川上麻衣子「約30年間未着手だった相模原の実家をやっと売却。モノ好き父母が集めに集めたレコードや食器が…」急に《実家じまい》が進んだ意外なワケ
2025年5月20日(火)12時30分 婦人公論.jp
「現実的な話、売却するにせよ、中を整理して使うにせよ、動くのは一人娘である私。《あの家問題》は、ずっと肩にのしかかっていました」(撮影:大河内禎)
いつか片づけなくてはと思いながら、10年以上物置と化していたという川上麻衣子さんの実家。とある〈事件〉をきっかけに、高齢の両親を説得し、重い腰を上げて整理することにしました。1ヵ月で大量のモノを仕分けして感じたこととは(撮影:大河内禎 構成:丸山あかね)
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一つひとつに強い思い入れが
一昨年、「実家じまい」をしました。思えば長い道のりで……。10年以上にわたり、両親と顔を合わせるたびに、「ところであの家、どうする?」と話題にのぼっていたのです。ところがその話になると、両親はいつも示し合わせたようにダンマリ。埒が明かず、私から話を変えてうやむやにするのが常でした。
でも現実的な話、売却するにせよ、中を整理して使うにせよ、動くのは一人娘である私。「あの家問題」は、ずっと肩にのしかかっていました。
「あの家」とは、1967年に両親が購入した神奈川県相模原市鵜野森にある実家のことです。高度経済成長期に建てられた集合住宅で、当時はモダンだと話題になったそう。とはいえ、もうすぐ還暦を迎える私がものごころついた頃から暮らしていた家ですから、ヴィンテージもいいところ。
しかも私は17歳でその家を出て都内で一人暮らしを始め、両親も最寄り駅まで徒歩20分という不便さから、約30年前に都内の賃貸マンションに移り住んでいました。
その時点でさっさと売却してしまえばよかったのですが、そうできなかったのは、愛着のあるモノたちをそっくりそのまま残していたからです。
現在、父は95歳、母は86歳になりますが、マンションに移り住んだ頃はまだ若く、フットワークも軽かったので、2つの家を行ったり来たりしていました。音楽鑑賞が大好きな父にとっては、長年収集したレコードを、こだわりのレコードプレーヤーとステレオで聴く趣味の家。
母にとっては、集めに集めた北欧の食器や、テキスタイルのコレクションなどを保管するための倉庫。そのほかにも、父の年季の入った木工工具の数々に、膨大な量の書籍とアルバム……。
家具デザイナーの父と、テキスタイルデザイナーの母は、揃いも揃ってモノが好き。私は2人がスウェーデンの国立美術工芸デザイン大学へ留学していた時に生まれ、その後も日本とスウェーデンを行き来しながら育ちました。
高価ではないのですが、希少価値が高いモノがたくさん。こだわって選び抜いたという思い入れも強いのです。
両親の作品も保管されていて、制作過程や製品化された時のパンフレットなどの資料も含め、お宝だとわかっていただけに、「一気に処分してしまおうよ」と提案するわけにもいきませんでした。
腰が引けるほどの量のモノ
両親からゴーサインが出なかったのには、もう一つ理由がありました。実は10年ほど前まで、父は「いつか鵜野森の家に戻りたい」と考えていたのです。ところがそんな折、その家が空き巣に入られるという事件が。
別件で逮捕された犯人が取り調べで、「川上麻衣子の実家に入った」と自白したそう。忍び込んだ家に、両親が保管していたデビュー当時の衣装やポスターなどが飾ってあるのを見て、私の実家だと察したのでしょう。
ともあれ、放置しておくのはよろしくないと家族会議を開きました。それを機に父の態度は軟化し、「家のことは麻衣子に任せる」と言ってくれたのです。
許可が下りたのだからすぐに着手すればいいのですが、いざとなると踏み出せませんでした。腰が重かったというより、気が遠くなりそうな量のモノに腰が引けていたのです。
それが急に話が進んだのは、母がたまたま手にした不動産のチラシがきっかけ。「あの家っていくらくらいで売れるのかしら?」と興味が湧いたのです。
査定してくれた不動産会社の担当者が、「不用品はそのまま置いておいてもらえたら、こちらで処分しますよ」と言うのを聞いて、母はついに売却を決意。
処分費用は売値から引かれますが、業者に依頼しても100万円以上かかると思っていたし、何より、すべきことが明確になったように感じたのです。捨て方に悩まずに済み、要る・要らないの判断をするだけなら案外簡単なのでは、と。
また、売却を決めて期限ができたというのも大きな進歩でした。引き渡しまで2ヵ月ありましたが、仕事の都合もあり、1ヵ月で済ませようと決めて取り掛かったのです。
<後編につづく>
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