当選したら世界中から米軍を撤退させる、ケネディ候補が衝撃の発言

2023年5月12日(金)6時0分 JBpress

「米国の外交政策は破綻している。国外にある800の米軍基地を閉鎖し、直ちに米軍を帰還させて、米国を模範的な民主主義国家にすべき」

 こう断言するのは米民主党から次期大統領選に出馬しているロバート・ケネディJr(69)である。

 ケネディ氏といえば暗殺されたケネディ大統領の甥、そしてロバート・ケネディ元司法長官の息子という血筋で、米政界のサラブレッド的な人物である。

 現在は環境問題を扱う弁護士をしている。

 そのケネディ氏が大小合わせて800ほどもある国外の米軍基地を閉めるべきであると公言したのだ。

 再選を目指す現職バイデン大統領への強烈なカウンターパンチと受け取られているが、どこまで本気で米軍基地を閉鎖しようとしているのか。

 国際関係のバランスを考慮すれば、国内だけでなく国外に米軍基地を置いておくことは半ば常識とされており、その反響は大きい。

 米メディアに発言した同氏の言葉をもう少し探ってみたい。

「米国の年間国防関連支出は1兆ドル(約135兆円)にもなり、世界中に800もの軍事基地を維持している」

「にもかかわらず、ベルリンの壁が崩壊した後にもたらされるはずだった平和は訪れていない」

「大統領に当選した場合、私ロバート・ケネディJrは米国という帝国を解き放つ準備に入るつもりだ。米国は次から次へと起こる戦争のたびに返済不能な負債を積み重ねている」

「軍隊は国を守るという本来の役割に戻るべき。代理戦争をはじめとして、他国を空爆したり秘密工作をすることがあまりにも普通になってしまっている」

「戦争好きな帝国(米国)が自らの意志で武装解除をすれば、それは世界中の平和の雛形になるはずだ」

「健全な国家として平和に奉仕するのは今からでも遅くはない」

 ここまでの言説を眺めるかぎり、理想を追求するケネディ家の人物らしさが見受けられるが、同氏の主張がどこまで有権者に受け入れられるかは分からない。

 ただ今回、1980年に現職カーター大統領に挑んだケネディ大統領の末弟エドワード・ケネディ上院議員のような役回りを果たすかもしれず、党内の反バイデン派をまとめ上げる可能性は捨て切れない。

 というのも、米NBCテレビが発表した最新の世論調査では、回答者の70%は「バイデン氏の再選を望まない」としているからだ。

 7割の有権者がバイデン氏の再選を望まない理由の一つが年齢である。

 仮に再選を果たした場合、2期目が終わる時は86歳になっており、職務遂行に疑問を抱く人は多い。

 大統領としての支持率に目を向けても、バイデン氏に人気があるとは言いがたい。

 米世論調査の分析を行うウエブサイト「ファイブ・サーティ・エイト」によると、現在の支持率は42.5%でしかない。

 過去1年半以上、50%を超えたことはなく、不支持率の方が高くなっている。

 米民主党関係者に取材すると、次のように述べた。

「ロバート・ケネディJrは民主党主流派とは違う立ち位置で、ある意味で異端の意見をもつ人物といえる」

「しかし、同氏のもつ活力と『ケネディ』というブランドネームは魔法のような力があり、今後大統領候補として一気に求心力を得られるかもしれない」

 800もの米軍基地を閉鎖するというアイデアは誰しもが賛同するものではないが、選挙序盤にこうした大胆発言をすることで、バイデン大統領へのアンチテーゼとして一石を投じることはできそうだ。

 米国の国防予算は世界一でありながら内部から空洞化してきていると、ケネディ氏は述べる。

 インフラ、産業、経済が脆弱では強い国家、安全な国家を維持することはできないとする。

 さらに同氏はケネディ政権が発足した場合、米国を再び強い国にすることが最優先課題であると述べている。

 そのためには冒頭で記したように、帝国主義的な政策を終わらせる必要がある。

 それが国外の米軍基地の閉鎖なのだという。

 一見、矛盾するようにも思えるが、米国内の衰退した都市、老朽化した鉄道、腐敗したインフラ、低迷する経済に目を向けて再建することが強い国につながると捉えている。

 ウクライナでも同様の考え方を実践するつもりでいる。

 ロシアに対して、ウクライナ国境付近から軍隊と核兵器搭載ミサイルを撤退させて、ウクライナの自由と独立を保証させるつもりだ。

 そして国連の平和維持軍が同地域の平和を保証すべきだと考える。

 ジョン・クインシー・アダムズが1821年の独立記念日の演説で使った「米国は怪物を退治するために国外に出ていくことはない」という言葉に立ち返り、交戦的な態度を改めるべきとのスタンスに立つ。

 そして世界を敵や敵対者という視点でみることをやめなければならないとする。

 これはある意味で理想論としての外交政策である。

 ケネディ氏が本気で取り組んだ時にどういった成果が出せるのか定かではないが、いまのケネディ氏の外交スタンスであることに間違いない。

 共和党に目を向けると、ドナルド・トランプ前大統領が再び選挙戦に舞い戻ってきている。

 ただ世論調査では60%が「トランプ氏は出馬すべきではない」と回答しており、米有権者の過半数はバイデン大統領にもトランプ氏にも次期大統領になってほしくないとの思いであることが分かっている。

 理想論を掲げるロバート・ケネディJrが米国の表舞台に立てるのかどうかは、これからの選挙戦を見なくてはいけないが、バイデン大統領にはこういうことを述べている。

「この国を建て直す方法を見つける時がきた。簡単なことであるとは言わない。しかし、少なくとも私には何が必要であるかが分かっている」

 そう述べた後、父ロバート・ケネディ氏の言葉を引用して、いまの米国に必要なものを口にしている。

「互いを愛する気持ちと知恵、そして思いやりが重要」

 今後、大統領選の民主党レースでケネディ氏がどこまで支持を伸ばし、本当に現職バイデン大統領の牙城を崩せるかが見ものとなる。

 ケネディという魔法の力はどこまで通用するのか——。

筆者:堀田 佳男

JBpress

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