【コラム】関心が低かった“エル・クラシコ”…4カ月で逆転した両指揮官の立場
2018年1月8日(月)10時30分 サッカーキング
このように“エル・クラシコ”を含めて、クリスマス前後はスペインはイベントだらけだった。もし独立支持派で、宝くじで大金が当たり、かつバルセロナを応援するサポーターだったとすれば、クリスマスディナーでは浴びるほど飲んだに違いない。そんな軽口を何度もバルで耳にするほどイベントが目白押しだった。
だからだろうか。それとも試合翌日がクリスマスで一気に休日モード、家族モードにシフトしてしまったからだろうか。例年ほど“エル・クラシコ”の結果、試合内容が例年ほど話題にならなかった。というよりも“エル・クラシコ”以外にもクリスマスということもあり家族の近況から始まり、政局などの話題が豊富だった。またバルセロナとレアル・マドリードの勝ち点差があまりにも開いてしまったことも関係している。全38節の内17節で、まだ1巡も消化していないとはいえ、勝ち点差14だ。現実的にレアル・マドリードの逆転優勝の可能性は限りなく低い。そんなリーガの覇権争いが決着がついてしまった感があることも今回の“エル・クラシコ”が世間であまり話題に挙がらない一因だったのかもしれない。
今回の“エル・クラシコ”の論点は、マテオ・コヴァチッチだった。
就任してから獲得可能なタイトル10個の内、実に8つを勝ち取り、すっかり名将と称えられていたジネディーヌ・ジダンだが、クロアチア人MFを先発起用したことで地元メディアから批判とは言わないまでも大きな疑問を投げかけられた。イスコをベンチに座らせ、コヴァチッチをピッチに送り出した策が批判の対象となっている。特にバルセロナの先制点の場面でリオネル・メッシをマークするあまり、イヴァン・ラキティッチの単独でのドリブル突破を安々と許したコヴァチッチの決断ミスが大きくクローズアップされた。その失点シーンが敗戦の象徴にように扱われ、前線からのハイプレスで試合を優位に進めた前半のパフォーマンスはきれいさっぱり忘れ去られている。スペイン紙『アス』の読者アンケートでは約2万8,000人の投票で、76パーセントがイスコが先発出場すべきだったと答えている。
ビックマッチはディティールが命運を分ける。もし前半のポストに当ったベンゼマのヘディングシュートが入っていれば、後半の展開は変わりレアル・マドリードが勝利していた可能性もあった。仮に勝利していれば、コヴァチッチの先発起用を含めたジダンの采配は称えられていただろう。実際に8月に行われたカンプ・ノウでのスーペル・コパではコヴァチッチを先発で起用し、1−3で勝利したのだ。当時は誰もコヴァチッチの起用を咎めなかった。なぜなら、勝利したからだ。
しかし、今回は負けた。
ジローナのパブロ・マチン監督は第6節でホームにバルセロナを迎えた時、メッシにパブロ・マフェオをマンツーマンで密着マークを命じたが、結果は0−3の敗戦だった。ジダンもコヴァチッチにメッシのマークを命じたが、全く同じ結果で敗れた。スペイン紙『アス』は試合前に勝ち点差が11あり、タイトルを争うためにも是が非でも勝たなければいけない試合なのだから、もっと積極的な選手起用をすべきだったと論じている。また、レアル・マドリードは歴史、予算、偉大な選手がおり、2017年は5つのタイトルも獲得したクラブで、ジローナではないのだから他の戦い方があったと指摘していた。
つくづく「勝てば官軍、負ければ賊軍」である。8月のスーペル・コパが終わった時点での両軍の立場は全くの逆だった。ジダンとエルネスト・バルベルデも然りだ。バルセロナに新監督に就任したばかりなのにバルベルデはもうその進退が問われ始め、ジダンは長期の黄金期を築くのではないかと言われた。どんなにタイトルを勝ち取っていようが、それはすぐさま過去のものとなり、“今”勝っていなければ、ビッククラブの監督に平穏はないのだ。
文=座間健司