水ダウでも話題沸騰の“ループ”展開。伊勢谷友介出演『ペナルティループ』を含む最新ループもの映画

2024年3月21日(木)20時15分 All About

最新「日本のループもの映画」を6作品紹介しましょう。「ほぼ同じ内容を放送」したことで話題騒然の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)を思わせるところもあるかもしれませんよ(※サムネイル画像出典:(C) 2023『ペナルティループ』FILM PARTNERS 配給:キノフィルムズ)

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2024年3月20日の『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で、まさかの「先週とほぼ同じ内容」が放送されたことにSNSは話題騒然となりました。

テレビで「先週と同じ!?」という戸惑いは過去にもあった

しかも、その『水曜日のダウンタウン』の放送で最後に明かされたのは「理由は今年度の番組予算が底をついたため」「7カ所のわずかな違いを全て正解した先着50人へのプレゼントがある間違い探し企画」であること。ライトノベル原作のテレビアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』における、2009年の「ほぼ同じ内容を8回放送する」エピソード『エンドレスエイト』を連想する人も続出していました。
これらはテレビ番組で同じ時間を繰り返す「(タイム)ループ」を視聴者に擬似体験させる一種の実験ともいえるでしょう。そして、映画やアニメではループものは人気の高いジャンルであり、同じ時間を繰り返すことからの「間違い探しができる」「いい意味での戸惑いがある」以外にも、魅力や面白さがたくさんあります。
ここでは、2020年以降に公開された、日本のループもの映画に絞って6作品を紹介しましょう。ひとくちにループものといっても、バラエティ豊かな特徴があることも分かるはずです。

1:『ペナルティループ』(2024年3月22日より劇場公開)

殺された恋人の復讐(ふくしゅう)のため殺人を犯すも、なぜか時間が巻き戻るという、「仇討ち」ものとループものを組み合わせた内容です。序盤から仕込まれた不穏な伏線が次々に回収され、「そういうことか……」と納得しつつも、意外な展開に驚ける過程がキモの作品なので、ネタバレを踏まないまま見たほうがいいでしょう。

やさぐれていながらもどこか純粋さも感じさせる主演の若葉竜也、ミステリアスな恋人役の山下リオも魅力的ですが、さらなる注目は約3年ぶりの映画出演復帰となる伊勢谷友介。今回の「殺され続ける男」の詳細な役柄は秘密にしておきますが、「何かを諦めているような」厭世(えんせい)的な印象は、不祥事で俳優としての活動ができずにいた現実の伊勢谷友介の姿にどこか重なっていて、単なる悪人というだけではない奥行きを持たせています。

低予算で撮られたことがうかがえる公開規模も小さめな作品ですが、意図的に無機質にした画は安っぽさを感じさせませんし、何気なく映り込んでいるものにも意味が込められています。例えば、主人公の冒頭時の仕事である建築模型、あるいはその後の職場である水耕栽培工場は、荒木伸二監督いわく「人間がこれまで自然界で起きてきたことを、自分たちで作った箱庭の中に押し込めて、空間軸や、時間軸をもたせて達観的にコントロールした気になるという事柄」だそうです。

荒木監督の前作『人数の町』(2020年)に続き、ダウナーな雰囲気と深読み可能な味わいは、ハマればたまらない魅力になるはず。「ループものでまだこんな見た事がないパターンがあったのか」と気付かされましたし、「シリアスに見せかけてブラックユーモアもある」映画が好きな人には大推薦します。PG12指定らしく、刃物での殺傷描写がかなり刺激的なのでご注意を。

2:『リバー、流れないでよ』(2023年)

何よりの特徴は、タイムループの間隔がたったの「2分間」かつ「リアルタイム進行」だということ。その2分間でできることはごく限られていて、旅館にいる個性豊かなキャラクターたちは「お酒は“熱燗”にできず“ぬる燗”のまま提供するしかない」「雑炊はいくら食べてもなくならないので飽きる」などの事態に悩まされ続けます。その制約の中で、知恵と体力を駆使してループからの脱出を目指す様はエンターテインメント性抜群でした。
序盤は短すぎるループに対してボケとツッコミの小気味良さにクスクス笑えて、時にはかなりダークかつホラー的な展開に戦慄できるなど、86分という短めの上映時間に面白さが詰まっています。本記事に挙げたラインアップの中でも、最も万人におすすめできる内容です。同じく山口淳太監督×上田誠脚本コンビの『ドロステのはてで僕ら』(2020年)も斬新なアイデアを見事に生かした傑作なので、合わせておすすめしておきます。

