ガザ住民「このままでは餓死するしかない」…2か月半ぶり支援物資、それでも「大河の一滴」

2025年5月21日(水)6時33分 読売新聞

18日、ガザ南部ハンユニスの炊き出し所で鍋を持って殺到する住民たち=本紙通信員撮影

 【エルサレム=福島利之】イスラエル軍が大規模な地上作戦を始めたパレスチナ自治区ガザでは、3月から続いた物資の搬入停止により、食料や医薬品不足が危機的な状況となっている。ガザには19日、2か月半ぶりに支援物資を載せたトラック5台が入ったが、210万人の住民の食事は到底賄えない。住民からは「このままでは餓死するしかない」と悲痛な声が上がっている。

炊き出し所 閉鎖相次ぐ

 ガザ南部ハンユニスの病院に入院する生後6か月のシワール・アラムちゃんの体重は、2・4キロ・グラムしかない。出生時は2・5キロ・グラムで4キロ・グラムまで増えたが、慢性的な下痢で体重が減り続けている。

 乳児用のミルクが必要だが、ガザでは手に入らず、栄養を摂取できない。祖母のリームさん(46)は「孫は死の危機に直面している。物資が入ってこなければ、私たち大人も全員が餓死する」と本紙通信員に訴えた。

 1歳11か月のマヤール・アラジャンちゃんも、慢性的な下痢と重度の栄養失調で入院している。テントで暮らすほかの5人のきょうだいも食べ物がない。母親のアスマさん(32)は「爆弾で死ななくても、一家で飢えて死んでしまう」と語った。

 ムハンマド・ザクート医師によるとガザ全域で、子どもや高齢者を中心に、1日に600人が栄養失調の症状で病院に駆け込む。だが、イスラエル軍が検問所を封鎖して以来、薬や食料は届かず、病院で患者に提供できるのはビスケットくらいしかないという。ザクート医師は「幼少期の栄養失調は、身体と精神の発達に悪影響を与える。このままでは大きな惨禍を招く」と危機感をあらわにした。

 イスラエルは19日にトラック5台のガザ入りを認めたが、「緊急に必要とされる物資のうち、大河の一滴にすぎない」(国連事務次長)。国連によると、20日には約100台の搬入が認められた。

 炊き出し所の食料も底をつきつつある。

 最南部ラファから、ハンユニスの海岸沿いマワシ地区に避難するジュード・イドさん(12)は毎朝、炊き出し所に来るのが日課だ。ただ、4時間並んでも、最近は1食分に満たない量しか配給されない。イドさんは「明日は食べ物がないのではないかと恐れている。爆撃の恐怖と、明日の食料をどうやって得ようかという恐怖で、夜も眠れない」と涙を流した。

 炊き出し所を運営するサード・アブディーンさん(50)によると、マワシ地区には炊き出し所が10か所あったが、イスラエル軍による爆撃と食材不足によって閉鎖が相次ぎ、現在は2か所まで減ってしまった。アブディーンさんは「少しでも長く配れるように食事を少量にしているが、ここの食材もあと1週間しか持たない」と漏らした。

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