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ホワイトボードに付箋、超アナログ業務のストレスを「kintone」で解消した神戸の家具工房

2025年4月21日(月)9時0分 マイナビニュース


兵庫県神戸市三宮の近くに小さな工房を構え、店舗向けを中心にオーダーメイド家具を製作しているアートワークスは、紙の書類やホワイトボードによる伝達が中心の“SUPERアナログ会社”だった。
同社がアナログな会社から脱却できたのは、ノーコード開発ツール「kintone(キントーン)」の存在があったからだ。kintoneを使って2年で業務の効率化に成功した。この改革の中心にいたのは、2022年4月に入社したばかりの営業設計部・宗政伊織氏だった。
同社は一体どのように業務改革を進めたのか。宗政氏に話を聞いた。
案件管理はホワイトボードと付箋…
アートワークスはオーダーメイドの家具工房で、社員数6人の小さな会社だ。うち4人は職人で、宗政氏が所属する営業設計部は、先輩と2人体制で依頼主との打ち合わせから図面の作成までを行う。職人が出来上がった図面に従って木材を加工し、組み立てて納品する。これが一連の業務の流れだ。技術には定評があり、G7広島サミットの会議で使われた大きなテーブルもアートワークスが作ったという。
宗政氏は建築系高専を卒業後、2022年4月に新卒で同社に入社した。モノづくりが好きでアートワークスへの入社を決めたという同氏は、入社当時のことをこう振り返る。
「案件情報や図面はすべて紙とファイルで管理するような『SUPERアナログ会社』でした。中身を見ないとどの案件のものかわからないため、探すのが本当に大変でした。お客様はリピーターが多いのですが『前にお願いした時の感じで……』と言われても、パッとその情報が出せないのは不便でした。正直、いま職人たちが何の家具を作っているのかも即答できない状態だったのです」(宗政氏)
職人も自分が担当する案件以外のファイルを見ないため、他の職人がいまどんな家具を作っているのかを把握していなかった。
“超アナログな業務”ぶりはこれにとどまらず、案件の進捗状況をホワイトボードで管理していた。案件ごとに付箋は1枚で、受注日や依頼主の名前、そして「棚」「テーブル」といった製作物の種類を書く。ホワイトボードには「製作中」「納品待ち」「納品済」という3つの欄を設け、進捗に合わせて付箋を移動していたという。
こういったアナログな運用に職人たちもストレスを感じていた。「見積りや図面が確定し、お客様からの入金が確認できた後に、職人に図面を共有していた。『こんな案件がいつ頃発生しそうだ』という情報が共有されなかったため、職人にとってはいきなりポンと案件が降ってくる状況でした」(宗政氏)
kintoneアプリに見向きもしない職人、どう浸透させた?
この現状に課題を感じた代表取締役の大段奈保子氏が、サイボウズが提供するkintoneの導入に踏み切った。しかし、同社がシステムを導入するのは初めてだった。いきなり社員だけでアプリを構築するのは容易ではなかったため、kintoneの構築と運用を継続的にサポートしてくれる「伴走サービス」を利用した。
「伴走パートナーに月1回の研修を受けながらkintone導入を進めました。最初の6回は基本研修で、kintoneの基本機能を学んだうえで業務課題を洗い出し、『こうしたい』という要望を話し合いながら、案件管理アプリの外型を作っていきました」(宗政氏)
最初に作ったのが、紙やホワイトボードの管理から脱却するための「案件管理アプリ」だった。各案件の情報をアプリに集約し、進捗も一覧で分かるようにした。
しかし、職人メンバーはまったく見向きもしてくれなかったという。「初めはアプリを全く使ってくれなくて……。スマホからkintoneを見るフローにしたのですが、“アナログな人”ばかりの職人は、仕事中にスマホを触りませんでした」(宗政氏)
そこで宗政氏は、職人の作業場に画面の大きなタブレットを持って行き、アプリ画面を見せながらヒアリングし、項目に色をつけたりタブを切り替えで見やすくしたりするなど、その場でアプリの改善を重ねていった。
