バルサ伝統の4-3-3は復活するのか…鍵を握るのは今夏加入の”切り込み隊長”
サッカーキング2018年8月6日(月)17時15分
「4-3-3への回帰」の鍵を握る男が、今夏チームに加入した [写真]=Joe Scarnici/International Champions Cup/Getty Images
クラブには、それぞれ積み重ねた歴史や特色を端的に示すアイコンがある。レアル・マドリードであれば『キンタ・デル・ブイトレ』『ギャラクティコス』、マンチェスターユナイテッドであれば『レッドデビルズ』『マット・バスビー』、インテル・ミラノであれば『国際的』『ジュゼッペ・メアッツァ』といった具合だ。
では、バルサというクラブのアイコンは何だろうか。『カタルーニャ』『ヨハン・クライフ』『ティキタカ』『カンテラ』――。おそらくどれもが正解であり、他にも正解はたくさんあるだろう。
『4-3-3』システムも、長らくバルサのアイコンの一つとなってきた。クライフが指揮を執っていたドリームチーム時代は3-4-3が主流だったが、その後、ルイ・ファン・ハール、カルロス・レシャック、フランク・ライカールトらは4-3-3を採用。なかでも、ウインガーがピッチの幅を目一杯使うスタイルを志向するようになったのは、ファン・ハール時代からだった。
■バルサのアイデンティティとなった"ウイング"
1994-95シーズンにアヤックスでチャンピオンズリーグ(以下CL)を制したオランダの名将は、バルサにサイドアタックというアイデンティティを植えつけた。当時のチームには、指揮官の志向するスタイルを具現化させられるタレントが存在していた。
右ウイングに位置していたルイス・フィーゴは、切れ味鋭いドリブルで相手を切り裂き、数多くのチャンスとゴールを生み出した。相手と対峙したら、まず仕掛ける。面白いようにディフェンスを手玉に取る“ドリブルマスター”に、ファンは熱狂した。トリデンテを形成したリバウド、パトリック・クライファートと織りなす攻撃は、美しく、力強かった。
その後も、バルサにはシモン・サブローザやマルク・オーフェルマルス、リュドヴィク・ジュリら個性豊かなウインガーが集まった。わずか1シーズンでクラブを去ったが、先のワールドカップにポルトガル代表として出場したリカルド・クアレスマも在籍した。カタルーニャの地で花開いた「ウインガーを最大限に生かす4-3-3」は、指揮官が移り変わっても受け継がれた。
近年のバルサは、多くの優秀なウインガーとともに在った。
■ニ冠達成と、欠如していた「バルサらしさ」
2017-18シーズン、バルサはリーガ・エスパニョーラとコパ・デル・レイの二冠に輝いた。シーズンを総括すれば「十分な成功を手にした」と言える。
だが、ファンの中には消化不良を覚えた者も多かったようだ。それは、CL準々決勝でローマに大逆転負けを喫し、ベスト8止まりとなったことだけが理由ではないはずだ。
昨シーズンのバルサは、主にウイングを置かない4-4-2をベースに戦っていた。中盤とトップがフラットに横並びとなる形は、バルサの長い歴史の中でもあまり採用されたことがない。エルネスト・バルベルデは4-4-2を好む監督だし、リオネル・メッシとルイス・スアレスという巨大な才能を生かすためには、もしかすると2トップシステムがベストなのかもしれない。
ただ、それと引き換えに、観る者の血をたぎらせるようなサイドアタックはあまり披露されなくなった。ティキタカと同じくらい、ウインガーが主役となるサイド攻撃は、バルサのお家芸だったはず。白星を重ねるチームに、ファンが「バルサらしくなさ」を感じたとしても、不思議ではない。
しかし、今夏を境にその状況は大きく変わるかもしれない。バルサのアイデンティティを取り戻すための鍵を握る若武者が、チームに加入したからだ。
■突如バルサにやってきた"切り込み隊長"
