還暦を迎える主人公の“その先”を生きる両親の登場…『続・続・最後から二番目の恋』第6話、“いい話”が“さらなるオチ”に
2025年5月21日(水)11時30分 マイナビニュース
小泉今日子と中井貴一が主演を務めるフジテレビ系ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(毎週月曜21:00〜 ※TVer、FODで配信)の第6話が、19日に放送された。
鎌倉の古民家へ越してきたテレビドラマプロデューサーの千明(小泉)が、その隣家に住む市役所職員の和平(中井)と出会い、和平の家族とともに恋や友情を育んでいく大人のロマンチック&ホームコメディ。第3シーズンとなる今作は、還暦間近の千明に定年を迎えた和平という、さらに円熟味を増した彼らの“今と未来”が丁寧に描かれていく。
前回の第5話は、強盗事件が発生しているというニュースから和平が千明に防犯ブザーを渡し、千明は悪酔いすると全裸になって寝てしまうというウィットな会話をさりげなく交え、そこで迎えたラスト…。深夜に防犯ブザーが鳴り響き、和平が千明の“あらぬ姿”を目撃してしまうという“フリ”と“オチ”が見事な、まるで短編小説のような美しい一遍だった。
しかし驚きなのは、第6話でそれを上回る“さらなるオチ”が待っていたのだ——。
○人気シリーズでリスクになる新キャラクターの登場
まず第3シリーズで初めて登場したにもかかわらず、唐突感や違和感を一切感じさせず、今作の世界観になじんでしまうどころか、深い“味”まで出していた千明の母・有里子役の三田佳子と、父・隆司役の小倉蒼蛙を称えたい。
ここまで長く続く人気シリーズにおいて、新しいキャラクターの登場、ましてや主人公の親族を登場させるのはリスクでしかないだろう。なぜなら世界観とのマッチングはもちろんのこと、親族をここへまで登場させなかった理由が必要となるからだ。
だが今シリーズは、還暦を迎えるほどの大人が主人公の物語で、彼らの老いの“その先”を描くことが根底にある。そのため、“その先”を今リアルに生きている両親を登場させ、それでもカッコよく……このドラマからすればファンキーに生きている様を描くことは必然だったのだ。両親を登場させる布石として、前々回で千明が自身の関係者たちと写真を撮って母に送っている場面があったことで、その流れはさらに自然となった。
その上、突然の両親登場の物語を自然な形で展開させ、千明という人物をさらに深掘りする“いい話”として着地させるだけでなく、まさかその“いい話”を、前回ラストのてん末…千明の“あらぬ姿”を見てしまったのではないか?という、“さらなるオチ”につなげた展開はアッパレだった。
しかもその場面、画面の中では“いい話”として進行しているはずなのに、その先の真相を知っている視聴者(と和平)はそれどころではなくなる……画面の中と外で感じ取る物語が真逆になるという、複雑な構造であったことも巧みで見事であった。
○第3シリーズが“月9”で放送されている意味
何度も言うが、今作は“何も起こらない”ことが特徴でありながら、油断していると、こんなにも巧みな物語が待ち受けている。だからこその大人のドラマであり、第3シリーズまで続く胆力のある作品なのだ。
さらに俯瞰(ふかん)してみると、今回は還暦を迎える主人公のその上の世代も巻き込む物語に仕立てた。そうするとドラマの画面自体もおのずと活力がなくなりそう(悪く言えば、古臭い作品にもなりそう)なのだが、ことこの作品においては画面の中が生き生きとした人物たちばかり。そして演出での工夫もあり、オシャレでカッコいい世界観を高い位置で保っている。
それはやはり“月9”で仕上げるクオリティーだからだろう。改めて、これまで“木10”で放送されてきた同シリーズが、今作は“月9”で放送されている意味を、深読みしてしまった。
「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平 おおいしようへい テレビの“視聴質”を独自に調査している「テレビ視聴しつ」(株式会社eight)の室長。雑誌やウェブなどにコラムを展開している。特にテレビドラマの脚本家や監督、音楽など、制作スタッフに着目したレポートを執筆しており、独自のマニアックな視点で、スタッフへのインタビューも行っている。 この著者の記事一覧はこちら