「娼婦の顔を切りつけた犯人」に1000ドルの懸賞金が…心を入れ替えた“かつての大悪党”が友人のために戦う復讐劇 「許されざる者」を採点!

2025年4月28日(月)18時0分 文春オンライン

〈あらすじ〉



1992年公開 131分
2013年、渡辺謙主演の時代劇としてリメイク版が制作された。


 かつて残忍な悪党として名を馳せたウィリアム・マニー(クリント・イーストウッド)は、3年前、最愛の妻に先立たれ、今はワイオミングの田舎で2人の子どもと農夫として暮らしている。


 ある日、若く経験の浅いガンマンが農場を訪れ、マニーに賞金稼ぎの話を持ちかける。ビッグ・ウイスキーという町で娼婦の顔を切りつけた2人のカウボーイの首に、1000ドルの懸賞金が懸けられたのだ。貧困にあえぐマニーは、子どもたちの将来のために話に乗る。そこに、かつての悪党仲間ネッド(モーガン・フリーマン)も加わり、3人はビッグ・ウイスキーに旅立つ。


〈解説〉


 監督としては16本目の主演作。脚本はデヴィッド・ウェッブ・ピープルズ。


 西部開拓時代を舞台に、心を入れ替えたかつての大悪党が、友人のために戦う復讐劇。テレビドラマ「ローハイド」や映画『夕陽のガンマン』などの西部劇で大スターとなったイーストウッドの集大成であり“最後の西部劇”。


 第65回アカデミー賞で、作品賞・監督賞・編集賞を受賞、そして敵役の保安官、リトル・ビルを演じたジーン・ハックマンが助演男優賞を受賞している。





  • 中野翠(コラムニスト)

    ★★★★★「断然、男映画だなあ」と思いつつ、引き込まれる。イングリッシュ・ボブ役のリチャード・ハリスを始め、キャスティングも確か。「20年で大統領2人が暗殺された。文明国とは言えない」という皮肉も。




  • 芝山幹郎(翻訳家)

    ★★★★★ぶざまな初老の男の体内で「鬼」が蘇る。善悪の紋切型を避け、登場人物ほぼ全員に地獄を受け入れさせる流儀の完成度が高い。「こんなもそんなもあるか」という無体な台詞の深みにリアリティがある。




  • 斎藤綾子(作家)

    ★★★★★父子家庭の父親が命がけで稼ぎに行くなど無謀。だが昔の彼が、動くものならおかまいなしに殺したと知って不思議に安堵。復讐劇は痛快だし拳銃の演出も楽しいし、町を去る姿も西部劇の格好良さ。




  • 森直人(映画評論家)

    ★★★★★別格の荘厳さ。還暦を迎えたイーストウッドの枯淡の色気。特に今は老境を意識した俳優のベンチマークとしての影響力を広範に確認できる。この“集大成”が、実は彼の新たな黄金期の幕開けだった!




  • 洞口依子(女優)

    ★★★★★“罪なき者石もて打て”ではないが最後の墓場の場面、映画における西部劇魂の再構築といい、イーストウッド最強伝説集約の大傑作。そしてある意味第二の主人公は示唆的存在の保安官役ハックマン。






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許されざる者
1992年公開 131分





(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年5月1日・8日号)

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