アーカイブ番組のネット開放、攻める編集権、制作会社との共創…米ファンド選任のフジテレビ取締役候補・近藤太香巳氏、改革プランを提示
2025年4月18日(金)6時0分 マイナビニュース
子会社フジテレビの経営改革を進めるフジ・メディア・ホールディングスに対し、6月開催の株主総会で取締役の選任など株主提案を行うことを表明している、米投資ファンドのダルトン・インベストメンツ。この取締役候補の筆頭に挙げられているSBIホールディングス会長兼社長が17日、記者会見を行った。
同会見には、もう一人の取締役候補に挙げられているNEXYZ.Group社長兼グループ代表の近藤太香巳氏も出席。同氏は「フジテレビの放送・メディア事業の改革」について提案を行った。
○有能な局員と徹底的に議論したい
近藤氏はまず、「(フジテレビ)社内には有能な人材の方々がおられ、今本当に悔しい思いを持って“自分たちは大きく変わらないといけない”、“フジテレビが大好きだ”という人たちもたくさんおられると思います。そうした方々と私は徹底的に議論して、何が良くて、何が悪くて、どのようにすればもっと良くなるかということを話し合えば、私がこれからお話しする企画よりも、断然良いものが行うことができる」と、現場への信頼を表明。その上で、同局が抱える課題を指摘した。
それは、「テレビとネットの親和性の追求よりも、現状維持に執着してきました。テレビ局の巨大なIP(知的財産)を、ネットでのビジネス展開に生かしきれず、コンテンツホルダーとしての大きな価値を眠らせています」「スポンサー・視聴者、少数クレームのリスクを恐れ、“面白い!”というワクワク感が薄れていきました」というもの。これを解決するために、「新しいことを最速で意思決定できるリーダーシップが必要です」と訴えた。
○クレームを恐れ“安全でつまらない方向”へ進んだ反省を
この改革のポイントとして、積極的なネット展開による地上波とデジタルのさらなる融合、ナショナルクライアントを重視する広告体制の見直し、視聴者ファーストの番組を堂々と作ることを提言した。
具体的には、フジテレビが持つドラマ、バラエティ、ドキュメンタリーなどのアーカイブコンテンツを、動画サービスやSNSへ再編集・再演出し、IPを“開放”する戦略を導入。そのために、過去の資産を今のトレンドに蘇らせる「IPリミックスチーム」を若手クリエイターで組成し、テレビと別動でネット専用コンテンツを展開することで、新たな広告枠の創出も図る。
また、クレームを恐れ“安全でつまらない方向”へ進んだ反省を生かすとして、「攻める編集権」を提言。コンテンツの評価基準において、賛否より「熱量」、「コンテンツシェア率」、「SNS」などを重視するほか、若手プロデューサーに年に1本「ゴールデン枠をプロデュースできる」などの権限を与える制度により、「チャレンジを歓迎するフラットな文化を創出する」とした。
ほかにも、Netflixなどの経験者・YouTuber・Z世代の人気インフルエンサーらとの公開会議「ゲームチェンジ構想会議(仮)」、社内外から募った番組新企画に思い切った裁量と予算を与える「制作工房ファンド」、視聴者の投票・アイデアで番組を作る参加型プロジェクトの創設といったアイデアを提示した。
制作会社との関係は、「下請け」だけでなく「共創パートナー」へ進化させることを提案。制作会社からの持ち込み企画に対してオープンな審査をして資金を投入し、アジアを視野に入れた展開を図るという。
○業界全体のアップデートも「フジテレビだからこそ実現できる」
そして最後に、「この決断ができれば、局の未来どころか、日本のメディア業界全体をアップデートできると思います」と期待を示し、その役割を「フジテレビだからこそ実現できます」と強調。
「局内には“本気で頑張りたい”、“これを変えるんだ”と思っていて、僕より全然知見を持っている人がいっぱいいると思うので、もし私が(取締役に)選ばれたなら、一緒に語り合いたい、話し合いたい、議論したいと思います」と、改めて現場にラブコールを送った。
近藤氏が社長兼グループ代表を務めるNEXYZ.Groupは、フジテレビへのCM出稿が回復しない中、4月から同局と沖縄・琉球放送の2局でテレビCMを開始した。今のフジでCM出稿を選んだことについて、近藤氏は「“今、最も変化を求められているメディア”でプロモーションを行うことは、“変わろうとする意志”への賛同、新たな価値を創出し続ける当社の姿勢そのものです」と、状況が安定した時期ではなく、意志を持って今実施する決断をしたことを説明している。