北大路欣也が藤岡弘、を通して感じる真威人との仲間意識 “二世”の捉え方に感心「その思いを大切に」
2025年3月5日(水)10時0分 マイナビニュース
●「現場で北大路欣也さんを見て学びなさい」
北大路欣也が主演する、藤沢周平原作のオリジナル時代劇シリーズの最新作『三屋清左衛門残日録 春を待つこころ』が、時代劇専門チャンネルで放送される(8日19:00〜ほか)。
東北の小藩で前藩主用人の職を退き、隠居した三屋清左衛門(北大路)の第二の人生を、身の回りに起こる様々な出来事とともに描く同シリーズ。第8作となる今回は、清左衛門と青年剣士・信次郎(藤岡真威人)や、2人が巻き込まれる事件の鍵を握る巫女・照日(大友花恋)との交流を軸に物語が展開される。
このほど、北大路、藤岡、大友が取材に応じ、北大路が藤岡弘、とともに感じるその息子・真威人との仲間意識を明かしたほか、そんな2人が“二世”と見られることへの思いを語った——。
○幸せあふれる「本当に素晴らしい家族」
——藤岡さんは最初に北大路さんにご挨拶に行った時に、どんなお気持ちでしたか?
藤岡:もうすごく緊張しました(笑)。そうしたらフランクに話しかけてくださったので、またさらに恐縮しちゃって。それくらい優しく迎え入れてくださったのを覚えています。
北大路:私も彼ぐらいの年齢で大先輩にご挨拶に行った時は、同じような気持ちで緊張しましたよ。そこで柔らかい言葉をかけてもらうとホッとするからね。そう思ってもらって良かった。
藤岡:言い方が悪いかもしれませんが、「いい人で良かったー!」って思っちゃいました(笑)。すみません! 本当に北大路さんの懐の深さと優しさに満ちたものを感じたんです。
北大路:お父さん(藤岡弘、)と一緒にやっているから、実は仲間のような感じがしていたんです。やはりお父さんと同じ世界で育っているなとすごく感じましたね。(撮影現場に)お父さんが家族と一緒にいらっしゃって、何十年ぶりにお会いしたんですよ。本当に素晴らしい家族で幸せですね。
大友:その映像を見させてもらったんですけど、本当に画面いっぱいに幸せがありました(笑)
北大路:懐かしかったなあ。お父さんと抱き合いましたよ(笑)
藤岡:「こんな画が実現するんだ!」と思って、感動しちゃいました。
北大路:くれぐれもよろしく言っといてね。差し入れのコーヒーがおいしかったって(笑)
○勝新太郎さんに指導された斬られ方
——藤岡さんは今回、青年剣士の役ということで劇中では剣術を披露されていますね。
藤岡:別の時代劇(『君とゆきて咲く〜新選組青春録〜』)で沖田総司をやらせていただいたのですが、今回の本格的な時代劇とは少し動きが違うので、この役作りは少し苦労しました。そこで、父にアドバイスを求めたんです。
——どんなアドバイスをくれましたか?
藤岡:「僕なんかに聞かずに、現場で北大路欣也さんを見て、その場で学びなさい」と言われました。北大路さんが道場で門下生と打ち合うシーンがあったので、「ここだ!」と思って見ていたんです。
北大路:本当に!?
藤岡:そしたら、言葉にするのが難しいのですが、軽く打ち込んでいるのに、ちゃんと身が入ってる感じがしたんです。そうやっていろんなことを学ばせていただいて、自分の殺陣に取り入れてみたりしました。
北大路:沖田総司と言えば、私も昔やったことがあるのを、今思い出しました(映画『新選組』1969年)。それとお父さんとは『徳川剣豪伝 それからの武蔵』(96年、テレビ東京)で私が(宮本)武蔵、お父さんが柳生十兵衛で向き合ってやったことがあるんですよ。彼(藤岡真威人)を見ると、やっぱりお父さんを思い出すので、ある意味で私も緊張感を持っていたかもしれない。でも、共に汗をかいた仲間なので、そのつながりが今こうして回ってきているんだなと思いますね。
——その仲間が「北大路欣也さんを見なさい」と言っていたというのを聞いて、いかがですか?