3:『神回』(2023年)

こちらで繰り返されるのは「文化祭の打ち合わせの5分間」。初めこそ青春の甘酸っぱい一時を思わせる時間に見えますし、ループものの定番ともいえる、繰り返しの中で試行錯誤をして、なんとか脱出の方法を見つけようとする「謎解き」的な面白さもふんだんにあるのですが……中盤からそうした印象は、いい意味で思いっきり覆されるでしょう。
何しろ、青春の「こじらせ」、はたまた思春期に多くの人が持ち得る「負の感情」、もっと言えば「気持ち悪くてドス黒い感情」が徐々に表出していく内容なのですから。後半のネタバレ厳禁の展開と画は、2度と忘れないほどのインパクトがあります。レーティングはG(全年齢)指定ですが、はっきりと性暴力に関する描写があるのでご注意を。

4:『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(2022年)

前述した『リバー、流れないでよ』は2分間、『神回』は5分間と短い間隔でしたが、こちらのループの間隔はなんと1週間! ループからの脱出の条件はサブタイトル通り「上司に気づかせないと終わらない」という簡単そうにも思えるものなのですが、何しろこの上司は鈍感を超えてどうしようもないほどの無能っぷりを見せつけるし、それに至るまでにも社員たちはいろいろと超めんどくさいミッションを強いられるのです。
社会人として生きていれば1度は思う「毎週同じことの繰り返し」をループものとして描く、いわゆる「社畜根性」をブラックコメディー的に示した展開もあるものの、それ以上に仕事に前向きになれるメッセージを備えた直球の「お仕事映画」にもなっています。特に、転職を検討していた主人公の姿から、気づかされることは間違いなくあるはずです。

5:『カラダ探し』(2022年)

同名小説の映画化作品で、6人の高校生が夜の学校で“カラダ”を集めるミッションに強制参加させられ、無残に殺される日を何度も繰り返すことになる……という設定だけ聞くと悲惨に思えますが、初めこそ接点がなかった彼ら彼女らが、次第に信頼関係を得て共通の目的のために一蓮托生になり、時には思いっきり遊びに行ったりするなど、ホラーと並行して「この時しかない」キラキラした青春模様を描くことも大きな魅力になっていました。
もちろん、記憶を共有している“チーム”として、共に前回の失敗を生かして道を探し、知恵と勇気を振り絞り危機に立ち向かう、ループものかつエンターテインメント作品として真っ当にアツい要素があります。正直、展開はやや大味で、キラキラな青春ものに切り替わるタイミングが唐突だったりする難点はあるものの、PG12指定ギリギリのショッキングな描写も攻めていて、テンポもいいので、ホラーに興味が出てきた若者には大推薦できます。

6:『映画 プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』(2020年)

女児向け大人気アニメの劇場版です。ループものは得てして「無限地獄」のように精神的につらい時間を描いたりもしますが、こちらはやはり子どもが見る映画なので比較的ライトな作風。71分と上映時間は短めで、登場人物それぞれがループに気づいてから早めに前向きな行動をしていますし、ループの中で人助けをする様から「プリキュアがヒーローでもあること」もしっかり描かれています。
それでいて意外な事実が明かされる驚き、とある「記憶」にまつわる誠実なメッセージ性、戦闘シーンの迫力とキレ、3つのチームとの交流と共闘が積み重なっていくファンサービスなどは、大人も存分に楽しめるでしょう。劇場公開時はコロナ禍で延期を重ねた上に興行的にもやや苦戦したやや不遇な作品でしたが、「明日への希望」にあふれた内容は(当初の公開予定のタイミングでもあった)新しい生活が始まる春の今にピッタリですよ。

ループものの名作はほかにも!

