Intel Core Ultra投入でビジネスの現場はどう変わる? IDM 2.0戦略や5N4Y計画の進捗もプレスセミナーで聞いてきた

2024年3月27日(水)13時11分 マイナビニュース

四半期に一度の恒例セミナー。企業向PCでも生成AIの活用を
2024年3月25日、インテルは恒例のプレスセミナーを実施。鈴木社長、経営戦略室長の大野氏、技術本部 部長の安生氏の三名から現在のインテルの状況に関しての説明が行われました。説明は先の順番で行われましたがが、読者的興味を考えて逆順で紹介します。
安生氏は「最新クライアントのアップデート」ということで、まず、先月発表となった企業向けクライアント製品Core Ultra vProに関して紹介。当然ながら過去のPCに比べて生産性が向上し、新しい働き方では必須となったビデオ会議においても消費電力を削減し、新機能となるAIは格段に速度向上になったことを紹介しました。
vProならではの高いセキュリティに関しては、セキュリティソフトベンダーがインテルスレッドディテクションテクノロジーを活用するだけでなく、Windows 11と一体となったセキュリティの強化、そしてセキュリティエンジンを独立化したことを紹介。
これらの相乗効果で4年前のパソコンと比較するとより攻撃されにくくなり、セキュリティイベントも減少。これによってセキュリティチームの業務効率アップに繋がると、企業向けパソコンでのCore Ultra vProのメリットを紹介しました。
さらにCore Ultraは新しいグラフィックスを搭載しているため、AV1コーデックでのエンコード/でコードに対応する他、RTエンジンも搭載。Core UltraのNPUも活用でき、ワークステーションに求められる各社のISV認証済のグラフィックスドライバも用意しています。モバイルワークステーションにもCore Ultraが向いていると説明しました。
NPU搭載のメリットを二つの事例で紹介しました。Buffrezone社のアプリケーションはNPUを使用してフィッシングを検知でき、重要なクレデンシャル情報を外部に出す前に警告を発すると言います。AIをクラウド側で演算する場合にはタイムラグが生じるため、ローカルで利用できるのは意義があります。
Core Ultra発表時にNPUを使用してLLMが動作するという説明も従前されていましたが、これは日本語をあまり考慮していないものでした。今回はStability.ai社のJapanese Stability LM 7Bが動作することを紹介しており、パソコン本体だけで生成AIが使えるとアピール。
Stability AI JapanのJerry Chi氏が登壇し、Stability AIの紹介と共にStable Diffusion3を始めとする最新製品と、同社のベンチマークでインテルのGaudi2がNVIDIAのA100に比べて3倍以上の性能を出したことも紹介しました(関連記事)。
安生氏が紹介したJapanese Stable LM Gamma7B以外に、Japanese Stable LM 3B-4E1T、テキスト画像生成モデルのStable Diffusion XL Turboが動作することが紹介されました。画像生成がコンパクトな環境ながらローカルで行えるのはかなり興味深いものです。
さらに2年前からクリエイター向けの施策として行っている「Blue Carpet Project」の現状を紹介しました。当初賛同クリエイター8名、賛同パートナー企業39社から開始していましたが、現在は賛同クリエイター40名、賛同パートナー企業73社と成長し、高性能パソコンを使用した新しい活動も紹介されました。
発足当時から賛同されているティーアンドエスの松山氏は、NeRF技術を活用した映像・空間表現を実現。氏の説明によるとOAUの「セラヴィ-C'ent la vie-」においてはNeRFが処理しきれないノイズも作品に取り込んでいるといいます。
第1回ミラーライアーフィルムズ・フェスティバル特別制作作品として制作された短編映画『MIMI[NeRF特別映像』 でもNeRFを活用し、通常ではありえないカメラワークによって「実写なのかCGなのかわからないような映像が作れた」と松山氏はコメントしていました。
5N4Yは順調でその先も。2030年には世界二位の規模の大目標
二番手の大野氏は、先日米国であったイベント「Intel Foundry Direct Connect」を受けてIntel Foundryの展望を紹介しました。
インテルはパットゲルシンガー氏をCEOに選出してから開発にリソースを大きく注いでおり、その結果の一つが「四年間に5つのプロセスノードを開発する」と言う目標を立てたところにあります。
この宣言をした2021年7月からあと4か月で4年となりますが、すでにIntel 7/4は量産中でIntel 3は量産準備完了。そしてIntel 20A/18Aも順調に進行中で、インテルにとって勝負となるIntel 18Aに関しては設計開始準備が整ったと言います(注:外部向けの製造は実質Intel 18Aからとなりますので、ここが試金石となります)。
