元F1王者ビルヌーブがアルピーヌA521をドライブ「スピードの理解に苦労。映画を早送りで見ているようだった」と衝撃
元F1チャンピオンのジャック・ビルヌーブは、モンツァでアルピーヌの2021年型マシン『A521』のテスト走行を行ったが、かつて彼が知っていたF1とはまったく違う経験をしたことを認めた。彼は頭のなかで現代のグランプリマシンの「速さとグリップを理解するのに苦労した」という。
1997年のF1世界チャンピオンであるビルヌーブは、アルピーヌからイタリアGP後のA521テスト走行に招待された。このためにビルヌーブは、アルピーヌのシミュレーター作業をしてマシンに慣れるための準備をした。
しかしシミュレーターでの走行は、2004年のルノー時代にこのチームに所属していたビルヌーブにとって難しいものになった。
「気分が悪くなってしまった!」とビルヌーブは『RacingNews 365』に語った。
「ブレーキペダルを踏もうとすると、脳はF1マシンのなかにいると思い込み、シミュレーターに乗っていることを忘れてしまう。Gフォースがかかっていないのに、かかっていると思い込んでしまう。頭や腕に重さがかかるはずなのに、そうはならない。その代わりにベルトの重さやシートの重さを感じる。本来感じるべきものとは正反対になる」
「脳は、『おっと、ここは何かおかしい。キノコか何かを食べたな』と思う。だから脳は気分を悪くさせようとする。脳は自分が取り入れてはならいないものを摂取したと思ってしまう」
「脳が現実とシミュレーターを区別できるうちはいいが、あまりに現実味を帯びてくると、脳はレースカーに乗っていると思いこむ」
シミュレーターでの経験にもめげず、ビルヌーブは水曜日のモンツァでテストを行った。レーシングスーツとブーツを身に着けたビルヌーブは、アルピーヌのエステバン・オコンから役に立つアドバイスを受けた。
ビルヌーブはA521のスピードとグリップに感心したが、2006年にF1を引退した彼は、自身が長い年月を経てもマッスルメモリーを保持していたことに驚いた。
「マシンは実際のところ非常に安定していて、かなりドライブしやすかったが、グリップがかなり大きかった」とビルヌーブは述べた。
「スピードについては……これを脳が理解するのに苦労しているよ。地面に吸い付けられるようで、早送りしながら映画を見ているようだった。本当に感動した」
「シミュレーターでの走行と、オコンとアロンソがドライブしているのを見たことから、ブレーキングポイントがどこにあるのかが分かった。そこで私は思った。『よし、脳はレーシングラインから、15〜16年前の何もかもを覚えている』とね。どこでどうブレーキをかけるべきかのブレーキングボードなど、あらゆるものがあった。だから記憶は消えていない。でもその記憶とともにブレーキを踏んでブレーキングを終えても、コーナーはまだ50メートルも向こうにあるんだ!」
ビルヌーブは、走行中にまあまあのラップタイムを達成したようだが、体力的な負担は相当なものだったと認め、「ブレーキングしなくても、パラシュートで制動しているような感覚だ」と、アルピーヌのマシンの空力負荷が大きいことを示唆した。
「これほど安定したマシンをドライブした機会は記憶にない」
「頭を上げていられないのではないかと心配したが、なんとかなったよ。今夜は痛みに苦しむだろうね!」
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