2018-19シーズンを前にした今オフシーズンには、ウィリアン獲得の噂がしきりに取り沙汰されていた。豊富な運動量を武器に、攻撃のみならず守備にも奔走してくれるブラジル代表選手との契約を、バルベルデは望んでいたようだ。しかし、最終的にバルサのシャツには、別の男が袖を通すことになる。
その男の名前は、マルコム・フィリペ・シウヴァ・デ・オリヴェイラ。ブラジルU-20代表に名を連ね、昨シーズンはフランスのボルドーで活躍していた選手だ。今夏はローマとの合意報道があったが、その後一転してバルサ加入が決定。この電撃的な獲得オペレーションは、少なからず世間を驚かせた。
インターナショナル・チャンピオンズ・カップ(以下ICC)のトッテナム戦前日会見で、バルベルデはマルコム獲得がクラブの意向であったことを認めた。必ずしも指揮官に「望まれた」わけではない21歳のブラジル人だったが、ICCでは印象的な活躍を披露する。後半から出場を果たしたトッテナム戦では、推進力の高いドリブルで攻撃のアクセントとなり、PK戦では最後のキッカーとしてきっちりネットを揺らした。因縁渦巻くローマとの一戦では、スタメンの座を獲得。柔らかいタッチでラフィーニャの先制点をアシストすると、左サイドからのクロスに合わせてバルサでの初ゴールも決めた。ミラン戦でもゴールポスト直撃の鋭いシュートを放つなど、出色の出来を見せている。
特筆すべきは、かつてバルサで輝きを放ったウインガー達と同じような特性を、マルコムもまた備えている点だ。ひとたびボールを受ければ、縦に切り込むこともできるし、中にカットインして強烈な左足のシュートを見舞うこともできる。ドリブルで敵陣に切り込んでいくことに、一切の躊躇はない。相手はマルコムを警戒せざるを得ず、自然とディフェンスの横の距離が間延びしていく。主戦場は基本的に右サイドだが、コリンチャンス時代やボルドー時代には左ウイングとしても多くの試合に出場しているため、メッシとの共存も十分に可能だ。
今シーズン、バルベルデはどのような戦術をデザインするのか。バルサのファンは勝利に慣れているため、「勝つだけ」では彼らの支持を得られない。バルサらしく戦い、バルサらしく勝つ――。伝統である4-3-3の復活は、唐突に舞い降りた"切り込み隊長"の出来にかかっている。
では、バルサというクラブのアイコンは何だろうか。『カタルーニャ』『ヨハン・クライフ』『ティキタカ』『カンテラ』――。おそらくどれもが正解であり、他にも正解はたくさんあるだろう。
『4-3-3』システムも、長らくバルサのアイコンの一つとなってきた。クライフが指揮を執っていたドリームチーム時代は3-4-3が主流だったが、その後、ルイ・ファン・ハール、カルロス・レシャック、フランク・ライカールトらは4-3-3を採用。なかでも、ウインガーがピッチの幅を目一杯使うスタイルを志向するようになったのは、ファン・ハール時代からだった。
■バルサのアイデンティティとなった"ウイング"
1994-95シーズンにアヤックスでチャンピオンズリーグ(以下CL)を制したオランダの名将は、バルサにサイドアタックというアイデンティティを植えつけた。当時のチームには、指揮官の志向するスタイルを具現化させられるタレントが存在していた。
右ウイングに位置していたルイス・フィーゴは、切れ味鋭いドリブルで相手を切り裂き、数多くのチャンスとゴールを生み出した。相手と対峙したら、まず仕掛ける。面白いようにディフェンスを手玉に取る“ドリブルマスター”に、ファンは熱狂した。トリデンテを形成したリバウド、パトリック・クライファートと織りなす攻撃は、美しく、力強かった。
その後も、バルサにはシモン・サブローザやマルク・オーフェルマルス、リュドヴィク・ジュリら個性豊かなウインガーが集まった。わずか1シーズンでクラブを去ったが、先のワールドカップにポルトガル代表として出場したリカルド・クアレスマも在籍した。カタルーニャの地で花開いた「ウインガーを最大限に生かす4-3-3」は、指揮官が移り変わっても受け継がれた。