プロセス開発の方も高NA EUVを使用するIntel 14Aや、その改良版のIntel 14A-E、既存プロセスの改良版となるIntel 18A-P、Intel 3-E、Intel 3-PTと共に外部パートナーファウンダリーの活用(Tower Semiconductorの65nmとUMCの12nm)も紹介されました。
このようなシリコン側だけでなく、先端パッケージやエコシステムによる「ムーアの法則の前進」とプロセス以外のメモリー、インターコネクト、システムアーキテクチャー、ソフトウェアと言った継続的なシステムイノベーションによってシステム・ファウンドリーとして前進することで「2030年までに(Samsungを抜いて)世界No.2のファウンドリーを確立」することを目標としています。
ちなみにパッケージング技術も持っているのがインテルの強みであり、先日発表されたガラス基板も顧客提供するのかと尋ねたところ、おおむねYesとのこと。
すでにガラス基板の開発は一通り終わっており、量産の立ち上げの段階になっていると回答すると共に、微細化やパッケージング以外にアメリカやヨーロッパに工場があることで地政学的観点からも顧客が製造にインテルを選ぶ理由になると説明がありました。
地政学リスクに対応するための膨大な投資と日本独自の施策を紹介
説明の順番が入れ替わりますが、説明会の冒頭では鈴木社長が今年の注力分野を語りました。
まず、JEITAの資料を引用する形で日米の生成AIに対する意識の遅れを指摘しました。鈴木社長は「中小企業だと生成AIも遠い技術なのかも」と前置きしつつ、生成AIの利用に関して米国は試験利用を含めればほぼ60%以上が利用しているのに対し、日本では逆に知らないという回答が30%近くあるとし、生成AIのクレーム対応や著作権問題、セキュリティに対してのルール作りに壁があって踏み込めないのかもしれないと説明しました。
生成AIに関しては、インテルは「AI Everywhereが浸透してきた」と説明しており、AIを軸として産業が刺激を受けて成長するのは良い方向性で、課題も多いが解決する必要性があると発言しました。
現在進めているIDM 2.0戦略はパットゲルシンガーCEOの方針で、世界の半導体産業を安定化させるために進めており、すでに発表があったようにバイデン政権と85億ドルの補助金が決定されているだけでなく、オハイオ州とアリゾナ州それぞれ200億ドルの投資と膨大な投資を行っていることを紹介しました。
その膨大な投資を背景に、AI時代を見据えた世界初のシステム・ファウンドリーを指導し、2030年までに世界NO.2のファウンドリーを目指すという目標を設定。この点に関してはマイクロソフトがIntel 18Aを選択したことをトピックとして紹介しました。この辺りは大野氏が詳しく紹介しています。
ビジネスPCにもAI PCの活用ということでCore UltraにもvPro対応製品が登場。この辺りは安生氏が詳しく説明しています。
Intel 14Aに向けてASMLから高NAのEUV露光装置も(プロトタイプの「Twinscan EXE:5000」は昨年12月、量産品は3月から受領)据え付けられ、据え付け状況の動画が紹介。
日本に関しては3点を言及しました。一つ目は日本での大きな産業となっている自動車業界で、シリコンモビリティの買収や、SDVに向けたAI SoCがZeekrでの採用が決定されたこと、SEAの車両プラットフォーム・パワー・マネージメントの車両規格(J3311)を策定する委員会を設立したこと、そして車載向けのチップレットパッケージ技術の開発をimecと協業したことを紹介しました。
先端半導体の分野では日本企業との連携が欠かせず、例えばシリコン基盤、フォトレジスト、マスク・ベリクル材料、サブスレート、先進パッケージはIDM2.0実現に必須の要素と説明。インテルとしても国内サプライヤーやアカデミアとの連携を強化します。
鈴木社長が就任以来力を入れているデジタル人材教育に関しては、STEAM Lab実証研究をベースとしたDXハイスクールとSTEAM/AI教育プログラムの充実。そして自治体との連携に関して紹介。
今回は北海道教育大学付属函館中学校と三浦学苑高等学校の事例を紹介。前者は医学の探求のために遠方の専門家へのインタビューの他、臓器を3Dプリンターで作成し、後者は設計を図面だけでなく3Dプリンターで出力したとのこと。ビジネスパートナーの協力が不可欠であり、今回は特にダイワボウの名を挙げていました。
STEAM/AI教育プログラムに関しては渋谷区原宿外苑中学校の校長先生がIntel Teachをを受けた経験から教員の20名に対して受講。鈴木社長はこれからも点を線、線を面に変える活動をしたいと熱く語っていました。
自治体との連携に関しては28日に千葉市とデジタル人材育成を中心とした協定を締結すると一部予告を混ぜていました。
最後に予告として2024年3月30と31日に原宿のCafe STUDIOにてAI PCの体感が行えるイベント「AI PC Garden Powerd by インテル Core Ultraプロセッサー」が開催されます。
AI PCはすでに大手家電量販店を始めとするパソコン売り場で展示されていますが、その真価を体験するのは難しいというのが現状なので、時間があれば足を運ぶのがよろしいのではないでしょうか。

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