85歳ラジオDJ「ギネス認定までマイクに向かい続ける」…レディオ湘南でパーソナリティー30年目へ
2025年4月27日(日)14時30分 読売新聞
マイクに向かって語りかける在津さん(13日、藤沢市朝日町で)
自宅にミニFM局…以来40年
今年は日本でラジオ放送が始まって100年。湘南地域のコミュニティーFM「レディオ湘南」(神奈川県藤沢市)の最高齢パーソナリティー
「こんばんは——」
13日午後6時、深みのある在津さんの声が電波に乗り、「ざいつきげんの音楽鍋」の1573回目の放送が始まった。「色んな音楽(具材)を楽しめるように」と名付けた担当番組では、クラシックから演歌、最新のポップスまであらゆるジャンルを流す。
この日は、ゲストのジャズシンガー高村緑さんがジャズの名曲「Dream」を生披露。在津さんは、「あいにくの天気で満月でも月が見えないから、夢で月を見てほしいですね」と粋な一言を添えた。
放送後、「何回やっても緊張するね」とほほ笑む在津さんに、高村さんが、「また出演したいから、いつまでも元気でいてもらわないと」と語りかけた。
在津さんとラジオの出会いは約70年前の中学時代に遡る。深夜放送で米国のポップ音楽やジャズに触れ、「ラジオは友達のような感覚だった」。大学時代はジャズバンドを組み、アルトサックスに熱中。卒業後は広告関係の仕事に就いた。
転機となったのは43歳の頃。「家族と一緒にラジオで遊べたら楽しいかも」と、当時流行していたミニFM局を藤沢市の自宅で開いた。マイクなどの機材も約40万円かけてそろえ、妻と小学生だった長男と、好きな音楽を解説する番組を始めた。家族は途中で卒業したが、マイクの先にいるリスナーを想像しながら選曲する楽しさにのめり込み、13年放送を続けた。
活動がメディアで話題となり、1996年に開局したレディオ湘南から声がかかった。今では、開局からマイクに向かう唯一の存在で、5月5日には同局でパーソナリティーを務めて30年目に入る。最近は、番組に地元の医療機関から認知症を専門とする医師を招き、予防方法を語ってもらうなど、地域貢献にも力を入れている。
在津さんは「ラジオは世代を超えて楽しめる遊び道具。この年齢だからこそ出せる味をマイクを通して味わってほしい」と語る。「高齢者は懐かしさを、若い世代は新鮮さを感じられる。そんな番組にしていきたい」。今日もマイクに向かって言葉を紡ぐ。
レディオ湘南の周波数は83・1メガ・ヘルツ。「ざいつきげんの音楽鍋」は毎週日曜午後6時〜6時29分。