中国とコロンビアが急接近、巨大経済圏構想「一帯一路」に参加―中南米で米中の綱引き激化か

2025年5月29日(木)9時30分 Record China

南米コロンビアが中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に参加したのをきっかけに中南米で米中の駆け引きが活発化する兆しが出ている。写真はコロンビア。

南米コロンビアが中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に参加したのをきっかけに中南米で米中の駆け引きが活発化する兆しが出ている。



親中外交路線が鮮明に—ペトロ政権



コロンビアのペトロ大統領は5月半ばに訪中し、中国の習近平国家主席との間で「一帯一路」への正式参加に関する協力文書に署名した。習主席は同文書署名に際し、コロンビアからの輸入拡大のほか、同国への投資促進やインフラ建設支援の意向を示し、2国間関係の一層の発展を呼びかけた。



コロンビア史上初の左派政権を率いるペトロ大統領は2022年の就任直後から中国に接近、2023年には中国を公式訪問し、両国関係を戦略的パートナーシップに格上げすると宣言しており、今回の「一帯一路」参加によって親中外交路線を鮮明にした格好だ。



在中コロンビア大使館によれば、コロンビアにとって中国は米国に次ぐ第2の経済パートナーで、現在国内では110社以上の中国企業がインフラ部門を中心に進出している。コロンビアとしては「一帯一路」参加によって中国からの投資や融資が一段と増えることを期待しているのは間違いない。ペトロ大統領も「今後、2国間関係が深化するだろう」と語っている。



中南米カリブと連携し米国離れを—中国の狙い



コロンビアの「一帯一路」参加とともに注目されたのが、時を同じくして北京で開催された中国と中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)の第4回閣僚級会合。同会合にはペトロ大統領のほか、ブラジルのルラ、チリのボリッチ両大統領も出席、さらに中南米とカリブ諸国の閣僚らも顔をそろえた。ブラジルはまだ「一帯一路」に参加していないが、ルラ大統領は習主席との会談後、2国間関係の新たな協力文書に署名した。ブラジルの最大の輸出相手国は中国でもあり、両国の経済的結び付きは強い。



CELACは同地域の33 カ国すべてが参加して2011年末に発足した地域枠組み。もともとは1990年代に米国の干渉排除を目指し中南米の統合を目的に設立された「リオ・グループ」が母体だ。中国は中南米戦略の一環としてCELACとの関係を強化しており、コロンビアの「一帯一路」参加に加えブラジルなどとの連携を強め、同地域での米国離れの動きに拍車をかけたい思惑があるとみられる。



アンチ・トランプ感情利用し巻き返し—習政権



中南米の専門家の間では、コロンビアの「一帯一路」参加が米国と中南米の関係が悪化しているときに実現したことに注目すべきだとの意見が有力。トランプ米政権の不法移民対策、中南米を含む対外援助停止、関税政策などに対し、中南米諸国の間では反発が起きている。特に今年1月、米政府による不法移民のコロンビアへの強制送還を巡って両国間で対立が発生、最終的に「トランプ大統領の脅しによってコロンビアが事実上屈服させられた」(メキシコ有力紙)と多くの中南米諸国が受け止めている。



同地域でアンチ・トランプ感情が高まるのを見て習近平政権がコロンビアを取り込んだのは中国の新たな中南米戦略の一環とも指摘される。今年2月、トランプ政権はパナマ運河両端の港湾管理が香港企業によって管理されていることを問題視し、パナマ政府に圧力を加えた結果、同政府が2月、「一帯一路」からの離脱を発表したのはまだ記憶に新しい。習政権は、第2次トランプ政権が中南米から中国の影響力の排除に乗り出したと判断し、その巻き返しに出ようとしているとの見方もある。



中南米の武器市場進出も—中国



トランプ政権はコロンビアの中国急接近に神経を尖らせているようだ。コロンビアではここ数年、中国のプレゼンスが増大しているとはいえ、貿易や直接投資を含め最大の経済パートナーは依然として米国。安全保障面や麻薬問題でもコロンビアは米国から大型支援を受けている。コロンビアの「一帯一路」参加の報に米国務省高官は「長年の米・コロンビアの関係を損なう恐れがある」と事実上の警告を発した。



今回のペトロ大統領訪中に先立つ3月末、トランプ政権はノーム国土安全保障長官をコロンビアに派遣した。不法移民強制送還問題で悪化した関係を修復し、コロンビアを米国に引き留めることが目的だったのは確実。米国務省はこのほど、コロンビアで中国企業が関与するプロジェクトへの国際金融機関の融資に強く反対すると表明した。



現在、コロンビアの首都ボゴタの地下鉄建設事業に中国企業2社が関わっており、トランプ政権が同事業の推進を阻止する動きに出るのではないかとの情報もある。一方、スペインの軍事・安全保障専門メディア「インフォデフェンサ」の報道によれば、中国はコロンビア向けに人民解放軍の戦闘機「J−10C」24機の売却を提案している。J−10C はパキスタンが先のインドとの武力衝突で活躍し、注目を集めた戦闘機。コロンビア空軍は1980年代にイスラエルから購入した戦闘機が老朽化したため近代化を急いでいるといわれる。



中南米の軍事専門家はこの報道について「中国はコロンビアに戦闘機を売却することで米国が大きなシェアを持つ中南米の兵器市場への進出を企てている」と分析している。中国によるコロンビアへのJ−10C売却が実現すれば米国を一層刺激するのは確実。コロンビアなどを舞台に米中の綱引きが一段と激しさを増すことになるかもしれない。

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