北大路:ドキッとしちゃいますね(笑)
藤岡:でも、清左衛門としてお話ししたり、僕と接しているときは本当に柔らかくて包容力にあふれた感じなんですけど、刀を手にすると目つき、波動、放たれるオーラがガラッと変わるんです。それはどうやっているんですか?
北大路:あなたのお父さんも含め、いろんな方々とご一緒して、殺陣師の方たちに基礎を教わってやってきたことが、自然と体現できているのかなと思いますね。だからあなたもこれからいろんな殺陣師の方と会うし、いろんな方と勝負するだろうし、斬りたくなくても斬らなきゃいけないし、斬られたくなくても斬られる時もあります。
『座頭市』で勝(新太郎)さんに斬られて「うー」って言ったら、勝さんに「何で“うー”って言ったんだ! 俺は名人だぞ。いつ刀が入ったか分からないんだよ。だから斬られたところを見てから俺の顔を見て“痛くもかゆくもねぇや”って言って倒れて死んでけ」と言われました。私はそうやっていろんな経験をしたんです。
●二世ゆえの葛藤感じず「こういう父を持ったことに感謝」
——北大路さんと藤岡さんは、大スターを父親に持たれているということで境遇が同じですよね。
北大路:でも、よく考えてみると、世の中に生きている人はみんな二世なんですよ。たまたま俳優という職業であるがゆえに言われるんだけど、かつてはそれで悩んだことがあります。小さい頃はメンコに親父が出てきて、それで負けると「お前の親父弱いな!」って言われたのが悔しくて、油を塗って重くしたりしてね(笑)。でも、そうやって揶揄してきた子だってお父さんがいるじゃないかという思いが、いつからか生まれてきて、素直に二世としてそれぞれのご家族があるんだと思えるようになったんですよ。あなただってそうでしょ?
藤岡:二世がゆえの葛藤というのはよく聞きますが、僕はあまりそれで苦しんだりしていないんです。最近は、父と同じヒーローものの作品をやらせてもらうことが多いのですが、むしろ自分にとってプラスに捉えていますね。
北大路:えらいなあ。それはすごい捉え方だよ。
藤岡:現場の皆さんとのご縁もそうですし、今置かれている状況がありがたいなと思って、こういう父を持ったことに感謝していますね。
北大路:自分の生まれた境遇に対して素直に感謝できるというのは、本当にすごいと思う。大切にその思いを持って、これからいろんなことに挑戦してほしいね。私が20歳くらいの時はまだまだそこまでの心境にいっていなかったので、今聞いてちょっとびっくりしましたよ。
○京都での撮影の日々が宝物に
——今回の作品のラストに、清左衛門が「得難い宝をもらった」と言うセリフがありますが、皆さんが今回の撮影で得た宝は何でしょうか?
藤岡:僕はこの作品に出会えたことですね。本当に、皆さんいい方なんです!(山下智彦)監督もすごい方で、衣装合わせの時に緊迫感と重圧があったんですけど、いざ話してみたら「気楽でいいんだよ」と言っていただいて、ガチゴチに固まっていた体がぐわっとほぐれたんです。その後に北大路さんにご挨拶に行かせてもらって、さらにほぐれました。そういった皆さんとの出会いもそうですし、撮影での時間とこの作品の全部が、僕にとって代えがたい宝物です。
大友:私は、京都の撮影所のスタッフの皆さん、大先輩の皆さんと一つの作品を作れたことだと思います。本番前に段取りがなかったり、スケジュール表の書き方が違ったり、スタジオの中で外のロケのシーンを撮ったり、現代劇と全然雰囲気が違うんです。その中で、各スタッフの皆さんが、言われたからやるのではなくて、どうしたらこのシーンのこのカットが生きてくるのかというのをディスカッションしながら撮影していく様子を、中に入って体感できたのは、すごく貴重な経験だったと思います。こうやってより良い作品ができるということを自分の中に留めておいて、私もこれからの皆さんに伝えていけるようにもっと成長したいなと思います。
北大路:いやもう、2人の言葉を聞いて感動してますよ。私にとっても、本当にスタッフの皆さん、共演者の皆さんに支えられて、第8作までやってきたことで、2人との出会いが生まれた。そんな2人からこんな言葉を聞けるとは想像していなかったので、すごいなあと思ってね。こうやって一つの仕事を共に無事撮り上げることができたことに非常に感謝するし、私にとっても大きな宝だと思います。