セルフモニタリングの介入が要支援高齢者の身体活動改善に - 神戸大が証明

2024年2月19日(月)10時7分 マイナビニュース

神戸大学は2月16日、要支援高齢者を対象に、加速度計を用いたセルフモニタリング介入を行うことが、歩数、座位行動、軽強度活動といった身体活動を改善することを明らかにしたと発表した。
同成果は、神戸大大学院 保健学研究科の北村匡大研究員(令和健康科学大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 講師)、同・井澤和大准教授らの研究チームによるもの。詳細は、老年医学に関する全般を扱う学術誌「European Geriatric Medicine」に掲載された。
高齢者において、毎日の歩数や、座位行動(エネルギー消費量が1.5メッツ(1メット:安静座位時の酸素摂取量が3.5ml/kg/分)以下の座っていたり横になっていたりする状態の活動のこと)などの身体活動は、疾病および死亡リスクと関連することが明らかにされている。毎日適切な距離を歩くなどして身体活動を促進することは、心臓病、糖尿病、整形外科疾患、脳卒中などの疾患を予防するだけでなく、健康関連QOLや健康全般を改善するためにも推奨されており、特に要支援高齢者は、健康な高齢者よりも身体活動が低下しているため、身体活動を促進することが重要となる。
ただし身体活動の促進とはいっても、何らかの具体的な数値を確認できないと、目標を設定したり、達成感を得たりといった点においてわかりづらい。そうした中でセルフモニタリングは、目標設定・自己管理・フィードバックで構成される行動変容技法の1つであり、身体活動の促進や血糖値の調整に用いられている。実際、近年はスマートフォンアプリや歩数計などでお馴染みとなった歩数計測を含む、加速度計を用いたセルフモニタリングの身体活動への効果は、健康高齢者、脳卒中や心臓病などの入院患者、慢性疾患患者を対象としたランダム化比較試験でも有効性が報告されている。
しかし、これまで要支援高齢者を対象に身体活動に焦点を当てた効果的な介入プログラムの検証はほとんど行われていなかったとのこと。また加速度計を用いたセルフモニタリング介入が、要支援高齢者の身体活動および健康関連QOLに与える影響については明らかにされていなかった。そこで研究チームは今回、身体活動促進のためのセルフモニタリング介入が要支援高齢者の身体活動および健康関連QOLへ与える影響を、ランダム化比較試験で明らかにすることを目指したという。
今回の研究では、2022年10月〜2023年1月の期間内にデイサービスでリハビリテーションを受けた利用者106例を対象に、被検者ブラインドのランダム化比較試験が行われた。65歳以上、要支援者、歩行可能な例を対象とし、研究の参加に同意の得られない例を除外した52例を、ランダム化により介入が行われたグループ(介入群)26例、介入なしのグループ(対照群)26例に振り分けたとする。
そして介入群へは5週間のフォローアップにて、「加速度計・パンフレット・カレンダーの提供」、「身体活動の教育」、「歩数と座位行動の目標設定」、「歩数と座位行動時間についてのカレンダーへの記載」、「週に1回のフィードバック」の5項目が行われた。一方で対照群へは、「加速度計・パンフレット・カレンダーの提供」および「身体活動の教育」は行ったものの、カレンダーの記録に基づくフィードバックは行われなかった。
その後の解析は、データの得られた介入群24例と対照群23例で実施され、介入群は対照群と比較して歩数、「軽強度活動」(エネルギー消費量が1.5メッツより高く3メッツ未満の活動)の増加、座位行動の減少が示された。しかし、健康関連QOLに有意差は認められなかったという。
研究チームによると、今回の研究の新規性は、要支援高齢者において、歩数と座位行動といった身体活動のためのセルフモニタリングが、1日の歩数、軽強度活動、座位行動を改善するということを明らかにしたこととのこと。移動能力や活動性が低下している要支援高齢者にとって、歩数促進は理解しやすく、座位行動減少のために少しでも立つことは高い身体機能を必要としない行動だという。そして要支援高齢者において、加速度計を用いたセルフモニタリング介入は歩数、座位行動、軽強度活動を改善する可能性が示唆されたとする。
研究チームは今後、要支援高齢者の身体活動と健康関連QOLに対するセルフモニタリングの効果について、結果の信頼性を向上させ、一般化可能性を拡大できるよう、多施設からの参加者を含めた検証を行いたいとのこと。家事、集団スポーツ、ガーデニング、観光など、ウォーキング以外のさまざまな身体活動に焦点を当てて、健康関連QOLへの影響を調査することが重要だ。さらに、介入後数か月および数年後に参加者の追跡調査を実施し、身体活動と健康関連QOLの変化を評価し、セルフモニタリング介入の持続的な効果を検証したいと考えているとしている。

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