高橋裕紀が引退を表明「最前線にいられるうちにやめたかった」2024年からは若手育成をメインにHonda Asia-Dream Racingに帯同
長年、国内外を舞台にトップライダーとして活躍してきた高橋裕紀が2023年12月31日・大晦日にレーシングライダーを引退することを表明した。来シーズンは、これまで行っていたサーキットアドバイザーなど後進の育成などに力を入れ、新たに玉田誠監督率いるHonda Asia-Dream Racing with SHOWAのアシスタントマネージャーとしてアジアロードレース選手権(ARRC)と鈴鹿8耐に帯同する予定だ。
ここ数年は、引退について考えていたが、2023年シーズンを終えた時点で決断した。「結果を残せなかったことや、自分が走ることで若手のためになる役目も果たせたと思いますし、チームに(高橋)巧が入って来てくれたことも大きかったですね。最前線にいられるうちに、怪我も数多くしてきたので、五体満足でいられるうちにやめたいとも思っていました」
裕紀は、7歳でポケバイを始め頭角を現すと、ミニバイクへの昇格と同時に桶川塾に入り、青山兄弟などと共に切磋琢磨していった。2000年に全日本ロードGP125にデビュー。第9戦SUGOで初優勝を飾り、2001年にはランキング2位となる。2002年にはGP250クラスにスイッチし、第8戦TI英田(現・岡山国際サーキット)でクラス初優勝を飾る。また、ワイルドカードで初出場したパシフィックグランプリでは、250ccクラスで3位に入り表彰台に上がっている。
2004年に全日本ロードGP250チャンピオンを獲得し、2005年からロードレース世界選手権250ccクラスにフル参戦を開始。2006年第5戦フランスで初優勝を達成。第10戦ドイツも勝ち、シーズン2勝を挙げる。しかし、この年の最終戦バレンシア初日のフリー走行で転倒し、右足の大腿骨、頸骨、腓骨を骨折する大怪我を負ってしまう。この怪我の影響で右足裏の感覚は今も戻っておらず、リヤブレーキの操作に苦労した。
「ペダルにいつ(足裏が)あたっているか分からないので、プレッシャーセンサーをつけてもらいメーター横に表示されるようにしてもらっていました。ミニバイクでの走り込みは感覚を身体で覚えさせる意味もありました」
グランプリ時代はイタリアで、全日本ロードに戻って来てからはモリワキの駐車場で“朝練”としてミニバイクで走り込んでいたのは、その対策の一環でもあった。リヤブレーキの高さの調節は特にシビアに行っていた。
2009年にはMotoGPクラスに参戦するが、チームの資金難からシーズン途中でシートを奪われたこともあった。その後、2010年から始まったMoto2クラスで活躍。2013年に世界選手権への参戦を終えた時点で引退を考えたが、モリワキの誘いもあり全日本ロードに復帰し、J-GP2クラスに参戦。これを機に、鈴鹿に居を構え現在に至っている。
全日本ロードに復帰してからは、J-GP2クラスで2度チャンピオンを獲得。2020年に日本郵便Honda Dream TPに移籍しST1000クラス初代チャンピオン。F.C.C. TSR Honda FRANCEからFIM世界耐久選手権(EWC)にフル参戦も経験。また、2015年にはアジアロードレース選手権SS600クラスでもチャンピオンを獲得し、2019年にはスーパーバイク世界選手権(WorldSBK)にもスポット参戦した。
「桶川塾という存在は大きかったですね。エンデュランス、アイファクトリー、ホンダ、モリワキ、TSR、そしてT.Proと、それぞれお世話になりましたし、その時々で勉強させてもらいました。いろいろなライダーと走りましたが、トモくん(小山知良)の存在は大きかったですね。ポケバイから全日本、世界デビューも一緒でしたし、最後はチームメイトでしたから。モリワキで一緒だった清成くん(清成龍一)も最強のチームメイトでしたし、いい刺激を受けました」
1984年7月12日生まれの39歳。7歳でポケバイに乗ってから足かけ33年間もの時間を走り続けてきた。全日本チャンピオンを4回、世界選手権では、250ccで2勝、Moto2で1勝、世界耐久選手権で1勝を挙げた。うれしいことやつらいこと、そして出会いと別れ……、その道のりには本当に多くのことがあった。
「2024年からは、今までの経験を活かして将来の世界チャンピオンの育成に携われるように頑張りたいと思っています。今まで関わってきてくださった全ての皆様に感謝申し上げます。本当にありがとうございました」
2024年、新たなスタートを切る裕紀。レーシングライダーは引退するが、サーキットでその姿を見ることは多くなりそうだ。
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