4月4日から万物が生き生きしてくる「清明」。フィールドアドバイザーがこの時期の<野草の楽しみ方>を伝授!「『ウドの大木』もちゃんと役に立つことがある」
2024年4月4日(木)6時30分 婦人公論.jp
大海さん「『ウドの大木』もちゃんと役に立つことがある」(写真提供:Photo AC)
日本には、旧暦の「二十四節気」をさらに初候・次候・末候の三候に分けた「七十二候」という暦があります。今回は、野遊び作家・フィールドアドバイザーとして活躍する大海淳さんに、旧暦の七十二候にちなんだ野草の楽しみ方を紹介していただきました。今回紹介する季節は「清明」です。大海さん、「『ウドの大木』もちゃんと役に立つことがある」と言っていて——。
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清明(せいめい)
清明は「清浄明潔(せいじょうめいけつ)」の略で、花が咲き、鳥が鳴き、万物が生き生きしてくるころ。
お花見の最盛期で、一年のうちでももっともすがすがしく、華やかな時節。
新暦では4月4日〜19日ごろ。
主な歳時記
・4月8日…花祭り(灌仏会(かんぶつえ))
・4月9日…東大寺大仏開眼供養
・4月14日〜…春の高山祭
・4月16日…広島でトノサマバッタ初見
上記、生物季節観測などの時期は、目安としてご覧ください。また、行事の日にちは変わることもありますので、お出かけになる場合は事前にお調べください。
初候
玄鳥(つばめ)至(きた)る
ツバメが海を渡ってくる
玄鳥はツバメのこと。「玄」は「黒くて赤色を帯びた色」で、ツバメの嘴(くちばし)を言う。
・新暦では4月4日〜8日ごろ
・この候の植物=野蒜(ノビル)
『七十二候を楽しむ野草図鑑 季節の移ろいの中で心穏やかに暮らす』(著:大海淳/青春出版社)
次候
鴻雁(こうがん)北(きた)へ帰(かえ)る
渡り鳥のガンが北の国へ帰る
ツバメが南の国から来るのに代わって、ガンが北シベリア地方に帰っていく。
・新暦では4月9日〜13日ごろ
・この候の植物=薇(ゼンマイ)
末候
虹(にじ)始(はじ)めて見(み)る
雨上がりに虹が出やすくなる
春に初めて出る虹を「初虹(はつにじ)」という。「朝虹」が西に出れば雨、「夕虹」は晴れといわれる。
・新暦では4月14日〜19日ごろ
・この候の植物=独活(ウド)
註)新暦該当日は、年によって1日程度前後することがあります。
野草の楽しみ方
初候
玄鳥至る 野蒜*ノビル
筆者が幼少年期を過ごした時代は、身近な草花や木の実などが子どもたちの手ごろな「おやつ」であり「おもちゃ」でもあった。
ノビルもそれのひとつで、学校帰りの道すがらに見つけると、鱗茎(りんけい)を掘って齧(かじ)ったり、ときには3歳下の妹に「おくるみ人形」などを作ってやったものである。
ノビルは『古事記』にも登場する日本古来の食草で、今日でも生の鱗茎に味噌をつけたりして食されているが、子どものころのアソビゴコロを思い出して「おくるみ人形」の「おくるみ」に大葉(シソの葉)を使ってノビルを巻けば、ちょっとタノシイ酒の肴に変身する。
ノビルとアサツキはよく似るが、前者は鱗茎が球形、後者のそれはラッキョウ形だ。
次候
鴻雁北へ帰る 薇*ゼンマイ
ゼンマイは、山菜料理で最も多用されるひとつだが、アクが強く、食べるのに手間がかかるため、そのほとんどが乾燥させた「干しゼンマイ」として使われる。
それならば、「食べる」のではなく、ゼンマイの若苗が被っている薄茶色の綿毛を楽しんでみてはどうだろうか。
そのひとつが、秋田地方に伝わる「ぜんまい織り」で、この綿毛が防水性にすぐれているところから昔は「雨合羽」の生地に用いた。
そして、もうひとつは、ゼンマイの綿毛は羽化したばかりのカゲロウの胴体の色に似ているとして、ヤマメやイワナなどを釣るための毛鉤に使われており、これを「ゼンマイ胴の毛鉤」と呼ぶ。
ゼンマイは多年性のシダ植物で全国に分布。
末候
虹始めて見る 独活*ウド
栽培される軟白ウドに対して、野生のものを「山ウド」と呼ぶ。
山ウドは、すぐれた香気と歯ざわりが持ち味の山菜として知られるほか、古くから風邪や中風などの薬草としても知られる。
その誇り高い山ウドだが、一方で、「ものの役に立たない見掛け倒し」のたとえとして「ウドの大木」と言われることがある。
けれども、その「ウドの大木」もちゃんと役に立つことがあるのである。
それは、ウドの新芽は必ず前年の枯れた茎(大木の残骸)の脇から出てくるため、山菜採りでウドを探すときは、遠くからでもよく目立つその「ウドの大木」を目印にするのがカシコイ方法ということだ。
どんな物も、何かの役に立つという好例。
※本稿は、『七十二候を楽しむ野草図鑑 季節の移ろいの中で心穏やかに暮らす』(青春出版社)の一部を再編集したものです。