたいな。朝起きてちょっと体操するときにラジオかけると同じ番組がやってて、「あ、またやってるな」って感じで聴いたりとか。あと、車で移動するときとかそれぐらいですね。(音楽を聴き)ながら(何かをする)、はないです。浴びてる分量は少ないかもしれません。
でも時々、素敵な曲に会ったりすると調べたりすることもありますし、自分のなかでひっかかる人や曲があるとちょっと掘って聴いてみたりします。
——たとえば?
最近では、あいみょんさん。すごい人気だけど、どんな曲歌ってるのかな? と思って聴いてみたことがありますね。
——今回のコンサートのテーマである「昭和歌謡」について、その昔、小林さんが出版された『案じるより団子汁』(1996年)という本のなかにヒントがあると思ったのですが、いかがでしょう。
そうです。その世界です。昔やっていたラジオ番組(『小林聡美の東京100発ガール!』)で自分の好きな曲をかけるコーナーがあって。恥ずかしいですね〜。誰も聴いてないと思って言いたいことばっかり言ってた番組です。
——改めて「昭和歌謡」の良さについて小林さんはどう思ってますか?
私はもう普通に暮らす世界に普通にあったもので、当たり前のように聴いてましたから。昔はみんな同じ曲をお茶の間で聴いていたし、ラジオとか街とかにもたくさん流れていたりして。なんだろう……楽しみ方がもっと単純でしたよね、複雑じゃないというか。流行ってる期間も長かったと思うし、この曲が流行ってたときはこういうことしてたな、とか思い出もあったりして。
——確かに昭和の曲は記憶や情景が思い浮かびやすいかもしれません。
そうですね。景色とか。でも今回の選曲は私が子どものときには聴いてなかった曲もあるので、そのときに培われたテンポとかリズムが好きなのか……昭和歌謡って、民謡とかそういう原始的なものにも通じるような気がして。ちょっとアメリカとか外国の真似してるんだけど民謡のクセが抜けない、みたいな(笑)。そういう和洋折衷で頑張ってる感じがすごく面白いんですよね。
建物とかでもミッドセンチュリーとか、ちょっと日本の建物に似てる部分もあったりして、懐かしさを感じたりするじゃないですか。そういうのにも似てる気がして。
——今よりもっと自然体というか、おおらかな感じはしますね。
きっと当時、曲を作られた方は今までにない新しいものを作ろうと挑戦している部分もあったのかもしれないですけど、今聴くとそれも愛おしい、みたいな(笑)。
——ところで、幸いにも何度か小林さんにお話をお聞きする機会に恵まれてますが、いつも変わらない印象を受けます。歳を重ねても淡々としているというか……
歳を重ねても淡々とって(笑)。「変わる」って、どういう感じなんですかね……
——小林さんを見ていると、常にフラットな心持ちを感じます。
あんまり考えてないからじゃないですか。「変わる」「変わらない」も考えてないですし、そういうこと気にしてないからですかね。老眼だから最近自分の顔もあんまり見えなくなってきて、時々よく見えると「うわっ」とするんですけど(笑)、見えなくて気がつかないくらいが気楽でいいのかなって。あんまり自分を観察しすぎないというか。
——あまり自分と向き合いすぎないことも必要だと。
と思います。多分。自分と向き合って深く考えることも必要だとは思うんですけど、そういうタイプじゃなかったってことですね、私が。なんかもう、なるようにしかならないし、絶望するほど深刻なことはそうそう起きないし、生きていることがすごいことで、大抵のことは大したことないと思うことにしています。
自分が気にするほどそんなに人は自分を気にしていないんですから。
——SNSの「いいね」なんてまさにその象徴ですよね。
確かに気にはなりますけど、「いいね」とかやる人も気を遣ってやってくれてるかもしれないと思うと(笑)、別にそんなに気にしなくていいか、なんて思っちゃったり。
——とはいえ、自分の評価を気にしたり、ついつい「答え」を求めたりしてしまいます。
仕事で「結果」を出さないといけない、というのは分かりますけど、私がやってきた仕事って正解がない仕事ですし、見る人によって「良かった」「悪かった」というのも分かれるし、そういうことを気にしているのは精神衛生上よくないですし。真面目な人ほど、ある程度、無責任でいないと。そう考えると植木(等)さんの『無責任男』シリーズ、本当に名作ですよね……私のさっきの本って何年前のものでしたっけ?
——1996年です。
30年近く前ですよね。だから結局、変わらないんですよ(笑)。

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