近年のバルサは、多くの優秀なウインガーとともに在った。
■ニ冠達成と、欠如していた「バルサらしさ」
2017-18シーズン、バルサはリーガ・エスパニョーラとコパ・デル・レイの二冠に輝いた。シーズンを総括すれば「十分な成功を手にした」と言える。
だが、ファンの中には消化不良を覚えた者も多かったようだ。それは、CL準々決勝でローマに大逆転負けを喫し、ベスト8止まりとなったことだけが理由ではないはずだ。
昨シーズンのバルサは、主にウイングを置かない4-4-2をベースに戦っていた。中盤とトップがフラットに横並びとなる形は、バルサの長い歴史の中でもあまり採用されたことがない。エルネスト・バルベルデは4-4-2を好む監督だし、リオネル・メッシとルイス・スアレスという巨大な才能を生かすためには、もしかすると2トップシステムがベストなのかもしれない。
ただ、それと引き換えに、観る者の血をたぎらせるようなサイドアタックはあまり披露されなくなった。ティキタカと同じくらい、ウインガーが主役となるサイド攻撃は、バルサのお家芸だったはず。白星を重ねるチームに、ファンが「バルサらしくなさ」を感じたとしても、不思議ではない。
しかし、今夏を境にその状況は大きく変わるかもしれない。バルサのアイデンティティを取り戻すための鍵を握る若武者が、チームに加入したからだ。
■突如バルサにやってきた"切り込み隊長"
2018-19シーズンを前にした今オフシーズンには、ウィリアン獲得の噂がしきりに取り沙汰されていた。豊富な運動量を武器に、攻撃のみならず守備にも奔走してくれるブラジル代表選手との契約を、バルベルデは望んでいたようだ。しかし、最終的にバルサのシャツには、別の男が袖を通すことになる。
その男の名前は、マルコム・フィリペ・シウヴァ・デ・オリヴェイラ。ブラジルU-20代表に名を連ね、昨シーズンはフランスのボルドーで活躍していた選手だ。今夏はローマとの合意報道があったが、その後一転してバルサ加入が決定。この電撃的な獲得オペレーションは、少なからず世間を驚かせた。
インターナショナル・チャンピオンズ・カップ(以下ICC)のトッテナム戦前日会見で、バルベルデはマルコム獲得がクラブの意向であったことを認めた。必ずしも指揮官に「望まれた」わけではない21歳のブラジル人だったが、ICCでは印象的な活躍を披露する。後半から出場を果たしたトッテナム戦では、推進力の高いドリブルで攻撃のアクセントとなり、PK戦では最後のキッカーとしてきっちりネットを揺らした。因縁渦巻くローマとの一戦では、スタメンの座を獲得。柔らかいタッチでラフィーニャの先制点をアシストすると、左サイドからのクロスに合わせてバルサでの初ゴールも決めた。ミラン戦でもゴールポスト直撃の鋭いシュートを放つなど、出色の出来を見せている。
特筆すべきは、かつてバルサで輝きを放ったウインガー達と同じような特性を、マルコムもまた備えている点だ。ひとたびボールを受ければ、縦に切り込むこともできるし、中にカットインして強烈な左足のシュートを見舞うこともできる。ドリブルで敵陣に切り込んでいくことに、一切の躊躇はない。相手はマルコムを警戒せざるを得ず、自然とディフェンスの横の距離が間延びしていく。主戦場は基本的に右サイドだが、コリンチャンス時代やボルドー時代には左ウイングとしても多くの試合に出場しているため、メッシとの共存も十分に可能だ。
今シーズン、バルベルデはどのような戦術をデザインするのか。バルサのファンは勝利に慣れているため、「勝つだけ」では彼らの支持を得られない。バルサらしく戦い、バルサらしく勝つ――。伝統である4-3-3の復活は、唐突に舞い降りた"切り込み隊長"の出来にかかっている。
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