中国の対日抗戦映画、批判生まれ上映見通しが不透明に―香港メディア

2024年6月2日(日)20時0分 Record China

日本軍が最も苦戦した戦いとして知られる「衡陽の戦い」を描いた映画作品「援軍明日到着」の公開が危ぶまれる状態に。ネットでの強い批判が関係するとの見方がある。写真は同作品のシーンから。

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今年は日中戦争でも極めて重要な戦いだった「衡陽の戦い」の80周年だ。衡陽市を防衛していた中国側の国軍(国民党軍)は日本軍に大打撃を与えたが、守備責任者だった方先覚将軍は最終的に投降した。この戦いを描いた映画作品の「援軍明日到着」(以下、「援軍」)は、予定されていた6月末の公開が危ぶまれる状態になった。「ネット左翼」などに批判されたことが関係しているとの見方がある。香港メディアの星島頭条などが伝えた。



衡陽の戦いは、戦闘開始が1944年6月22日で、終結が同年8月8日で、一つの都市を巡る攻防戦としては日中戦争で最長の48日間だった。



日本軍は6月19日に衡陽市に隣接する長沙市を陥落した(いずれも湖南省)。衡陽市は鉄道の重要な分岐点であり、米国の軍人で構成され対日戦に参加していた航空部隊のフライング・タイガースが拠点とする飛行場もあったため、日本軍の次の標的となった。日本側の攻撃兵力は約11万人で、中国側の守備兵力は約1万7000人だったとされる。中国側は日本軍の総攻撃を何度もはねのけて日本軍は大苦戦したが、中国側は最終的に弾薬も使い果たした。



日本軍が最終攻撃を開始したのは8月6日で、方将軍は7日に中国軍の重慶本部に「敵は今朝、北から侵入してきた。弾薬も交換品もない。私は祖国に命をささげる。さらばだ」などとする電報を打った。翌8日には方将軍がいた司令部に日本兵が突入した。方将軍は自殺を図ったが部下に制止されて捕虜になった。方将軍は「日本軍が民間人に危害を加えないこと」や「中国人負傷者を人道的に手当てすること」を条件に投降を認め、中国兵に抵抗をやめるよう命じた。方将軍はその後、中国軍の特殊部隊により救出され、重慶に移った。なお、蒋介石は8月7日に方将軍に向けて「援軍が向かっている。明日、遅滞なく貴官の陣地に到着するであろう」などとする電報を打ったが、方将軍に届くことはなかったという。




方将軍を主人公に衡陽防衛線を描いた映画「援軍」の制作プロジェクトが立ち上がったのは2019年で、中国共産党湖南省委員会宣伝部から「十四五重点映画名作プロジェクト」の一作品としても認められた。総監督を務めたのは著名な作家で、歴史学者でもある劉平和氏で、6月末の公開予定だった。同作品への投資総額は5億元(約111億円)超で、60億元(約1330億円)の興行収入を見込んでいたとされる。



しかし同作品は、「崑崙策」などの左派サイトなどで「降伏を美化した」などと攻撃されることになった。「このような人物が正面から称えられれば、われわれの価値観の最も揺るがない土台がゆるんでしまう」といった批判もあった。



「援軍」側は5月27日に、中国のSNSである微博(ウェイボー)の公式アカウントから、全ての投稿を削除し、コメント欄を閉鎖した。微博側は、「この映画に関する議論の中で個別のユーザーが投降主義とあおり立て、歴史についてのニヒリズムの騒ぎを起こした。さらに、わが国の映画検閲制度およびわが国の制度体制にまで広げて攻撃する投稿を行った。サイトとして、厳粛に処分する」と表明した。またその他にも、「援軍」に関する各方面のインターネット上の論評も削除された。



台湾メディアの中央広播電台は同件についての論説で、中国当局は国軍の戦争史を題材にした作品の上映を快く思っていないとする見方を示し、中国側の映画、テレビ、文芸界は今後、投資者、出演者を問わず、国軍の歴史を題材にすることを敬遠するようになると予想した。(翻訳・編集/如月隼人)


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