「足して2で割りたい(笑)」お互いにうらやむ“最強の武器”とは【河本きょうだい対談・前編】
2025年3月4日(火)12時30分 ALBA Net
河本結(左)と力きょうだいが対談を実施。お互いのゴルフについて語り合った(撮影:福田文平)
ゴルフ界には宮里きょうだい(聖志、優作、藍)、香妻きょうだい(琴乃、陣一朗)といった男女のきょうだいプロは多いが、今もっともホットなのは結と力の河本きょうだいだろう。
姉の結は1998年度生まれの黄金世代で、昨年の「NEC軽井沢72」で5年ぶりの2勝目を挙げた。弟の力は平均飛距離320ヤード超の圧倒的な飛距離を武器に通算2勝をマーク。今季はきょうだいそろって賞金王&年間女王を目標に掲げている。そんなふたりが対談を実施。その様子を2回にわたってお届けする。今回は、お互いのゴルフについて語り合った。(取材・構成/小高拓)
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——2023年にシード権を失った姉の結プロにとって、2024年は復活の1年になりました。弟の力プロは姉の1年をどう見ていましたか?
力:『優勝するだろうな』と思って見ていました。JLPGAのホームページで試合結果を見ていますが、スクロールしなくても(結の)名前が上にある試合が多くて、『だろうな』と。やっぱり、準備やゴルフへの姿勢がすごかった。勉強させてもらいました。
結:もっと言って。
力:裏付けがあったよね。ゴルフに対する向き合い方がスゴイな、と。ずっと『ゴルフのために何ができるか』を考えていました。『考えろ』っていわれてもなかなか難しいじゃないですか。その姿勢を分かりやすく見せてくれました。
——力プロの24年は、前半10試合中6試合で予選落ちと苦しい戦いが続きましたが、夏場以降に復調しました。優勝こそ逃しましたが、「三井住友VISA太平洋マスターズ」で2位タイに入るなど、最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の出場権を得て、賞金ランキング23位でした。結プロは力プロの1年をどう見ていましたか?
結:(前半は)技術的にすごく悩んでいるのを知っていて…。新しいことに取り組んでいたけど、それが『力に合っていない』と感じて、8月の「横浜ミナト」の時にアドバイスしました。力が良かった頃は『こういうふうに打っていたよ』と。そうしたら少しずつ自分を取り戻して結果も出るようになり、JTにも出られたのは良かったです。
——どんな助言をしたのでしょうか?
結:アプローチの時に手元が出て(ヘッドを)刺しちゃっているから、そこのベースを直そう、と。そうしたらショットも良くなるし、苦手な洋芝も克服できるって話をしました。
力:スピンを入れるアプローチを習得するために始めました。もともとアプローチはすごく自信があったし、上手いといわれていたんですけど、PGAツアーの選手が、落ちてその場で止まる球を打っているのを見て、もっとスピンを入れられるようにしたいって思ったんです。やっぱりアメリカでやりたいという思いがあるので、ある程度スピンが入る球を打たないといけないと思っていました。それを習得したいと思ってやっていたら、そればっかりになってしまって、普通のアプローチが打てなくなりました。
——結プロの助言で成績が出てきて、最終戦は結プロがキャディを務めましたね。
結:JTでは力のスイングやマネジメントを間近で見られたので、オフの目標もできたし良かったなと思っています。
——お互いのゴルフでうらやましいと思う部分はありますか?
力:アプローチのスピンですね。
結:以上?(笑)。私はドライバーの飛距離です。あまりそういう話しないよね。
力:マジでスピンですね。ぜったい一番入る。男子ツアーにきても入る方…、一番入るといってもいいかも知れない。
——それはヘッドの入れ方が上手いから?
