国際社会の制裁に脅かされる北朝鮮の「運び屋」の暮らし

2019年5月11日(土)10時35分 デイリーNKジャパン


1980年代まで韓国の駅頭や市場には、数多くの「チゲクン」と呼ばれる人々がいた。「チゲ」(背負子)を背負って荷物を運び、対価を受け取る人々のことだ。


韓国の日刊紙「アジア・トゥディ」は2008年、もはや残り少なくなったチゲクンの一人で当時67歳だったパク・ノチャンさんのインタビュー記事を掲載している。当時、ソウルの南大門市場に残ったチゲクンは4〜50人しかおらず、歳をとってやめていく人が多いとパクさんは語っている。


韓国では消えつつあるチゲクンだが、北朝鮮では現役だ。


両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、中国国境に面した両江道の恵山(ヘサン)は合法、非合法の貿易で成り立ってきた町で、商売でやり取りされる荷物の量が非常に多いことで知られる。


「クルマ」と呼ばれるリアカーや背負子で荷物を運ぶ「チムクン」と呼ばれる人々が、市場、駅、バスターミナル、トラック駐車場周辺には大勢いる。料金の相場は、荷物1個を1キロの距離を運ぶのに3000北朝鮮ウォン(約39円)。


彼らの1日の収入は、1万5000北朝鮮ウォン(約195円)ほどになる。必要な道具が背負子だけならば、初期費用もほとんどかからない上に、荷物を運ぶだけにとどまらず、仕入れる品を探している商人を別の商人に紹介して手間賃を稼ぐ。コメ1キロが5000北朝鮮ウォン(約65円)で売られていることを考えると、決して悪くない商売だ。貧しい人が手っ取り早く稼げる仕事となっていた。


ところが、今年に入って状況が変わった。


「荷物を運んでも収入は1日6000北朝鮮ウォンから7000北朝鮮ウォン(約78円〜91円)。頑張っても1万2000北朝鮮ウォン(約156円)程度だ」(情報筋)


国際社会の制裁による不況が市場を直撃、物が売れないため商人の数が激減してしまったからだ。それに伴い、運ぶ荷物の量も激減している。


「最近は荷物が減って、(運ぶ)距離が長ければようやく1万北朝鮮ウォン(約130円)を稼げる程度。1〜2年前と比べて収入が半分になってしまった」(情報筋)


さらに密輸も以前ほど活発には行われておらず、市場管理税を払えば1日の食費にしかならないという。それでも、日々の糧に事欠く人々が大勢いることを考えると、まだマシな方と言えよう。

デイリーNKジャパン

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