小林聡美「養老保険を解約してピアノを購入、新しいことにも挑戦。ゆっくりと丁寧な暮らし…だけではつまらない」

2024年4月24日(水)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:文藝春秋 以下すべて)

俳優として活躍するかたわら、エッセイストとして多くの読者の心をとらえている小林聡美さん。最新エッセイ集『茶柱の立つところ』では、50代半ばを過ぎた小林さんが、日々の生活の中で見つけた「茶柱」のようなささやかな発見や喜びをユーモラスな視点で綴っている。いくつになっても、日常を面白がろうとする小林さんの姿勢にクスッっと笑ったり、共感したり。「始めるなら、今がデッドライン!」と、新しいことにも挑戦していきたいと語る胸の内を伺った(構成◎内山靖子)

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300字書いて、2時間休む


20代で初めてのエッセイ集を出版してから、今回で15冊目になりました。

とくにテーマを決めずにぼんやりと書き始めたことでも、「ああ、私はこういうことを考えていたんだ」と、書き上げてから自分でも気がつくことがあります。

文章を書くのはすごく大変です(笑)。最近はとくに、集中力や体力が続かない。300字くらい書いただけで「なしとげた!」みたいな感じになって2時間くらい休んだり。(笑)

書くのに時間がかかるので、他の仕事と重なるときも、「この日は書く!」とカレンダーに印をつけて、原稿を書く日を確保します。

養老保険を解約し、ピアノに挑戦


今回のエッセイは、猫1匹と暮らす私の普段の日常生活を綴ったもので、驚くような事件は何も起こりません。その中で一番大きな出来事と言えば、ピアノを習い始めたことでしょうか。かねてから「楽器が弾ける人生は楽しいに違いない」と憧れていました。

ウクレレやクラリネットを習ったこともありますが、どれもなかなか続かない。でも、ピアノを買ってしまえば、もうやるしかない状況になるに違いない、と。家の中にピアノがあれば嫌でも目に入る上に、高額な買い物ですから放っておくわけにはいかない。(笑)

そこで、思い切ってピアノを買ったんです。満期になった養老保険を解約して(笑)。それに、ちゃんと指先や体が思い通りに動くのはあと何年?と考えたら、「始めるなら、今がデッドライン!」と、飛び込むことに決めました。

近所のお教室に通い始めてかれこれ4年めになります。次のレッスンまでにぜんぜん練習できずに、ヘタクソなピアノを先生に聴いていただくこともしょっちゅうです。

でも、ピアノを始めてから、クラシックのコンサートに行ったり、音楽の授業のときしか触れなかった作曲家の伝記を読んだりして、また別の世界が広がったなと感じています。


「『この日は書く!』とカレンダーに印をつけて、原稿を書く日を確保します。」

心が弱ったときは、美味しいご飯を


仕事で嫌なことがあったり、天気が悪い日が続いたりすると、精神的にもついネガティブになってしまいます。

そんなときに、私が大切にしているのはきちんとした美味しいご飯を食べること。

以前、「疲れているから、いいや」と夕飯を食べずに済ませてしまったことがあったんです。

そうしたら、気持ちまで落ち込んできて心身のエネルギーがどんどん失せていくのがわかりました。これは無理をしてでも食べなきゃいけないと思って、翌日、近所にあるオーガニックの定食屋さんに行ってもりもりいただきました。そこのご飯が本当に体に沁みわたって。気持ちまで元気になりました。

やっぱり日々の食事が大切なのだとあらためて感じました。忙しくてもいつでも食べられるように野菜たっぷりのスープを作って冷凍しておくとか、お惣菜を買ってきたときも、冷蔵庫にある野菜をプラスして食べるようにしています。

とはいえ、あまりにも健康的な食事が続くとつまらなくなって、食後にポテトチップスをバリバリ食べることも(笑)。そこらへんはあまりストイックにならず、適度に不良な自分も許すようにしています。

健康体操で健康をキープ


この先、人生を楽しく過ごしていくためには、やっぱり健康でいることが一番だと思います。体が健康なら気持ちも元気でいられるし、気持ちが元気だと新しいことにも前向きに挑戦できますよね。

数年前から、近所の健康体操のクラスに月に2回ほど通っています。大正時代に考案された、ラジオ体操より前の国民体操だったと言われているものです。たまたまうちの近所に支部があったので、ラッキーでした。

ちょっと面白いのは、「1,2,3,4」と全員で号令をかけながら行うんです。かなり激しい動作もありますし、2人組みでお互いのツボを押し合ったり、体の筋を伸ばしたりもします。

メンバーは10人前後で、私はこの中で若手です(笑)。先輩たちが、毎回、明るく元気に体操をしているのを見ていると、こちらも自然と元気になってきます。

体操を終えた後に、みなさんとお茶をするのも楽しいです。

「ほのぼの」と「緊張」のバランスをとりながら


ひとり暮らしは仕事が多いです。特に力仕事は大変です。古新聞をひとつにまとめたり、段ボールをつぶして始末したり。

「これ、80歳になってもひとりでできるのかな?」って不安になることも。

でも、仕事が多いいっぽうで、自由なのがいいところ。いざとなれば、積極的にまわりの人に助けてもらったり、いろいろな便利なグッズも活用したりしてなんとかやっていこうと思います。(笑)

この先、できないことが少しずつ増えていくかもしれません。でも、だからといって「ゆっくりと丁寧な暮らし」だけではつまらない。その年齢なりに新しいことにも挑戦していきたいです。

「ほのぼの」だけに偏らず、心身を緊張させてくれる刺激とバランスをとりながら、年を重ねていけたらいいですね。

婦人公論.jp

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