インディカー第9戦ゲートウェイ:作戦を的中させたニューガーデンが勝利。琢磨はレース展開に泣く
前日に引き続きワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイ・アット・ゲートウェイで開催されたNTTインディカー・シリーズ。30日に行われた第9戦は、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)が今季2勝目を飾った。
ポールポジションからスタートした佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、9位フィニッシュとなった。
ダブルヘッダーのゲートウェイ。予選は土曜日に1回のみ行われ、単独走行2連続アタックの1周目のタイムがレース1用、2周目がレース2用という決め方を採用した。
2ラップ目でトップ、しかも、予選最速ラップとなる182.499mphを記録し、レース2のポールポジションを獲得したのは佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だった。自身10回目のポールポジションだ。
琢磨は昨年のゲートウェイ・ウイナー。今年のマシンも仕上がりは良く、土曜日のレース1では優勝を惜しくも逃す2位。レース2でも高いパフォーマンスを見せるだろうことは十分に予想ができた。
朝から日差しが強く、レース2のコンディションはレース1より路面温度が高くなっていた。その上、サポートイベントのストックカーによるレースがふたつあったために路面が荒れていた。
オーバーテイクの非常に難しい戦い、レコードライン以外を走ることがリスキーなコンディションでは、順位変動が少ないまま淡々と周回が重ねられ、先頭がバックマーカーに追いつくと、その遅いペースで走るしかなくなっていた。
スタートよくトップを守った琢磨は、予選2番手のウィル・パワー(チーム・ペンスキー)や、予選3番手のパトリシオ・オーワード(アロウ・マクラーレンS)との差を広げ、燃費セーブもしながらレースをリードし続けた。
チーム・ペンスキーをはじめとするシボレー勢は、今日のレースでは早め早めにピットストップを行う作戦に出た。最初のピットタイミングが来る前に先頭の琢磨は同一周回の最後尾を走るエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)に追いつき、その後ろも等間隔で数珠繋ぎという状態となった。
そこでシボレー軍団は、燃料が空になるまで走らずにピットインし、空いているコースに出てタイムを稼ぐことを狙った。
悠々とトップを走り続けた琢磨が1回目のピットに入ったのは59周目だったが、予選4番手から2番手に浮上したジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)は、それより10周以上も早い47周目にピットしていた。
全員が1回のピット作業を終えると、トップはイン&アウトラップとピット作業が速く、目の前に誰もいないスペースを走れた時間も長く取れたオーワードのものになっていた。
彼の最初のピットはニューガーデンよりさらに1周早い46周目だった。2番手はニューガーデンで、3番手はウィル・パワーと続く。
ルーキーのリナス・ヴィーケイ(エド・カーペンター・レーシング)は予選18番手で、3周目に11番手まで大きくポジションを上げたドライビングが素晴らしかったうえに、42周目という他より大幅に早いピットタイミングによって一気に3番手にまでジャンプアップした。
3回のピットで200周のゴールに届かないタイミングではあったが、彼は最終的に4位でフィニッシュした。つまり、1回目のピットをどれだけ早く行い、コースの空いているところを走れたかが今日の最終順位に決定的な影響を与えていたということだ。
ヴィーケイが十分に速く、最後までミスを冒さず走り続けたことは事実で、それは称賛されるべきだが、イエローが出ずに23台が1.25マイルのコースに均等に散らばって周回し続けたレースは、ライバル勢より速く走れるマシンを手にしていることや、燃費の良いエンジン、あるいは燃費の良い走りがアドバンテージにならない戦いとなっていた。これもレース……だから仕方がない。
琢磨はゲートウェイでのレース2でもトップレベルの速さを備えていた。しかし、ピットストップでのタイムロスはなかったのに、1回目のピットを終えて、コースに戻ると8番手にまで順位を下げていた。
ロングスティントにアドバンテージを見出そうとした彼らの作戦はレース展開にマッチしていなかった。
さらに、終盤には周回遅れのザック・ビーチ(アンドレッティ・オートスポート)に進路を塞がれ続け、トップグループとの差は決定的なものとなった。
ビーチにはピットから「カーナンバー30を絶対に前に出すな」との指示が飛んでいた。それをレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングは確認しているという。
彼にはブルーフラッグが出されていたが、とうとう最後まで琢磨に道を譲ることはなかった。オフィシャルが彼にどくよう指令をだすべきところだが、オーバルレースでは道を譲るよう強制することはできないルールだとオフィシャルは琢磨陣営に伝えた。
「あれではもうレースではない。スポーツマンらしくない」とレース後の琢磨はビーチの走りと、そうさせたアンドレッティ・オートスポートの姿勢に対して憤っていた。当然のことだろう。
最終的にレースはニューガーデンが勝利を挙げた。2日連続で中盤戦にトップを走ったオーワードは、最後のピットストップでニューガーデンに逆転を許した。シリーズ最強チームであるペンスキーのクルーが、心境著しいアロウ・マクラーレンSPの挑戦を跳ね除ける形となった。
「ウィル・パワー、パト・オーワードとコース上で激しく争い、驚くべきピット作業によってトップに立つことができた。最後のピットストップを終えてダッシュ、ピットロード上でオーワードとのバトルはエキサイティングだった」
「あそこが今日の勝負どころだった。スタンドで応援してくれたファンの皆さん、ありがとう。今回は観客数が制限されていた。そんな中で観戦に来てくれたことに感謝したい。レースを楽しんでくれただろうか?」とニューガーデンは語った。
「まだチャンピオンシップ防衛は諦めていない。昨日は大きなパンチを浴びた感じだった(ポイントリーダーのスコット・ディクソンが優勝)。今年は不運に僕らは見舞われている」
「8戦のうちの3、4戦でイエローが自分たちに不利なタイミングで出た。自分たちにどうすることもできない。そうした不運は自分に襲い掛かることもあるし、そうでない時もある。それがレースでもある。いい巡り合わせを期待するしかない。今日の勝利がシーズン終盤戦に向けての転換点になるといい」
オーワードは昨日のレース1で3位、今日のレース2では2位。第4戦ロードアメリカでも2位フィニッシュしている彼は、9戦で3回目の表彰台。ゲートウェイする前にランキング3番手に浮上し、そのポジションを2レース後にも守ってみせた。
「素晴らしい週末になった。2レース両方で表彰台に立つという目標を立てていたが、それを達成できた。もちろん、勝てていたら最高だった。どちらのレースでもあと少しのところだった」
「僕らのマシンは今週とてもパフォーマンスが良かった。走り出しからずっと競争力が高かった。そして、初勝利に向けてドアをノックし続けている。あと少しだった。今後もプッシュし続ける。その時は必ず訪れる」とオワード。
200周のレースの197周目、ターン2で琢磨が壁にヒット。レースはアンダーイエローでのゴールとなった。琢磨はマシンのダメージが小さかったために走り続けることができ、9位でフィニッシュした。
今回のレースでも琢磨には優勝を狙える速さがあった。少なくとも序盤の彼はダントツのトップだった。しかし、作戦とレース展開がマッチしなかった。
「自分たちがファースト・ピットを彼らと同じように早めに行っていたら、予選順位のままフィニッシュしていた可能性は十分にありますよね」
「昨日の僕らの走り、作戦を見て彼らは“アンダーカット”作戦にしたんだと思う」と琢磨は語った。
燃費で不利にあるシボレーエンジン・ユーザーたちは、ホンダ勢が燃費を武器に優位を得ようとする作戦で来ることを読み、逆をつくことで活路を見出そうとした。その狙いがまんまと成功し、トップ4をシボレー勢が占めたゲートウェイでのレース2だった。
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