「それで食糧はどこだ!?」プーチン迎えた北朝鮮国民の冷めた目線
ロシアのプーチン大統領は19日、24年ぶりに北朝鮮を訪問して金正恩総書記と首脳会談を行い、両国の軍事協力を強化する新条約に調印した。しかし、北朝鮮国民の関心は軍事協力ではない。ロシアからの援助による生活の向上だ。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、道内でプーチン訪問は概ね好意的に受け止められたと伝えた。中でも50代以上の人からはこのような反応が聞かれたという。
「旧ソ連時代が再び来るのではないか」
これは決して悪い意味ではない。朝鮮戦争後の北朝鮮は、旧ソ連から大々的な援助を受けて、経済の再建を成功させた。首都・平壌の金日成広場周辺に建つ住宅も、実は戦後に旧ソ連の援助で建てられたものだ。東欧諸国を含めた旧共産圏からの援助のおかげで、北朝鮮経済は1970年代まで韓国経済を上回っていた。そんな「古き良き時代」の再来への期待が込められたリアクションなのだ。
深刻な食糧難に苦しめられている今の北朝鮮だが、人々は、ロシアから食糧援助を取り付けることで、食糧事情が改善するのではないかと見ているのだ。
清津(チョンジン)在住の60代の人は次のように語った。
「旧ソ連時代には衣食の心配をせず良い暮らしをしていた。ところが、旧ソ連が崩壊してから、わが国(北朝鮮)も坂道を下ってしまった。今のロシアがいくら苦しいといっても、わが国よりはいい暮らしをしている国なのだから、小麦や小麦粉など食べ物を多く支援してくれて、生活が少しでも楽になればいい」
情報筋によると、5〜60代以上の世代は、1980年代以前は旧ソ連から、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」のころは、韓国や国連からの食糧援助で入ってきた食糧が市場に出回るようになり、生き抜くことができたことを覚えている。それが期待につながっているというのだ。
ただ、一部では、軍事分野での協力を強化するにとどまるのではないかという懸念の声もあがっている。
「ロシアは今、戦争中で苦しいから、わが国に近づいたのではないか。だから生活には大して助けにならないだろう。軍事分野だけで協力して、人民生活向上への希望は水の泡になる可能性が高い」
「ロシアの大統領訪問でどうなるかわからないが、問題は食糧だ。住民生活に変化がなければ失望は大きくなるだろう」
(市民)
情報が少ない北朝鮮では、噂が噂を呼び、期待が過剰に高まることがある。それが裏切られた時には大きな失望となって返ってくるのだ。
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