指揮者の佐渡裕、ウィーン・トーンキュンストラー管率いて日本ツアー…音楽監督10年の集大成
2025年5月9日(金)17時0分 読売新聞
トーンキュンストラー管弦楽団を率いて日本公演を行う佐渡裕(東京都内で)=稲垣政則撮影
指揮者の佐渡裕が、音楽監督を務めるウィーンのトーンキュンストラー管弦楽団を率いて日本ツアーに今月から臨む。2015年から務めたポストも今夏で任期満了。「本当にあっという間で幸せな時間だった」と、蜜月の日々をすごした10年の集大成を飾る。(宍戸将樹)
今回で3回目となる日本ツアーのプログラムは、ピアニストの反田恭平と共演するモーツァルトのピアノ協奏曲第23番と、マーラーの交響曲第5番。「マーラーの5番はオーケストラの技能や音楽性が見えてくる曲。個人プレーも団体プレーも両方できないといけない」と気を引き締める。
トーンキュンストラー管での10年を振り返り、「ウィーン楽友協会という、名演が繰り広げられてきたホールに立てたことは大きな財産」と語る。熱烈な音楽ファンが集まる同協会で、「プレッシャーを受けながら佐渡裕とトーンキュンストラー管の音が作られていった」と明かす。
ハイドンやブルックナーなどウィーンで活躍した作曲家を中心に取り組み、石造りで反響する建物が多いウィーンの街並みやホールに合わせた独自の“フレーズ感”を作ってきた。「音が重なったときの和声、和音の緊張や解放、そのハーモニーはこのオーケストラ独自のもの」と自負する。「言葉の壁を越えて信頼関係が築けた。事務局スタッフの力も大きい」と感謝する。
楽団の特徴は「メンバーが本当に仲が良い」ことだという。オーストリアを中心に、日本や中国、ロシアなど様々な国の奏者が集うが、「指揮台の上では時には注意もする。でも指揮台を降りたら同じ音楽仲間としてつきあってきた」。パーティーやゴルフなど、様々な形でコミュニケーションを図り、「仲が良いのは音楽をする上ですごく重要。だから温かい音がします」と強調する。
退任後はオーケストラの客演も行う一方、新日本フィルハーモニー交響楽団の音楽監督と兵庫県立芸術文化センターの芸術監督を軸に後進の育成にも携わる。かつて音楽番組「オーケストラがやって来た」を通してクラシックに親しんだ佐渡にとっては「(番組を支えた)新日本フィルの音楽監督を自分が務めているのは不思議な縁」。同フィルの本拠地である東京都墨田区を中心に、音楽をより身近なものにしようと奮闘している。
「メンバーも日本でのツアーでテンションが高まっている。日本ツアーは10年の総決算です」と意気込んでいる。