また、「kintoneは便利なものなんだ」という認識をすり込んでいく努力もした。kintoneを使うことで、商談中の案件の状況や、職人ごとの担当状況がひと目でわかる。そういった認識を週1回のミーティングで伝えた。
「職人から案件に関することを聞かれるたびに『kintoneを見てください』と伝えました。そういったことを繰り返しているうちに、職人たちは段々とkintoneを使ってくれるようになりました」と、宗政氏は振り返る。
こだわりは「見やすさ」、職人の声から生まれたアプリも
さらに宗政氏は、職人がkintoneにもっと慣れ親しめるよう「タイムカードアプリ」を作った。
「以前の出退勤管理は、機械にいれて『カシャン』と記入するタイムカードの情報を、社長がExcelに転記するという超アナログな方法で運用されていました。そこで、日報とタイムカードを組み合わせたアプリを作り、kintoneと職人の距離を近づけました。毎日kintoneを使う習慣をつけてもらうことで、打刻漏れがなくなり、集計も楽になりました」(宗政氏)
タイムカードアプリでこだわったことは「思わず使いたくなるような遊び心」だという。文字のフォントや色を使い分け、アプリ全体の“見やすさ”を重視した。
また、タイムカードアプリで「退勤」を選択すると、「お疲れ様でした!」という文字とともに“癒される動物の写真”が表示される仕様に。ネコやゾウ、フクロウなど、職人たちが好きだという動物を日替わりでランダムに表示されるようにした。「ある職人は『動物を見るためにタイムカードアプリを使っている』と言っていました(笑)」(宗政氏)
職人の声から生まれたアプリもある。職人が扱う材料を発注できるアプリだ。
「今までは図面を確認した職人が、木の端くれにマジックで『この板を何枚注文する』とメモして、私たち営業設計部に共有してくれていました。1階にいる職人がわざわざ2階まで木の端くれを持ってくる……。今思い返すとと本当に非効率なことをしていて、kintoneに慣れてきた職人さんに『これって、kintoneで発注できへんの?』と言われてハッとしました」と、宗政氏は振り返る。
材料発注アプリは、職人が材木や金物、段ボールなど発注する材料を選択し、分類や名称、サイズ、品番、注文数などを記入する。誰が何をどれくらい発注していて、いまどのようなステータスなのかが一目で分かるようになっている。「今となっては、職人もめちゃめちゃkintoneを使っています」(宗政氏)
さらに、休暇・代休申請アプリも作った。周りに気がねなく気軽に申請でき、また1時間単位で申請できるようにしたため、かなり好評だったという。有給休暇取得率は24%から68%にまで伸びた。
作業時間を2日→30分に短縮 「データ分析にも挑戦」
kintoneを導入してから約3年間で、作ったアプリは100個を超え、アナログだった業務が次々に効率化されていった。業務時間を大幅に削減できた事例もある。
「今までは社長以外は見積りを出せませんでした。完全オーダーメイドの家具は値段が一律ではないので、独自の計算式によって毎回異なる見積りを算出していたからです。ですが、kintoneアプリにその計算式を登録することで、誰でも算出できるようになりました。見積書に関する問い合わせの返信に2日間かかることもありましたが、今では30分程度で返信できるようになりました」(宗政氏)
宗政氏はkintoneの魅力についてこう語る。
「今のアプリが使いにくいなと感じたら、すぐに修正できる点が私たちの会社に合っています。実際にアプリを使う職人の声を、いち早く機能として反映できるようになりました。試して、職人の声を拾って、修正する。これをスムーズに繰り返せる点がkintoneの魅力だと思います」(宗政氏)
宗政氏は今後、kintoneアプリ上に蓄積されているデータをさらに有効活用していきたいという。
「見積りの精度をさらに向上させるようなデータ分析を行い、案件が増えてもスムーズに対応できるようにしたいです。また、SNS運用も担当しているのですが、お客様が当社を知った認知経路のデータが溜まってきています。これをkintoneの案件管理データと組み合わせて分析し、今後の集客につなげていきたいと考えています」(宗政氏)

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