日本製鉄、海藻が摂取可能な状態で供給する鉄系施肥材開発‐科学技術賞を受賞

2025年4月9日(水)13時21分 マイナビニュース


日本製鉄は4月9日、「鉄鋼スラグによる多様な生態系を支える海の森創生技術の開発」において、科学技術に関する開発、理解増進などの顕著な成果を収めた者に対してその功績を讃える「令和7年度 文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)」を受賞したことを発表した。
受賞者は、日本製鉄 技術開発本部鉄鋼研究所材料信頼性研究部 課長の小杉知佳氏、スラグ事業・資源化推進部 部長代理の赤司有三氏、名古屋製鉄所資源化推進部 上席主幹の田﨑智晶氏、設備・保全技術センター土木建築技術部 主幹の篠崎晴彦氏の4人。
○取り組みの概要
海藻藻場は多様な生態系を支える重要な場であるものの、明治時代より海藻藻場は減少(磯焼け)し始め、現在も全国で進行している。なお、磯焼けの原因として、海藻の捕食動物の増加、栄養塩の減少、鉄不足などが推定されているという。
また鉄は、土壌中の鉄と腐植酸などが結合し、河川を通じて沿岸域へ供給されると考えられており、コンブ類のライフサイクルで、鉄が成長と成熟に必須であることが実験的に示されている。
従来の磯焼け対策は、魚類などの捕食動物の駆除、海藻の移植、また森・川・海の連関に着目したものであるものの、いずれも経験値に基づいた対策が多く、広大な沿岸環境に対する効果は限定的という課題があったという。
このような背景から、日本製鉄は海中で直ちに酸化される鉄を、海藻が摂取可能な状態で供給する鉄系施肥材を開発し、鉄供給源からの鉄の酸化を抑制するため、施肥材内部を低い酸素濃度に維持し、かつ腐植物質を近接配置することにより、安定的な鉄の供給を実現した。
また、鉄系施肥材による海藻藻場の創出技術の効果検証として、沿岸域で困難な水質の連続データを取得できる、大型水槽システムを開発し、確度の高い海藻藻場の造成および幅広いエリアでの創出を実現したという。
○開発の成果
同社は2004年から北海道増毛町で鉄系施肥材による海藻藻場の造成を開始し、2014年には同町別苅で45トンを施工。2022年までに3.6ヘクタールの再生と1.8倍のウニ漁獲高の向上を実証した。
この取り組み事例を参考に、2023年時点で全国56カ所に展開しており、造成した海藻藻場では、海藻などにより貯留されるCO2量、ブルーカーボン量を評価し、2022、2023年度に計82.8t-CO2のジャパンブルーエコノミー技術研究組合認証のJブルークレジットを取得している。

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