AI機能の提供を開始したkintone、何ができるようになるのか?
2025年5月9日(金)11時0分 マイナビニュース
さまざまなサービスやソフトウェアでAI機能の提供が進んでいるが、小誌でもお伝えしたように、サイボウズが提供するノーコード・ローコードツール「kintone(キントーン)」でも開発中のAI機能をβ版として無償で試供できる「kintone AIラボ」がリリースされた。
サイボウズはkintoneについてどのようなAI戦略を掲げており、kintoneはAIによってどう変わるのだろうか。サイボウズでAI推進を担当しているマーケティング本部 マーケティング戦略部 副部長 兼 事業戦略室 海外事業の山田明日香氏に聞いた。
AIで「データの活用」「アプリの作成・運用」を支援
まずは、kintoneにおけるAI戦略を押さえておきたい。山田氏はkintoneのAI戦略について、次のように語った。
「kintoneは業務改善プラットフォームとして使っていただくことを目指しています。AIをどう使えばお客様が目標を達成できるかを考える中で、AIによってお客様が社内のデータを活用することを後押ししています」
具体的に、非IT人材による現場主体のデジタル活用を進めるため、AIによって「データの活用」「アプリの作成・運用」を支援することに注力している。
データの活用支援としては「データの検索・入力・集計作業を効率化すること」、また、アプリの作成・運用支援としては「アプリの作成やアプリの管理を簡易化すること」に取り組む。
「私たちは中小企業や初めてAIを導入する企業に対し、安心して使えるAI機能を提供し、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を後押しすることを目指しています。サイボウズはAIを特別視せず、kintoneの使い慣れたUIでAIを自然に使える環境を提供することで、ユーザーの安心感を高めています」と、山田氏はkintoneで提供するAIに対する狙いを語る。
これらを具現化するAI機能を提供する場が「kintone AIラボ」となる。
「kintone AIラボ」とは?
「kintone AIラボ」は2024年11月、年次イベント「Cybozu Days(サイボウズデイズ) 2024」で、代表取締役社長の青野慶久氏が発表した。
「kintone AIラボ」は開発中のAI機能が集まるスペースとして位置づけられている。ユーザーがベータ版の機能を利用してみることができ、AI機能を先行して提供しているスペースとなっている。
「Cybozu Days 2024」では、初のAI機能として「kintone AIアシスタント(仮称)」が発表された。同機能は「kintoneの検索機能」と「検索拡張技術(RAG)」を組み合わせたもの。ユーザーが同機能を用いて自然言語で検索すると、複数のアプリ内のデータを横断的に検索し、生成AIが回答を生成してくれる。
当初、「kintone AIアシスタント(仮称)」は数十社のユーザーに限定して提供されていた。山田氏は、「kintone AIアシスタント(仮称)」の利用状況について、次のように語る。
「kintoneに蓄積してきたデータを活用したいというニーズから、多くのお客様から申し込みをいただきました。AIを使ってみたいけど使っていなかったというお客様から、『kintone AIアシスタント(仮称)を使ってみると蓄積しているデータが見つけやすくなった。その結果、データを登録しようというモチベーションが高まっている』といった声をいただいています」
提供が開始された「検索AI」と「アプリ作成AI」
「kintone AIアシスタント(仮称)」は今回、「検索AI」に名称を変更して一般提供が開始された。同機能はkintoneのチャット画面に質問を入力するだけで、AIが複数のアプリ内のデータを横断的に検索したうえで回答を生成する。検索結果にアクセス権が反映されるため、権限のないユーザーに非公開情報が公開されることはない。
もう1つ提供が開始されたAI機能が「アプリ作成AI」だ。こちらはAIとのチャットを通じてアプリを生成する機能で、生成AIがアプリの要件を理解し、適切なフィールドを提案・生成してくれる。
小誌でもお伝えしているが、プログラミング経験ゼロの編集部員がkintoneで編集に役立つアプリをサクサク作っているように、AIを使わなくてもkintoneではアプリを簡単に作成できる。そこに「アプリ作成AI」を使うことで、もっとアプリ開発がラクになるのだという。
山田氏は、「初めてアプリを作成する場合、『どのフィールドを使うべきか』『どういう項目を管理すればいいのか』と基本的なことで悩まれることがあります。アプリ作成AIを使えば、自然言語で質問することでAIから回答を得て、AIが必要な設定を行ってアプリを作ってくれます」と話す。
システムに詳しくない人からすると、「フィールド」「管理」といった概念はわかりづらいだろう。そうしたつまずきやすい部分をAIがサポートしてくれるというわけだ。
実際、「アプリ作成AI」を利用する様子を見せていただいたのだが、作りたいアプリを説明すると、AIが必要なフィールドを示し、それらを組み込んだ形でアプリを作ってくれ、「こんなに簡単にアプリができてしまうなんて!」と驚いてしまった。
グローバル戦略を支えるAI機能
こうしたkintoneのAI機能は、AI専門のエキスパートチームが新技術を短期間で試し、開発チームと連携して機能にするという体制の下、開発されている。同社にはAIを活用している部署がたくさんあるので、新しい情報をキャッチアップしたら迅速に共有されているとのこと。
山田氏は「AIはスピードが命です。その点、サイボウズは情報共有に壁がないので、AIの情報をいち早くキャッチしてスピーディーな開発が可能です。また、サイボウズは順調に成長していますし、組織も動きやすいので、新しいことに容易に挑戦できる環境ができています」と話す。
山田氏に今後の展望について聞いたところ、「今後も『データの活用支援』と『アプリの作成・運用支援』という2つのテーマに沿って、新しいAI機能を開発・提供していきます」という答えが返ってきた。
「データ活用」においては、「入力支援機能でデータ登録をさらに簡単にすること」「データ理解を支援するような機能の開発」に取り組む。また、「アプリの作成・運用」においては「プロセス管理や計算式など、より複雑な設定のサポート」「多数のアプリを利用しているユーザー向けの運用支援」に取り組む。
先日、青野社長が小誌の取材でも語っていたが、サイボウズはグローバル展開を推し進めている。山田氏は「日本発のSaaSとしてグローバルで成功するために、AI機能の充実も重要な戦略の一つとなっています」と、AIに賭ける意気込みを語っていた。