力:入れ方でしょうね。ヘッドスピードは絶対に男子の方が出るんですけど、スピードだけじゃない。
結:ちなみに(24年の)リカバリー率2位(70.8042%)でした、私。
力:バウンスバック率は1位(24.8705%)。『ボギーを打っている』とか自虐していたけど、パーセーブ率も4位(89.2034%)だから、すごい。
結:だそうです(笑)。お互い戦い方が違うからこそ、見えてくるアドバイスをし合えるんだと思います。
力:結(平均飛距離241.19ヤード)が、あとちょっと、10とか15ヤード飛距離が伸びたら、ゴルフがめっちゃ簡単になるだろうなって思います。
結:昨年の前半はドライバーが曲がりすぎて、フェアウェイキープ率90位くらいまでいって…。やばいと思って真っすぐ飛ばそうと意識したら、今度は振れなくなってきて、飛距離が落ちちゃいました。力にはずっと『振れ』と言われていました。飛ばしのコツを聞くんですけど、なかなかうまくできないです。
力:最近思ったのは、飛距離はリストの強さ。結はリストが弱い気がする。(インパクトの時に)右手首を甲側に折った状態(ハンドファースト)で力を入れるの。手首が硬くないと。ボクサーのパンチと一緒。手首がぐらぐらしたらパワーが逃げちゃうし、押し込めない。これ最近気がついたんですよ。あまり言いたくないけど、手首の硬さってマジで飛距離に生きると思う。
結:手首の硬さ? 軟らかさじゃなくて?
力:硬さ。もちろん軟らかさも大事。アプローチとか。でも飛距離は硬さ。リストにギュって力を入れて、最後腕に力が入ってボールを押すみたいな。
結:力にいつもパンチ力がないっていわれるね。竹田麗央はパンチ力がやばいって。
力:やばい。1回見たんですけど、球を押せているなって感じで。
結:手首をこねるパンチじゃなくて…
力:この形(右手首を甲側に折った状態)でパーン。ただずっと力を入れいるんじゃなくて、バックスイングからリラックス、リラックス、リラックスとダウンスイングまで下ろしてきて、ボールに接触するときにパーン、みたいな。最後当たる時にクッって。一瞬の握力じゃないかな。
結:握力鍛えよう。握力弱いから。
力:俺は昔からお風呂場の中でニギニギして握力鍛えたり、とげとげのボールをぐるぐる回したり。
結:昔からやっていたね。
力:室内用の短くて重いバットを手首だけで操作したり。
——力プロから飛ばしのコツを聞きましたが、結プロのアプローチでスピンを入れるコツはありますか?
力:手を出さないことらしいです、逆に。
結:絶対に手が出たら(ハンドファースト)ダメなんですけど、体は前にいく。だいたいアマチュアの方は手が出て(ハンドファースト)で体が後ろ(右足体重)。その逆です。体はいっても手は出さない(ハンドレート)。これって力の飛ばしと真逆なんです。
力:そうそう、飛ばないようにする動き。原理は逆ですよ。ヘッドの入れ具合がシャローで効率よくスピンが入って落ちてからググって止まる。キュキュっと。
——飛ばしとスピンは真逆なんですね
結:本当に(きょうだいで)足して2で割れたらいいのにって、いっつも言っているんです(笑)。
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後編ではきょうだいの関係性や子供時代などのプライベートに迫る。
河本結(かわもと・ゆい)/1998年8月29日生まれ、愛媛県出身。2018年プロ転向。同年のステップ・アップ・ツアーで4勝を挙げて賞金ランキング1位。翌19年は弟・力をキャディに起用して「アクサレディスin宮崎」でツアー初優勝。20年から米女子ツアーに参戦し、21年に国内復帰。24年は「NEC軽井沢72ゴルフ」で5年ぶり2勝目を挙げた。RICOH所属。
河本力(かわもと・りき)/2000年3月3日生まれ、愛媛県出身。21年にプロ転向し、ルーキーイヤーの22年に年間2勝を挙げて賞金ランキング9位。23、24年は未勝利に終わったがシードは保持。3年連続でドライビングディスタンス1位と見る人を楽しませる。23年は歴代1位の322.58ヤードを記録した、ワールドクラスの飛距離が武器。大和証券所属。
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