ここからは、ループものの名作の数々を、簡潔かつ一挙に紹介していきましょう。
・『隔たる世界の2人』(配信開始2021年)……Netflix配信の短編映画で、実際に起こった「ジョージ・フロイド氏暴行死事件」を元にしており、白人警官に殺される恐怖が何度も繰り返されます。
・『コンティニュー』(2021年)……ケレン味のあるバイオレンスアクションが展開するエンタメ性抜群の内容で、ブラックな笑いと意外な感動も待ち受けています。
・『パーム・スプリングス』(2021年)……妹の結婚式でタイムループに巻き込まれた女性が、半ばヤケになりつつ「同じ世界」にいるやさぐれ男と恋をするラブコメディーです。
・『ハッピー・デス・デイ』2部作(2019年)……殺人鬼ものとループものを組み合わせた設定で日本でも一部で強い支持を得ました。2作目『2U』ではさらなる予想の斜め上の展開も?
・『ネイキッド』(配信開始2017年)……Netflix配信の長編映画で、ループのスタート位置は「結婚式直前に裸のままエレベーター内にいる」いい意味で最悪なものです。
・『ビフォア・アイ・フォール』(配信開始2017年)……Netflix配信の長編映画で、はぐれ者の女の子をいじめている主人公の女子高生が、自身の行いを悔い改める過程が描かれた青春劇です。
・『三尺魂』(2018年)……ネットで知り合った4人の男女が花火玉を爆発させて集団自殺をしようとするも時間が巻き戻る、ネガティブな状況に反してコミカルな場面も多い内容です。
・『パラドクス』(2016年)……いい意味で気分が悪くなる生き地獄のようなシチュエーションと「世界の真実」が描かれます。漫画『チェンソーマン』(集英社)の「永遠の悪魔編」の元ネタにもなりました。
・『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』(2015年)……1980年代のB級ホラー映画の中に閉じ込められた! というあらすじのホラーコメディーで、「ホラー映画あるある」をイジったギャグも盛りだくさんでした。
・『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014年)……日本の小説を原作としたハリウッド大作。トム・クルーズがループを重ねて翻弄(ほんろう)されつつも強くなっていく過程はかなりブラックコメディー的です。
・『ミッション: 8ミニッツ』(2011年)……見知らぬ通勤列車で目を覚まし、8分後に大爆発を起こして乗客が全員死亡するシチュエーションを何度も繰り返します。
・『トライアングル』(2011年)……ヨットセーリング中に嵐に襲われた男女が大型客船に命からがら乗り込むとまさかの事態が……画は刺激的で、状況はループものの中でもかなり過酷です。
・『恋はデジャ・ブ』(1993年)……自尊心が強く底意地も悪い天気予報官がループを繰り返す中で絶望的な心境に陥るも、やがて希望も見つけていく、ループもの映画の代名詞的な名作です。
・『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984年)……学園祭の前日を繰り返し、やがて世界が崩壊する様を描く、押井守監督の代表作。2024年2月よりAmazonプライムビデオやU-NEXTなどで見放題配信がスタートしました。
さらに、近年の漫画作品では『サイケまたしても』(小学館)、『サマータイムレンダ』 (集英社)、『運命の巻戻士』(小学館)も人気を博しています。

ループものでよく思い知らされるのは「積み重ね」

こうしたループものでよく思い知らされるのは「積み重ね」の大切さ。同じ時間を繰り返すと、(特に前のループの記憶を共有していない他者との)積み重ねはリセットされてしまうため、その悲哀が笑えるコメディーにも、はたまた絶望につながる心理サスペンスにも昇華されているのです。
それらをもって、ループものは現実における明日に向けて成長していく喜びを逆説的に得られることが多いのですが、殺人というこの世で最も許されざる行為を繰り返す『ペナルティループ』の劇中で明かされる「ループの理由」は、それとはいい意味で正反対かつ表裏一体なものだったりします。そこからも、ぜひ反面教師的な学びを得てみてほしいです。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)

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