生きがいだった歴史サークルを、空気の読めない新メンバーがぶち壊した。無視をしても注意をしても付きまとわれて

2024年3月22日(金)12時30分 婦人公論.jp


(イラスト:すぎやままり)

内閣府による男女60歳以上を対象に行った「令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果」によると、過去1年間に参加した社会活動について、「健康・スポーツ(体操、歩こう会、ゲートボー ル等)」が26.5%と、参加した活動の中では最も高かった。次いで「趣味(俳句、詩吟、陶芸等)」が14.5%という結果に。一方で「活動または参加したものはない」の回答は、41.7%。新しい友人との出会いや、生活に充実感が得られることなど、社会参加活動のメリットは多い。一方で、サークルに所属したものの、人間関係のトラブルに巻き込まれてしまうことも。中西八重さん(仮名・福岡県・無職・72歳)は、趣味で入った歴史サークルを楽しんでいたのに、新しく入ったメンバーのせいで、散々なめにあったそうで——。(イラスト=すぎやままり)

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気に入られたのが運の尽き


40歳の時、派遣スタッフとして会社勤めをするだけでは物足りなくなり、老後の楽しみを見つけたいと思い立ちました。とはいえお金のかかる趣味は続かない。新聞の募集欄で気軽に集まれるサークルを探していると、歴史好きの私にぴったりなサークルの案内を発見。お試しで参加できる講演会があったので、参加しました。

歴史の知識には自信があったのに、講師の方のお話を聞いていると、初めて知ることばかり。大満足の内容に、講演後すぐ、正式な会員になることを決めました。

サークルの活動頻度は月1回。有名な講師の先生を招いて行う講演会と、史跡巡りツアーが交互に開催されるというものです。ほかの会員のみなさんも和気藹々としていて、とても居心地のいい会でした。

ツアーではたくさん歩き、おいしいランチをいただく。仕事と並んでこの会に生きがいを覚えていたのです。

ところが入会して3年が経った頃、その和やかだったサークルの雰囲気が一変。すでに会員だった友人に誘われる形で入会してきた、Aさんが原因です。

初めはツアーのバスの車内でも、Aさんとその友人は隣同士に座り話に花を咲かせていましたが、ある時仲違いをしたのか、互いに会っても知らん顔。

Aさんはたまたま空いていた私の隣の席に座ってきて、車中で歴史の説明をしている講師の話を聞かず、いろいろと話しかけてくるのです。歴史の話を聞きたい私はイライラ。

空気が読めないAさんに…


リアクションの薄い私を懐柔しようとしたのか、バッグから高級そうなお菓子を取り出し、「昨日デパートで、あなたと車中でいただこうと思ってわざわざ買ってきたの」と勧めてきます。厚意はありがたいものの、空気の読めない困った人だなという第一印象でした。

Aさんはいつも有名ブランドの洋服やバッグを身に着けています。ある日のツアーで雑談中、私と仲良しのBさんがAさんに、「素敵なブローチね、お洋服にとても似合っているわ」と褒めると、Aさんは不機嫌な表情で黙って席を立ち、バスに戻ってしまったのです。

後で私が「さっきはどうしたんですか?」と尋ねると、「私、Bさんが嫌いよ。表面では褒めていても内心では趣味が悪いと思っているに違いない」と言うのです。

私はびっくりしてしまいました。Bさんはさっぱりとした裏表のない人。しかしそれを伝えてもAさんは聞く耳を持たず、彼女の天の鬼な性格に不信感が募りました。

また別の日、ペットの話題になった際、「妹は私と違って犬や猫が大好き。わざわざ公園で捨て猫を拾って室内で飼っているのよ。ばかみたい」と発言。

攻撃的な物言いに動物好きな私はムッとして、「犬や猫はかわいいじゃないですか」とやんわり反論すると、Aさんは黙り込み、しばし不穏な沈黙が流れることになったのです。

年末恒例のパーティと総会でも


帰りのバスでこの件をすっかり忘れていた私は、車窓から外でくつろぐ猫を見かけ、思わず「かわいい猫がいる」とつぶやいてしまいました。するとAさんは不機嫌な表情に戻り、「猫の話はしないで」と一言。下車後、私はAさんと離れたいと思い、別の男性会員お二人と目的地までご一緒することにしました。

