北朝鮮の収容所の実態を描いたアニメ「TRUE NORTH」

2020年11月9日(月)7時30分 デイリーNKジャパン

「北朝鮮の人権問題は、私が思っていたよりもはるかに深刻だった。2日間眠れないほど大きな衝撃を受けた。」


韓国人の父と、在日韓国人3世の母を持つ清水ハン栄治監督が、北朝鮮の人権問題に初めて触れたのは10年以上前のことだという。普段から人権問題に関心を持っていた彼は、友人から受け取った北朝鮮の政治犯収容所に関連手記を読み、その実情を知らせる映画の制作を決心した。映画「TRUE NORTH」ができたきっかけだ。


映画は、北朝鮮で「帰国事業」、韓国で「北送事業」と呼ばれる、在日朝鮮人の帰還事業から始まる。1959年12月、新潟港を出港した船に乗った238家族の975人を皮切りに、25年間で約9万3000人の在日朝鮮人らが北朝鮮に渡ったが、北朝鮮の実情が伝わるに連れ、帰国しようとする人は減っていった。


希望を胸に抱き、北朝鮮に渡った人々の中には、日本のスパイ扱いされて管理所(政治犯収容所)送りとなり、家族も連座制で処罰された。「TRUE NORTH」の主人公「ヨハン」も、父にスパイ容疑がかけられ、9歳のときに収容所に連行された。この映画は、ヨハンの視点から見た収容所の現実を描き出す。


清水監督は、最近行われた、デイリーNKとのインタビューで、「この映画がアンネの日記のように全世界の人々の心を動かし、北朝鮮の政治犯収容所を知らせるきっかけになることを願う」と述べた。


ドイツのフランクフルトで生まれ育ったが、ナチスの迫害を避けてオランダに脱出。アムステルダムの屋根裏部屋に身を隠して暮らすもついに逮捕され、ベルゲン・ベルゼン強制収容所で15歳の生涯を閉じたアンネ・フランク。彼女が記し続けた日記は、死後に出版され、ナチスの蛮行を全世界に知らしめるに大きな役割を果たした。


清水監督は、本のようなやや硬い媒体よりも、国境、年齢、人種を超越できるアニメを使って、北朝鮮の人権問題を効果的に知らせようとしている。


「アニメという形を使って、より多くの人に、北朝鮮の政治犯収容所の問題を知らせられる」と述べた清水監督は、観客がヨハンの視点を通じて、収容所での体験に胸を痛めて共感することを期待している。


清水監督は「北朝鮮が国際社会の正常な一員になろうとしているが、この映画を見た人は、数十万に及ぶ政治犯収容所の囚人の存在と安否に疑問を抱き、問題を提起することを望む」と述べた。


「TRUE NORTH」は、韓国・ソウル郊外の富川(プチョン)で先月開催された、第22回富川国際アニメーションフェスティバルで長編優秀賞を受賞された。英国のレインダンス映画祭、東京国際映画祭ではジャパンプレミアとして公開される。


映画のタイトル「TRUE NORTH」は、辞書的な意味では「真北」を指すが、コンパスが常に示す方向であることから、決して変わらない目標、重要な目標という意味も持つ。


「ヨハンが北朝鮮で経験する数多くの苦しみを通じて、自分の人生の方向と意味を見つけると意味合いをタイトルに込めた」と語った清水監督は、「これには、人権問題だけでなく、北朝鮮(NORTH)の人が、実際の(TRUE)で苦しむ話をきちんと伝えたいとの意味も込められている」と説明した。


公式ホームページによると、一般公開は来年の予定だ。


ジャパンプレミア in 東京国際映画祭


六本木ヒルズTOHOシネマズ内


①11月1日(日) 上映19:55〜/Q&A21:59〜


②11月3日(火) 上映11:00〜/Q&A12:34〜


③11月9日(月) 上映のみ14:00〜


(外部ページ:TRUE NORTH)


デイリーNKジャパン

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