ASEANは米中の板挟み…トランプ関税に徹底抗戦する中国接近、一方で相互関税交渉への影響懸念

2025年4月21日(月)9時15分 読売新聞

中国の電子機器メーカーが建設中の工場(18日、タイ中部アユタヤで)=井戸田崇志撮影

 【バンコク=井戸田崇志】東南アジア諸国連合(ASEAN)の各国が、中国と米国との板挟みになっている。米トランプ政権の関税措置に徹底抗戦している中国は各国に同調を呼びかけるが、中国と接近しすぎれば、「相互関税」を巡る交渉に影響しかねないからだ。日本政府も関税問題をきっかけとして、ASEANとの連携強化を図る。

 中国の習近平シージンピン国家主席は14〜17日、外遊先のベトナムとマレーシア、カンボジアで首脳会談に臨んだ。米国の関税措置を念頭に「一方的ないじめ行為に反対し、自由貿易体制と供給網を守ろう」などと訴えた。

 米国はベトナムに46%、マレーシアに24%、カンボジアに49%の相互関税を課す計画だ。習氏は3か国の取り込みを狙い、計100項目を超える協定を結んだ。

 ベトナムの最高指導者トー・ラム共産党書記長が「対中関係の発展は最優先事項だ」と応じるなど、各国は習氏に配慮を示したものの、トランプ関税への直接的な批判は避けた。

 ベトナムが米国と貿易協定交渉を始めることで合意するなど、各国が米国と相互関税の減免に向けた交渉を進める一方、米中は関税率の引き上げ合戦を続け、対立したままだ。ベトナムなど3か国は、中国に同調すれば米国から譲歩を引き出すのが難しくなると判断したとみられる。

 東南アジアでは近年、中国の影響力が増している。

 2023年の中国からASEANへの直接投資額は176億ドル(約2・5兆円)で、10年前の約3倍に増えた。17年に第1次トランプ政権が誕生して以降、米国が中国製品の輸入規制を強化したのに対応し、中国企業が東南アジアの工場で製品を作り、そこから輸出する動きが広がったためだ。

 米国は、こうした中国の迂回うかい輸出を問題視し、今回の相互関税で、東南アジア各国にも高い税率を課した。米ブルームバーグ通信は17日、トランプ政権が、中国と緊密な関係にある国からの輸入に「二次的関税」を発動することを検討していると報じた。

 ASEANは「特定の国に肩入れしない」(タイのピチャイ商務相)と、中立的な立場を主張する。だが、迂回輸出の封じ込めを狙う米国が、投資に積極的な中国との手切れを迫ってくる恐れが強く、難しい立場に置かれている。

 一方、日本の石破首相は今月下旬、ベトナムとフィリピンを訪問する。日本にとって、ASEANで存在感を強める中国にどう対抗するかは大きな課題だっただけに、関税問題を機に各国への働きかけを強める構えだ。

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