過去イチの大熱戦『THE SECOND 2025』のグランプリファイナルを振り返る。王者ツートライブの勝因は?
2025年5月19日(月)20時55分 All About
結成16年以上の実力派漫才師たちによるタイマン漫才賞レース『THE SECOND〜漫才トーナメント〜2025』。初代「ギャロップ」、2代目「ガクテンソク」に続き、3代目王者の座を勝ち取ったのは?(サムネイル画像出典:『THE SECOND~漫才トーナメント~2025』公式Webサイト)
3回目を迎える本大会。初代「ギャロップ」、2代目「ガクテンソク」に続く、3代目王者の座を勝ち取ったのは……ツートライブ! おめでとうございます!過去最高といっても過言ではないかもしれない、激闘の今大会を振り返ります。
初戦から最高得点! 観客の心をつかんで駆け抜けたツートライブ

先攻のツートライブは、周平魂さんが「チャンスを待ち続けた男たちですわ」と自分たちの事前VTRをいじるツカミからスタート。相方のたかのりさんも、周平さんがかんだらすぐ言及してフォローしたり、漫才中に笑みをこぼしたりとリラックスした雰囲気でした。
ネタは「脱法ジビエ」というコンプライアンスに厳しい現代ではグレーな内容。番組冒頭で司会の東野さんがスキャンダルで揺れるフジテレビでの放送に触れていたこともあり、このネタ選択も成功していたように見えました。
そんなツートライブの芸風と大舞台を楽しむ姿が「今年の『THE SECOND』の空気感」とばっちりハマった結果、いきなりグランプリファイナル最高得点を叩き出して295対278で勝利。初戦から観客の心をつかみ、そのまま駆け抜けての優勝となりました。
「このドキドキがええねん」芸歴54年目の挑戦者ザ・ぼんち

先攻の金属バットが大いにウケた後に登場した後攻のザ・ぼんちでしたが、さすが百戦錬磨の大ベテラン。ほぼ聞き取れないほど全力の「おさむちゃんです!」で、一気に会場の空気を掌握。
そこから何気ない「お前の葬式は俺が面倒見る」の言い合いが始まり、次第にエスカレートして、ついに「お前が先に死ね!」と叫ぶおさむ師匠(筆者は家のテレビで見ていてめちゃくちゃ笑ってしまいました)。とにかくパワーがすごい! あの熱量と技術で漫才をできる人がほかにどれだけ居るでしょうか。
涙が出るほど笑いながら、芸歴54年目の今もなお挑戦と進化を続けていらっしゃるんだなと感動……。結果的には僅差で負けてしまいましたが、本当にすごいものを見させていただきました。
だからこそ、お笑い好きとして集められた観客の中に「1点(面白くなかった)」をつけた人がいたことが、とてもショックでした。途方もない歳月をかけた鍛錬の結晶のような、あの圧巻のパフォーマンスを生で見ても、心が動かない「お笑い好き」もいるという事実に……!
「圧倒的に優勝」最後まで信じる道を歩き続けた囲碁将棋

準決勝でも「(さっきの試合で)最高得点!」とツカミを入れてきたツートライブとは対照的に、あいさつからすぐ本ネタへ入った囲碁将棋。見ている側の気持ちを代弁するようなメタ視点のアドリブが歓迎されがちな『THE SECOND』において、観客によっては「かわいげがない」とも取られかねないスタイルです。
実際、一貫して囲碁将棋に1点を入れる観客も見受けられ、さらには戦いを見守っていたくりぃむしちゅーの有田さんにも「何百回と練習してるのに、さも初めて聞いたかのように……」と間接的に何度もいじられ、ついには舞台裏で練習している後ろ姿をカメラで映されていました。
それでも事前VTRでの「圧倒的に優勝」という宣言通り、そんなことは意に返さないというように、決勝も最初から本ネタに入って拍手笑いを連発。しかし、終盤の盛り上がりの途中でネタを一瞬飛ばしてしまい、すぐに立て直すもやや失速して終了。その影響もあってか、ウケの割には点数が伸びず、ツートライブに8点差で敗れる結果になりました。
「減点方式」が響いてしまう『THE SECOND』
審査員の持ち点は1人につき3点しかないので、ほかの賞レース以上に「減点方式」で審査されると大きく響いてしまうのが『THE SECOND』。もしかしたら、完璧なネタで圧倒的に勝つことを目指した囲碁将棋のスタイルは、この大会には不向きなのかもしれないし、ツートライブのようなミスを笑いに変えられるスタイルだったら、結果は変わっていたかもしれません。だとしても、何を言われてもスタイルを変えず、自分たちの「王道」を突き進んだ囲碁将棋は、めちゃくちゃ面白かったし、本当にかっこよかったです。エンディングで話を振られた文田さんが「来年も出ます」と宣言していたのも印象的でした。
優勝したツートライブの今後の活躍はもちろんですが、来年の『THE SECOND』も楽しみに待ちたいですね!
この記事の筆者:石川 カズキ
1984年沖縄県生まれ。筑波大学人間学類卒業後、会社員を経て芸人・作家・コピーライターに。エレキコミック・ラーメンズを輩出した芸能事務所トゥインクル・コーポレーション所属。第60回宣伝会議賞コピーゴールド受賞、LOFT公式YouTubeチャンネル「コントするイシカワくん」シリーズのコント台本・出演、KNBラジオCMコンテスト2020・2023協賛社賞受賞など。お仕事があればお気軽にご連絡ください。AIから仕事を奪うのが目標です。
(文:石川 カズキ)