佐野正弘のケータイ業界情報局 第149回 iPhone 16eに続き「Pixel 9a」も、スマホの値上げは今後も続く?
2025年4月9日(水)11時0分 マイナビニュース
2025年4月9日、グーグルの「Pixel」シリーズの新しいスマートフォン「Pixel 9a」が日本で発表されました。しかし、その販売価格は79,900円と、前機種の「Pixel 8a」より7,000円以上も値上がりしてしまっています。そこには長期化する円安が大きく影響しているのですが、Pixelシリーズ、ひいてはスマートフォンの値段は今後もまだまだ上がり続けるのでしょうか。
Pixel 9aは7,000円超の値上げに
円安を主体としたインフレが進む昨今。2025年も4月に入り、さまざまなモノの値段が上がったことが話題となっていますが、スマートフォンもその例外ではありません。
なかでもここ最近値上がりが著しいのが、従来であれば「低価格モデル」に位置付けられていたスマートフォンです。その代表格となるのが、アップルが2025年2月に発表した「iPhone 16e」で、「iPhone SE」シリーズの後継と見られていたことから安値での販売が期待されていたのですが、日本での価格は10万円近くになったことで失望の声が相次ぎました。
そしてまた、人気スマートフォンの低価格モデルが大幅に値上がりする事例が現れてしまいました。それは、日本では2025年4月9日に発表されたグーグルの「Pixel 9a」です。
グーグルのPixelシリーズの中でも「a」が付くモデルは、上位モデルと同じチップセットを搭載しながら、ほかの機能や装備を引き下げることで低価格で販売するモデルとして知られています。Pixelシリーズは日本で特に人気が高いことから、aモデルの最新機種となるPixel 9aには価格面で大きな期待がかけられていました。
ですが、発表されたGoogleストアでの販売価格を見ると、最も安いストレージ128GBのモデルで79,900円と、ほぼ8万円というべき価格になっています。1つ前の機種となる「Pixel 8a」は、発売当初の価格が72,600円でストレージが128GBであったことを考えると、7,300円も値段が上がったことになります。
実は、2023年発売の「Pixel 7a」以降、Pixelシリーズのaモデルは米国での販売価格が税抜きで499ドルから変わっていません。それにもかかわらず、日本では著しく値上がりが進んでおり、Pixel 7aの発売当初の価格は62,700円だったのですが、そこからPixel 8a、そしてPixel 9aを経て17,200円も上がってしまっているのです。
その理由は無論、円安です。グーグルは日本でのシェア拡大のためか、円安が急速に進む状況にあっても、しばらくはあえて以前の為替レートを反映して価格を設定していました。実際、Pixel 7aの日本での販売価格から為替レートを計算してみると、1ドルあたりおよそ114円と、円安が進む前の水準で計算がなされていたことが分かります。
ですが、円安の長期化にさすがのグーグルも耐えられなくなり、その後徐々に円安の為替レートを反映させるようになりました。実際、Pixel 8aの販売当初の価格は1ドルあたり約132円、そしてPixel 9aでは約146円と、年を追うごとに実際の為替レートに近づけていることが分かります。
これ以上の値上げの可能性は低いとみられるが……
それゆえ、Pixelシリーズの急速な値上がりは、グーグルが円安の為替レートを反映させるのが遅かったことが影響したといえ、現在の価格は為替レートを考慮すれば適正な水準ということもできるわけです。
しかも日本では、競合のアップルがいち早く最新の為替レートを反映させた値上げを推し進めており、Pixel 9aの競合となり得るiPhone 16eも、計算してみると1ドルあたり約151円というレートで価格設定していることが分かります。それゆえグーグルも、8万円を切るのであればiPhone 16eに十分対抗できると判断したからこそ、Pixel 9aを一層値上げするという判断に至ったといえるでしょう。
そこで気になるのは、PixelやiPhoneをはじめとしたスマートフォンは、今後も値上げが進むのか?ということになります。仮に、ここ最近続いている1ドルあたり150円前後というレートが維持されるのであれば、これ以上大幅に値上げする可能性は低いというのが筆者の見方です。
その理由は、円安の長期化によってすでに多くのスマートフォンメーカーが、最近の為替レートを反映させた価格を設定しているため。実は、すでに販売している上位モデル「Pixel 9」も1ドルあたり約146円と、Pixel 9aに近い為替レートで計算がなされており、すでにグーグルが長期化する円安に合わせた水準で価格設定をしている様子が見て取れます。
メーカー側の視点に立つと、値段が上がれば販売数が減ることから、本来であれば値上げはしたくないもの。為替相場が大きく変わらないならば不用意な値上げは避けたいだけに、現在の水準以上にスマートフォンの価格が上がる可能性は、少なくとも現時点では低いのではないかと考えられます。
ただ、もちろん為替、そして国際情勢が大きく変わるとなれば話は別です。ここ最近では、米国のドナルド・トランプ大統領が相互関税を導入すると打ち出したことを受け、為替相場も円高が進んでいるようですが、その状況が長期化して大幅な円高が進むとなれば、各社のスマートフォンの価格も見直しがなされて大きく下がる可能性があるでしょう。
その一方で、各国の関税強化により部材調達コストが増加し、それがスマートフォンの価格を押し上げるという見方もあるようです。現在は国際情勢が非常に不安定な状況にあるだけに、為替をはじめとしたさまざまな要因でスマートフォンの価格が大きく変わり、消費者が大きく振り回される可能性があることは覚悟しておいた方がよさそうです。
佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら