参院本会議での可決により改正NTT法が成立、キャリア各社がコメントを発表
2025年5月21日(水)19時15分 マイナビニュース
5月21日に開かれた参議院本会議で、電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案(改正NTT法)が可決され、同法が成立の運びとなった。これを受け、日本電信電話(NTT)を含む通信各社がコメントを発表している。
○NTTは将来の再検討へ含みを残したコメント
NTT法改正議論が進む中で同法の廃止を含めた規制の緩和に前向きな姿勢を示してきたNTTは、「本改正は、現在の市場環境や技術革新等への対応として、前向きに評価できる内容」としながらも、「情報通信における各種法制度等については、市場の変化や技術の進展に伴い、継続的に見直していくことが必要であり、法律の施行後3年を目途に改めて検討を行う際には、当社としても引き続き、積極的に議論に参加・協力していく考え」と将来の再検討への含みを残したコメントを発表。
○KDDI/ソフトバンク/楽天モバイルは今後の議論についても慎重な対応を求める
これに対してNTT法の存続・規制緩和への慎重姿勢で一致してきたKDDI/ソフトバンク/楽天モバイルは連名で、「NTTが果たすべき公共的役割の重要性が担保されたことに賛同します」「今後も時代に即した『日本電信電話株式会社等に関する法律』(以下 NTT法)の必要な見直しや強化などを適切に行いながら、NTT法を維持することが必要不可欠であると考えます」と、将来的にもNTT法を維持すべきであるとのコメントを発表。加えて、グループの一体化を進めるNTTの方針への注意を喚起し、「NTTグループ一体化が進むと、その事業運営によって公正な競争環境が阻害され、(中略)わが国の電気通信の健全な発達および国民の利便の確保が損なわれるおそれがあります」「NTTのあり方について、適時適切に検証を行い、必要な措置を講じるなど、慎重な政策議論が行われることを改めて強く要望します」と今後の議論についても慎重な対応を求めている。
○NTTのコメント全文
「電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律」の成立を受けた当社のコメント
本日、「電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律」が成立しましたが、本改正は、現在の市場環境や技術革新等への対応として、前向きに評価できる内容と捉えています。
具体的には、ユニバーサルサービス責務の最終保障提供責務への移行、ユニバーサルサービスにおけるモバイル網の活用、NTT東西の業務範囲に関する規制緩和など、審議会等において当社が提案・要望してきた事項を織り込んでいただいたものと認識しております。
一方で、線路敷設基盤の譲渡等に関する認可制の導入、累次の公正競争条件の一部法定化等については、当社および当社グループの機動的・効率的な経営を阻害しないよう、必要最低限の規制としていただきたいと考えます。
当社は、引き続き研究開発に積極的に取り組むとともに、今後、国内外の様々なパートナーの皆さまと機動的な連携も図りつつ、研究開発のさらなる推進と、IOWNやNTT版LLM「tsuzumi」等の社会実装を進め、国内の産業基盤の強化、国際競争力の強化等に貢献してまいります。
NTT東西は、引き続き、電気通信事業法等の法令・ルールに則り、電気通信市場における公正競争を遵守し、ネットワークや線路敷設基盤を他事業者に対して公平に提供していくとともに、ユニバーサルサービスの提供や、ネットワーク基盤の高度化・強靭化の推進、様々なサービスの提供を通じた地域産業の活性化や地方創生に貢献してまいります。
なお、情報通信における各種法制度等については、市場の変化や技術の進展に伴い、継続的に見直していくことが必要であり、法律の施行後3年を目途に改めて検討を行う際には、当社としても引き続き、積極的に議論に参加・協力していく考えです。
○KDDI/ソフトバンク/楽天モバイルのコメント全文
5月21日に成立した改正NTT法について
KDDI株式会社、ソフトバンク株式会社および楽天モバイル株式会社は、2025年5月21日に成立した「電気通信事業法及び日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律」において、日本電信電話株式会社(以下 NTT)が保有する、他事業者が構築し得ない、電柱・管路・とう道・局舎・土地などの線路敷設基盤とその上に設置された光ファイバーなどの電気通信設備(以下 特別な資産)や、NTTが果たすべき公共的役割の重要性が担保されたことに賛同します。
将来にわたり、NTTの特別な資産の維持・保護、国民生活や地域を守るユニバーサルサービスの確保、利用者利便を高める公正な競争の促進および安全保障などの確保に向けて、今後も時代に即した「日本電信電話株式会社等に関する法律」(以下 NTT法)の必要な見直しや強化などを適切に行いながら、NTT法を維持することが必要不可欠であると考えます。
一方、これまでのNTTによる株式会社NTTドコモの完全子会社化や今般の株式会社NTTデータグループの完全子会社化、さらに今後も組織または事業の統合・譲渡などのNTTグループ一体化が進むと、その事業運営によって公正な競争環境が阻害され、効率性とグループ利益を優先する結果、国民生活や地域を守る全国のユニバーサルサービスを含めたわが国の電気通信の健全な発達および国民の利便の確保が損なわれるおそれがあります。
総務省においては、NTTのあり方について、適時適切に検証を行い、必要な措置を講じるなど、慎重な政策議論が行われることを改めて強く要望します。