トヨタ、優勝目前に迫るもGRヤリスのデビューウインならず。2位オジエ「運がなかった」/WRC開幕戦
2022年1月24日(月)10時48分 AUTOSPORT web

1月23日、WRC世界ラリー選手権第1戦モンテカルロは競技最終日、デイ4を迎えSS14〜17が行われた。今戦で新規定ラリーマシン『トヨタGRヤリス・ラリー1』をデビューさせたTOYOTA GAZOO Racing WRTは、セバスチャン・オジエ/ベンジャミン・ヴェイラス組が総合2位表彰台を獲得。チームメイトのカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組が総合4位、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組が総合21位でフィニッシュし、全車がデビュー戦で完走を果たした。
20日(木)に開幕した伝統のラリー・モンテカルロもいよいよ最終日に突入。引き続き好天に恵まれたデイ4はモナコの北側、フランス南部の山岳地帯で2本のステージを各2回走行するスケジュールで行われた。ターマック(舗装路)ステージの路面コンディションは一部が湿った区間が残っていたものの、基本的にはドライとなっている。
競技初日からMスポーツ・フォードWRTのセバスチャン・ローブ(フォード・プーマ・ラリー1)とトップ争いを繰り広げ、このデイ4を総合首位で迎えたオジエは、自身9回目となるラリー・モンテカルロ制覇に向け、順調に駒を進めていた。2021年王者はコーナーのインカットを極力避けながらも、オープニングのSS14から2ステージ連続で2番手タイムを記録し、総合2番手につけるライバルとの差を24.6秒に拡げてみせる。
しかし、SS14の再走ステージとなったSS16で、オジエはアクシデントに見舞われる。左フロントタイヤにダメージを負い、これが原因で大幅なタイムロスを強いられることになったのだ。30秒以上のタイムを失ったオジエは総合2番手に後退。ラリーリーダーから一転し、最終ステージを前に9.5秒差を追いかける立場となった。
その最終SS17で再逆転を狙ったオジエだったが、ジャンプスタートによる10秒ペナルティが課せられ逆転勝利とはならず。優勝したローブと10.5秒差の総合2位でラリーをフィニッシュした。
「この特別なラリーにふたたび出場し、素晴らしい戦いをできたことは、僕にとって大きな喜びだ」と語ったオジエ。
「今日は運がなかったけど、それでも笑顔になれるし戦いを存分に楽しんだ。正直なところ、最終SSのひとつ前のステージで起きたことは、どうしようもなかったと思っている」
■GRヤリス・ラリー1は全SSの半数以上でベストタイムを記録
前日のデイ3終盤に2ステージ連続でベストタイムを記録し、クルマに対する理解を深め、自信をつけたロバンペラは、最終パワーステージで今大会3度目のベストタイムをマークしてみせた。21歳のフィンランド人は、総合4位入賞の獲得ポイントにパワーステージでのボーナス5ポイントを加え、選手権ランキングで“ふたりのセブ”に続く3番手につけている。
また、競技3日目のコースオフによって大きく順位を下げてしまったエバンスも、パワーステージで2番手タイムを記録しボーナスの4ポイントを獲得。トヨタGRヤリス・ラリー1は、現役引退しTGRヨーロッパの副会長に就任したばかりの中嶋一貴氏も現地で見守るなか、最終SSでのワン・ツーを含む今大会で行われた全17SS中9SSでベストタイムを記録する活躍をみせ、優れたパフォーマンスと高い信頼性を証明してみせた。
TOYOTA GAZOO Racing WRT・ネクストジェネレーションから、トヨタGRヤリス・ラリー1を駆り2022年シーズンのWRCにフル参戦している勝田貴元は、最終日のSS15と続くSS16で3番手タイムをマークする活躍をみせた。彼もエバンスと同様に3日目のコースオフで順位を下げていたが、デイ4で総合8位までポジションを回復させ選手権ポイント4点を獲得している。
「あと少しで優勝できたはずだったので、もちろん少し残念だ。しかし、これがモータースポーツであり、時に受け入れなければならない」と語るのは、TOYOTA GAZOO Racing WRTのヤリ-マティ・ラトバラ代表。
「もっとも重要なのは、我々には勝つ力を備え、信頼性の高いクルマがあるということであり、これからのシーズンを戦う上で大きな力となる。セブ(セバスチャン・オジエ)は本当に良い仕事をしてくれたが、残念ながら今日は運が味方をしてくれなかった」
「カッレ(・ロバンペラ)はラリーの序盤から比べると大きく進化し、今日はパワーステージで素晴らしい走りをしてくれた。また、エルフィン(・エバンス)も素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。昨日は小さなミスがあったが、パワーステージでは良い走りをし、お陰でチャンピオンシップを有利に進めることができた」
「優勝したMスポーツ・フォードにはおめでとうと言いたい。彼らとふたたび優勝争いができてうれしかった。そして、信じられないような結果を残した(セバスチャン・)ローブ選手にもおめでとうと言いたい。この週末は素晴らしいバトルが繰り広げられたので、ファンの皆さんはきっと楽しんでくれたはずだ」
TOYOTA GAZOO Racing WRTが挑む次戦第2戦は、2月24日から27日にかけてスウェーデンで開催される『ラリー・スウェーデン』だ。シーズン唯一のフルスノーイベントとなるラリーは今年、開催場所が北部のウーメオーに移動する。これによってステージが一新されるため、誰にとっても新しいラリーとなる予定だ。
ラリー・スウェーデンでは金属製のスタッド(スパイク)が埋め込まれた特殊な雪道専用のタイヤを装着し、非常に高いグリップが得られるため、スノーラリーでありながら平均速度は例年WRCの全イベントの中でトップクラスの高さとなるのが特徴となっている。