『火の鳥 エデンの花』手掛けるSTUDIO4°Cとは?稀代のアニメーションスタジオの魅力を紐解く

2023年10月22日(日)13時0分 シネマカフェ

『火の鳥 エデンの花』©Beyond C.

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「火の鳥」望郷編を映像化した『火の鳥 エデンの花』が11月3日(金・祝)より公開される。本作を完成させたのは『マインド・ゲーム』『海獣の子供』『映画 えんとつ町のプペル』などのヒット作を送り出してきたSTUDIO4°Cだ。

手塚治虫の代表作にしてライフワークともなった不朽の名作「火の鳥」全12編のうち、地球と宇宙の未来を描いた「望郷編」。本作を製作期間7年をかけて作り上げた「STUDIO4°C」は、これまでにも多くのアートな映像作品を生み出し続けているアニメーション制作会社だ。

1988年の設立以来、映画作品を中心にTV、MV、ゲーム、CMなど、様々な媒体で意欲的な企画に取り組んできたSTUDIO4°Cは、日本アニメ界随一の個性を誇り、そのハイクオリティな映像で国内外から高い評価を得ている。昨今も、『海獣の子供』『映画 えんとつ町のプペル』『漁港の肉子ちゃん』など、ジャンルにとらわれないバラエティ豊かなラインアップの作品を手掛けてきた。

そんなSTUDIO4°Cの特徴として挙げられるのが、様々な監督を起用して劇場向けのアニメを制作し続けているという点である。多くのアニメスタジオがTVアニメも制作する中で、STUDIO4°Cはほとんど制作していない。STUDIO4°Cのように、映画をメインに制作しているスタジオとしては、宮崎駿監督のスタジオジブリ、新海誠監督のコミックスウェーブフィルム、細田守監督のスタジオ地図などが挙げられる。

そして、さらなる特徴の一つが、代表取締役である田中栄子によるプロデュースで様々なクリエイターと映画を作っているため、過去作品にはあらゆる監督が名を連ねている。

例えば、『犬王』『夜明け告げるルーのうた』などを手掛けた湯浅政明監督や『この世界の片隅に』でお馴染みの片渕須直監督など、日本アニメ界を代表する監督の初長編作品がSTUDIO4°C制作にて作られている点である。まさに唯一無二のアニメーションスタジオと言える。

そして、そのSTUDIO4°Cの魅力の一つとも言えるのが、映像表現の豊かさ。作品ごとに新しい表現手法の模索や技術開発にも貪欲にチャレンジし続けることで、国内外問わず多くのシーンで高い評価を得ている。

例えば、伝説的人気を誇る松本大洋のコミックを映像化した映画『鉄コン筋クリート』。当時の最先端3DCG技術と昔ながらの手書きアニメーションを併用し、迫力・疾走感を感じさせる映像演出を成功させた作品で、第31回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞など数々の賞を受賞した。

この作品でキャラクターデザイン・総作画監督・絵コンテ(共同)を務めていたのが、本作の監督であり絵コンテやキャラクター原案も手掛けた西見祥示郎。湯浅政明監督の初長編監督作『マインド・ゲーム』にてミュージカル・シーンの原画を手掛けて以降、STUDIO4°C作品に数多く参加している。

西見氏の監督起用について、STUDIO4°Cの代表であり本作のプロデューサーを務める田中栄子は、「西見さんが持つアーティスティックな感性が、同じくアーティストである手塚治虫先生の感性と掛け算したら、すごく面白くなるんじゃないかと思いました。西見さんは独特のデザインセンスと演出力で、デフォルメされたキャラでも実に生々しくリアルに動かすという特別な才能を持った人ですから」と太鼓判を押す。

また、企画立ち上げの経緯について田中氏は、「手塚治虫という世界的巨匠の作品を、STUDIO4°Cで映像化したい、自分の手で世に送り出したいと思ったのがスタートです。“なんで今、手塚治虫なの?”と周りから聞かれることも多かったけど、とにかく私が作りたかったから!としか言いようがないんですよね」と手塚作品への実直な想いを語る。

さらに本作は、3人の監督を立てて、復活編・未来編・望郷編の3部作とする予定だったようだが、結果的に今回の望郷編だけが企画として残ることとなった。「望郷編だけは、テレビでも劇場でも、実写でもアニメでも一度も映像化されていないんです。望郷編は手塚さんの未来への警鐘も含め、いろんなメッセージが凝縮された作品だと思っていて、私自身いちばん好きなタイトルでもありました」とふり返る。

8年にも及ぶ製作期間を経て完成した超大作のため、危機的局面も多く乗り越えてきたようだ。「STUDIO4°Cの自社企画として始めて、それを売り込むというかたちは、これまで長年続けてきたことですから。危ういといえば危ういし、毎回大変な思いはするんですけど、企画を立てたら必ず作品として完成するという確信があるんで。そこは常に疑ったことがない。だから今回も、時間はかかっても必ず完成する、絶対に自信作にすると思っていました」と、これまでの作品、そして本作へかける想いをにじませた。

STUDIO4°Cの叡智が結集した、壮大な愛と冒険の物語である本作も、これまでの作品同様大きな注目を集めている。

『火の鳥 エデンの花』は11月3日(金・祝)より新宿バルト9ほか全国にて公開。

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