樋口恵子 介護保険を利用したら情報収集の必要性に気づかされ…「老い」をできるだけ豊かに生きるための<人生2度目の義務教育>のススメ

2024年3月26日(火)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

厚生労働省が公表している「令和4年簡易生命表」によると日本の平均寿命は、男性が約81歳、女性は約87歳だそう。それもあって91歳で評論家として活躍している樋口恵子さんは、「これからはおばあさんだらけの時代になる!」と宣言中。その樋口さん「介護保険を利用した際に、情報収集の必要性にあらためて気づかされた」そうで——。

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要介護認定を受けて


私、このたび要介護認定を受けました。

結果は「要支援1」。寝起きするベッドの周辺2カ所と玄関の出入り口、わが家の要所というべき通路に「手すり」が設置されました(2023年7月設置)。このところ、「ぶらぶら病い」という日々を過ごしておりますが、おかげさまでようやく「気力回復」という気分になりました。

だらしなくて申し訳ありませんが、これが「91歳」女性の老いの「現実」の一面です。

気力回復と同調するように、私の活動能力とこれまでの住宅のあり様が、私の身に合わなくなっていたことを感じました。あるときは同衾(どうきん)している猫に遠慮するあまり、私が猫のかわりに床に落っこちたり。

今回はベッドサイド、玄関、門扉からのアクセスなどに安定した手すりをつけること。とくに玄関、ベッド回りなど、体位を支える支柱と手すりを、合計(戸外を含めて)5本設置しました。

あらためて気づいた


介護保険を利用してみて、情報収集が必要なことにあらためて気づきました。

私たち高齢者は、日本の国の制度に従って医療はじめ福祉の利用範囲などが変わります。

たとえば、後期高齢者医療制度によって、私のように75歳以上の高齢者は、保険料は安く、医療費も定額ですむ料金体系になっています。

私は77歳のとき、生まれて初めてという大病(大動脈瘤感染症)を病み、運よく名医の揃った病院へ運び込まれ、大手術の結果、生命を取り止めました。

「高齢社会をよくする女性の会」など、高齢女性の視点からの政策提言は、それまでの20年余の会の活動があってこそできたことです。

わが家の電話帳に「地域包括支援センター」を


今、介護保険のサービスは、基礎自治体の地域ごとに「地域包括支援センター」があって、多くのサービスが地区単位で提供されています。

たとえば私が住む東京都杉並区は、「杉並区」が基礎単位。人口約56万人。介護保険法に基づいた地域包括支援センターは全区合わせると20カ所あります。今、日本中に地域包括支援センターは5404カ所(2022年4月現在。厚生労働省)。介護サービスを高齢者に提供する拠点になっています。

介護保険を必要とする高齢者が、地域包括支援センターに利用を申し込むと、自治体から調査に来てくれます。申し込みは、本人や家族が出かけてもいいし、まずは電話でもいいでしょう。

65歳を過ぎたら、わが家の電話帳に「地域包括支援センター」と基礎自治体(区役所など)の情報部門の電話番号をお忘れなく記帳してください。

わが家の場合


わが家の場合は線路を越えてすぐのところ、徒歩5分にある特別養護老人ホームの中に地域包括支援センターがあり、申し込んで1カ月ほどで自治体の認定員が面談に来てくれました。

結果が出たのはそれから1カ月後、「要支援1」という認定です。

屋内外、私が自分の意思で活動できるよう合計5本の支柱、手すりが設置されました。使い勝手は「快適」のひと言です。

介護保険制度で要支援1というのは重い順に言うと「要介護5、4、3、2、1、要支援2、1」という順ですから、最も軽い仲間です。それよりも軽いと認定されません。

人生2度目の〝義務教育〟のススメ


介護サービスの負担額は本人の収入によって異なります。

そもそも毎月天引きされる介護保険料も本人の収入にスライドしていますから、このところ本の売れ行きが好調な私は、かなりの額の保険料を納入し、かつ今回のように新しいサービス受給が認められると、その負担額を収入に応じた決まりで納入することになります。

このたびの福祉用具に関しては、介護保険制度のおかげで市価よりずっと安価で良質のサービスを受けることができました。高齢者たちの未来は「老いの人生」。老いがもたらす状況を事前に察知して準備することが必要です。

幼い日、学校へ行く準備をしたように。「老い」という、いやでも出会う日々を、できるだけ豊かに過ごせるように。老いれば自分を取り巻く法律制度も変わります。

「人生2度目の義務教育」だと思って、自治体も人生百年時代の後半を生きる情報を、十分に提供してほしいと願っています。

※本稿は、『91歳、ヨタヘロ怪走中!』(婦人之友社)の一部を再編集したものです。

婦人公論.jp

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