企業の加齢によりイノベーション力が低下 メカニズムを解明 早大ら
2025年5月26日(月)16時26分 財経新聞
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過去と現在の研究開発ポートフォリオ(企業が取り組む研究開発プロジェクトの組み合わせ)の類似度を比較したところ、研究開発ポートフォリオが硬直化すると、発明の量は増えるが、研究の質は低下することが明らかになったと言う。
研究グループは、イノベーション力を維持するためには、経営資源を柔軟に組み替え研究開発ポートフォリオを硬直化させないことが重要であると、指摘している。
■アメリカの企業の研究開発ポートフォリオを比較
これまでも企業が高齢化すると、収益性が低下したり、イノベーション力が低下したりすることは広く観察されてきた。そしてその原因としては、企業が加齢により硬直化することが挙げられてきた。
そこで研究グループは、アメリカの企業の現在と過去の研究開発ポートフォリオを比較し、コサイン類似と呼ばれる手法を使って、類似度を測定した。
コサイン類似とは、ものごとをベクトル化し、そのベクトルとベクトルの角度によって、類似度を測定する手法を言う。ベクトルが同じ方向を向いているほど類似度が高くなる。
測定の結果、研究開発ポートフォリオが硬直化している企業では、発明の量は増えるものの、発明の品質は低下することがわかった。
■アメリカの企業よりも加齢により硬直化しやすい日本の企業
研究グループによれば、日本の企業はアメリカの企業よりも加齢により硬直化しやすいと言う。たとえば、30代の日本企業と90代のアメリカ企業で同程度に硬直化していると言う。
さらに日本では、企業の新陳代謝が少なく、企業の高齢化か進んでいることも指摘されている。
このような状況において、研究グループは、高齢化した企業がイノベーション力を維持していくためには、戦略的に経営資源を組み替え企業の柔軟性を維持していくことが重要であると指摘している。
研究グループは今後、さらに研究を進め、加齢しても硬直化しない企業とはどのような企業であるのかを明らかにしていきたいとしている。