大の動物好きの彼らと盛り上がっていると、「私は動物が嫌いなんだからそんな話はやめてちょうだい!」と大きな声が。なんといつの間にか後ろにいたAさんが、私たちの会話を聞いていたのです。男性二人は慌てて逃げてしまいました。

年末恒例のホテルで行うサークルのパーティと総会でも事件が勃発。到着した人からテーブルを囲み、みんなで楽しく食べていたところ、15分ほど遅れてきたAさんがやってきて、「八重さんの隣に座りたい!」と駄々をこね始めたのです。

「ほかにも空席があるのだから、隣の人に悪いわ」と私が言っても、お構いなしで「隣の席を空けてほしいの」と譲りません。隣席の人は耐えかねて、とうとうほかのテーブルに移動。Aさんは平然と私の隣に腰を下ろし、ジュースを飲み始めました。

あまりの傍若無人ぶりに腹が立ち、「公の場では少し礼儀をわきまえるべきでは」と言うと、Aさんの顔色がサッと変わり、不機嫌モードに突入。私も我慢の限界で、今回ばかりは無視を決め込みました。

総会が始まるとAさんは機嫌が直ったのか私に話しかけ始めましたが、後方の人から「おしゃべりをやめてください」と注意を受け、私まで恥をかく始末。

嫌いな人は徹底的に攻撃


Aさんのわがままな行動はとどまるところを知らず、サークルの1泊2日の九州旅行でもトラブルを起こしました。宿は4人部屋。彼女はいち早く「八重さんと同じ部屋にしてほしい」と幹事に頼み込んでいたらしく、やむなく一緒の部屋になってしまいました。

部屋に到着すると早々にCさんが、「夜中にトイレに起きてしまうから、入り口に一番近い場所で寝ていいですか?」と尋ねてきたので、私ともう一人は快諾。ところがAさんは、「私が入り口に一番近い場所で休みます」と、特に理由を述べるでもなく勝手に宣言したのです。また逆上されると面倒だ、とみんな何も言わず、気まずいまま夜の宴会場へ向かいました。

Cさんは夫婦で参加していたのですが、旦那さんはかなり飲んでいて、Cさんは彼が飲み過ぎないように気にかけている様子です。するとそれを見たAさんがアルコールを注文し、へべれけのCさんの夫につぎ始めたではありませんか。

明らかにCさんに対する嫌がらせです。Cさんはあっけにとられ、言葉もなくたたずむばかり。あまりの気まずさに、その日は誰も何の会話もせず床につきました。

翌日Aさんは私に、「せっかくお酒を差し入れたのにお礼もないなんて、礼儀知らずだと思わない?」と同意を求めてきましたが、私は「度を超えたお酒は本人にも周囲にも迷惑ですよ。特に身内はいろいろと心配ですからね」とキツめに答えました。Aさんはまた不快そうな表情で立ち去っていくのでした。

その後10年ほどで、歴史サークルは運営幹部の後継者不足により閉会。みんなから嫌われても懲りないAさんは、結局会が解散するまで私に付きまとってきていました。

会がなくなったのはさみしいですが、当時親しかった友人とは今も時々電話で近況報告をする仲ですし、なによりAさんと離れられてほっとしています。

交流の場を見つけるために


内閣府による「令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果」によると、「社会活動に参加してよかったと思うこと」について、「生活に充実感ができた」「新しい友人を得ることができた」という回答が多くみられます。

健康・体力面での自信のなさや人と付き合うのがおっくうという理由で、社会活動への参加を希望しない人もいますが、その中でも「友人、仲間のすすめ」や「個人の意思」をきっかけに参加を始める方もいます。

少しでも何かに興味を持ったり、誘われたりし際には、無理のない範囲で行動に移してみるといいかもしれません。

厚生労働省が推進している「通いの場」も、手軽に参加できる交流の場の一つ。地域の住民同士が気軽に集い、ふれあいを通して「生きがいづくり」や「仲間づくり」の輪を広げる場所として、全国に広がっています。公民館や公園だけでなく、学校や店舗の空きスペースなどさまざまな場所にあるので、気になった方はお近くの地域包括支援センターや市町村の介護予防窓口でご相談を。

Webサイト「通いの場」では、地域ごとのおすすめ情報やご当地体操マップ、食生活や口腔ケアについての記事を読むことができます。
https://kayoinoba.mhlw.go.jp/

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